「2024年ISDNデータ通信終了とEDI移行」まる分かりガイド【第1回】
ISDNのディジタル通信モード、2024年終了に備えてどんな準備が必要になるのか?
2024年1月にISDNのデータ通信が終了する。その結果、EDI(電子データ交換)を筆頭としたシステムやサービスに大きな影響が出ることが予想される。通信事業者の立場からこの問題の概要と各産業への影響について解説する。
「2024年ISDNデータ通信終了とEDI移行」まる分かりガイドについて
2024年初頭にISDNの「ディジタル通信モード」が終了となる。「ISDNのデータ通信が終了」または「固定電話のIP網移行」といった言葉を目にした読者もいるだろう。ISDNはEDI(電子データ交換)においても通信回線として広く利用されており、自社のEDIが要件に該当していた場合は何らかの対処が必要となる。この連載は、ISDNデータ通信の終了がEDI利用にどのような影響があるか、今後の移行に当たって対策すべきポイント、新システム選定のコツなどについて解説する。
NTT東西(NTT東日本、NTT西日本)のISDNサービス「INSネット」を利用している読者の手元には、両社からのダイレクトメールが届いているかもしれない。これは、2019年2月から3月にかけて両社が順次送付している案内だ。このダイレクトメールには固定電話のIP網移行の概要や今後のスケジュール、IP網移行に伴い終了するサービスとその代替策などに関する記載がまとめられている。
本稿は、EDI(電子データ交換)でも広く利用されている固定電話がどのように変わるのか(固定電話のIP網移行)を詳述する。特にINSネットのデータ通信サービス「ディジタル通信モード」の終了と、今後の対応について見ていく。
ディジタル通信モード終了とは――概略と背景
NTT東西は2017年10月17日に「固定電話のIP網への移行後のサービス及び移行スケジュールについて」という報道発表で、2024年1月に固定電話の設備をIP網に切り替えることを公表した。
ダイレクトメールによる案内で状況を知った方にとっては、NTT東西が唐突に発表したように驚いたかもしれないが、検討の開始は2010年にさかのぼる。同年11月に両社は「PSTNマイグレーションについて~概括的展望~」という報道資料を公表した。PSTNは「Public Switched Telephone Network」の略称で、加入電話とINSネットのネットワークを指す。従前の黒電話(ダイヤル式の黒い電話機)の時代から使われているメタルケーブル(銅線)を利用した電話回線のことだ。このPSTN回線(以下、固定電話)を、インターネット技術を利用したIP網へマイグレーション(移行)する予定を示唆したのである。以降、国も含めた議論として、総務省における有識者会議(電話網移行円滑化委員会など)をはじめとした活発な議論が進められてきた。
固定電話のIP網移行の背景についてもう少し解説する。従来型の固定電話(加入電話とINSネット)の利用施設数は年々減少している。固定電話に代わって台頭したのがIP電話である。2011年には、光回線「フレッツ光」で利用可能な「ひかり電話」のような、加入電話と同様の電話番号を利用できるIP電話の施設数が、従来型固定電話の施設数を上回った。加えて2000年代から増加傾向にある携帯電話の利用が飛躍的に伸び、契約数は1億5000万を超えるほどになった。インターネットのメールやSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)などの利用も広まり、今なお通信手段の多様化が進んでいる。
一方、固定電話網の交換機は2025年ごろに寿命を迎えると考えられており、この状況下でいかに固定電話を維持していくかが通信事業者の課題だった。この課題を解決するために、交換機で提供されている固定電話のサービスを、ルーターなどで構成されるIP網へ移行することで維持しようというのが、ディジタル通信モード終了の背景である。以下、本稿では固定電話のIP網移行を「IP網への切り替え」と呼称する。
固定電話がIP網へ移行するとどうなるか
前段で「固定電話で利用している交換機ベースの網を、ルーターベースのIP網に移行する」と記述したが、これはNTT局内設備のみで実施される出来事であり、NTT局から顧客宅に引き込まれている既存のメタルケーブルは従来のままである。今回の移行に関しては、顧客にできる限りご負担のないよう、基本的な音声サービスは維持する。顧客宅内での工事は必要なく、現在利用中の電話機もそのまま利用できる。移行に伴う手続きも不要だ(図1)。
固定電話の基本料は、IP網への切り替え後でも現在の加入電話・INSネットと同額だ。通話料については、距離にほとんど依存しないIP網の特性を生かし、固定電話の通話は全国一律3分8.5円(税別)とする考え。これらの料金と提供条件(予定)は、NTT東西が2017年10月17日に公表した報道発表資料(NTT東西の公式Webサイトから閲覧可能)を参照いただきたい。
IP網への切り替えスケジュール(図2)については、2024年1月からNTT東西の固定電話発信の通話をIP網経由に順次切り替える。この開始時点で、加入電話・INSネットの契約を一斉に引き継ぎ、新たな料金を適用する(例:固定電話への通話は全国一律3分当たり税別8.5円)。
先に述べた通り、基本的なサービスは提供継続するとともに、顧客の利用が多くIP網でも提供可能なサービスについても提供を継続する。ただし顧客の利用減少が見込まれるサービスや、IP網において提供が困難なサービスについては、IP網への切り替え開始に合わせて2024年1月に提供終了する。もちろん顧客が時間的余裕を持って代替サービスを検討できるよう、十分な期間を確保するし、お知らせもする。IP網切り替えに合わせて提供を継続、終了するサービスは表1の通り。
| サービスの分類 | 提供を継続するサービス | 提供を終了するサービス |
|---|---|---|
| サービス名 | ・基本的な音声サービス ・公衆電話 ・110(警察)、118(海上保安)、119(消防) ・117(時報) ・177(天気予報) ・104(電話番号案内) ・115(電報) ・ナンバー・ディスプレイ ・ナンバー・リクエスト ・迷惑電話おことわり ・キャッチホン ・ボイスワープ ・ボイスワープセレクト ・フリーアクセス ・#ダイヤル ・代表 ・ダイヤルイン ・硬貨収納等信号送出機能(ピンク電話)など |
・INSネット(ディジタル通信モード) ・ビル電話 ・着信用電話 ・支店代行電話 ・有線放送電話接続電話 ・短縮ダイヤル ・キャッチホン・ディスプレイ ・ナンバー・アナウンス ・でんわばん ・トーキー案内機能 ・発着信専用 ・ノーリンギング通信 ・二重番号 ・トリオホン ・なりわけ ・114(話中調べ) ・空いたらお知らせ159 ・ナンバーお知らせ136 |
INSネットのディジタル通信モード終了と今後の対応
提供終了するサービスのうち、各業界で現在でも広く利用されているINSネットのディジタル通信モードに関して概要と今後の対応について詳述する。
INSネットの特徴は、同時に複数通話や通信が可能なことだ。電話機で通話しながら、FAX通信またはPCによる通信を同時に利用する形態で、これまで長らく利用されてきた。INSネットの基本通信は、音声通話で利用する「通話モード」と、データ通信で利用するディジタル通信モードの2つのモードを使い分ける。どちらのモードも「Bチャネル」という情報チャネル(ISDNの論理的な通信路)を使い、ディジタル通信モードは64kbpsで利用可能だ。
ディジタル通信モードの主な利用用途には下記がある。
- 受発注で利用されるEDI
- 企業から銀行へ振込や照会などで利用されるエレクトリックバンキング(EB)/ファームバンキング(FB)
- クレジットカード端末(CCT)
- 警備
自社の何らかのシステムでINSネットを利用している場合は、まずディジタル通信モードの利用有無や影響度合いを確認してほしい。その上で利用シーンごとの代替策や業界の方針を、メーカーやシステムインテグレーター(SIer)に確認し、移行プロセスを検討していただきたい。ディジタル通信モード利用有無の確認方法は、NTT東西の専用Webサイトでも紹介している。
提供終了時期までに代替策への移行が間に合わない場合、NTT東西は当面の対策として「切替後のINSネット上のデータ通信(補完策)」を提供予定だ。ただしIP網へ移行するため、現行のINSネットのディジタル通信モードと同一の品質にはならない。そのため、事前に両社が用意した検証環境で動作確認いただくことをお勧めする。検証環境については、2016年9月に提供開始しており、既に20組織近くの企業や団体が検証結果を公表している(2018年1月現在)。この検証結果はNTT東西の専用Webサイトでも随時公開している。
一部の検証結果においては、特定のプロトコルを利用した際に現在よりも通信時間が延びる事例(遅延)も存在することが確認されている。具体的事例としてはEDI、EB、FBなどで遅延が生じているのが確認された。これはあくまでも代表例であるため、実際に自社で利用している接続端末(機器)やソフトウェアの利用可否については、実際に検証して確認いただきたい。
EDIを含めてINSネットのディジタル通信モードを現在も利用している場合には、サービス提供終了時期までに、端末設備更改時期(ライフサイクル)に合わせたオールIP化(IP対応端末への更改および、光回線や無線などによるIPサービスへの移行)などの代替策への移行を検討いただきたい。
繰り返しになるが、NTT東西は今後も、INSネットのディジタル通信モードをはじめとした、IP網への切り替えに伴い終了するサービスに関して告知を続けていく。例えば、
- 終了時期や代替策
- 加入電話やINSネット利用中の顧客に向けた、切り替え後の固定電話への契約引き継ぎに関する提供条件
- 手続き
などに関してお知らせする。
EDIに関しては、INSネットと密接な関係にあるシステムにも影響が出てくる。読者の皆さまには、固定電話のIP網移行に関してどうかご理解いただき、INSネットのディジタル通信モードをはじめ終了するサービスをご利用いただいている場合には、早めに代替策の検討と移行をお願いしたい。
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