2019年03月28日 08時00分 公開
特集/連載

5人のITリーダーが考えているAIの次のユースケースAIを何に利用する?

AIの利用が広まりつつある中、CIOはAIにどうアプローチすべきなのか。どのような用途が考えられるのか。5人のITリーダーに、AIの展望やユースケースを聞いた。

[Mark Samuels,Computer Weekly]

 CIO(最高情報責任者)などの経営陣の話題に常に上る技術が人工知能(AI)だ。コンサルティング企業Deloitte Touche Tohmatsuによると、最新技術の導入に積極的な企業の37%が、機械学習やディープラーニングなども含むコグニティブテクノロジーに500万ドル(約5.5億円)以上を投資しているという。そのうち83%の企業が既に「ある程度」または「かなりの」メリットがあったと報告している。

 市販ソフトウェアのコグニティブ機能を利用するなど、基礎的な投資を行うことで高度な導入への下地が作られているというのが同社の見解だ。

 CIOはどのようにAIと関わるようになっているか。そしてCIOは今後、ビジネスでのユースケースをどのように構築していくか。英Computer Weeklyは専門家に話を聞いた。

新たなインテリジェンスを生み出す

 金融データ企業ExperianでグローバルCIOを務めるバリー・リベンソン氏は、AIや機械学習などの新興技術は「まさに革命的だ」と話す。

 「非常に裕福でお金を決して借りない人々には、恐らく強力な情報になるクレジット履歴がない。ところが、ソーシャルメディアで誰かのプロフィールに着目すれば、そのユーザーの嗜好(しこう)、頻繁に訪れる場所、日々の活動が分かる。行動を示すソーシャルメディアデータに基づけば、洞察を構築し始めることができる」(リベンソン氏)

 同氏は、機械学習をインフラ管理に活用するという興味深い可能性にも触れた。「機械の特定の動作から何かを知るというのは目新しい手法ではない。だが技術は大きく進化している。目に付いた異常を基に、物事が悪い方向に進みそうなタイミングを判断することができる」

 同氏によると、人間には気付けないわずかな変化も、機械ならほぼ確実に見つけられるという。同氏のチームは、システムの動作を監視する「Dynatrace」のログからデータを収集し、「Splunk」にその情報を入力している。この機械学習主導のアプローチは、人間には検出できないかもしれないパターンをデータから見つけ出す。

 「Splunkにそれが可能なのは、情報を処理する能力があるからだ。何かが見つかったら、通常とは異なる動作がDynatraceのログとSplunkによって幾つか報告されていることをオペレーションセンターのスタッフに通知する。これにより、発生している現象をスタッフが調べることができる」(リベンソン氏)

 このナレッジは業績に良い影響を与えると同氏は考えている。「システム停止や別の機器へのフェイルオーバーを防止できる。機械学習は多岐にわたる興味深い分野に応用できるようになってきた」

最新技術を調査する方法

 Guinness World Records(GWR)のITディレクターを務めるロブ・ハウ氏は、デジタル技術を使ってビジネス変革をサポートしている。ハウ氏は「世界記録の本を製作する単なる出版社」から「マーケティングキャンペーンでブランドと共に活動するクリエイティブなコンサルタント企業」へと、6年をかけて同社を進化させた。

 同氏はデジタル変革に段階的なアプローチを採用し、その一環としてSDLの記録管理プラットフォーム、Asset Bankのデジタル資産管理システム、そしてSalesforce.comのCRMを導入した。変革プロセスの締めくくりとして、同社はITアーキテクチャを「Amazon Web Services」(AWS)に移行し、その管理にはEnsonoのサービスを利用している。

 同氏は、さらなるイノベーションを起こすプラットフォームとしてクラウドを活用することを目指している。次のステップとして、GWRのAPIレイヤーをマイクロサービスに変換することを目指している。その後、チームと共にエッジロケーションにどの種のデータをプッシュするかを検討する予定だ。最終的には機械学習の活用法について考える予定だが、考えること自体は前もって行っていると同氏は認めている。

 同氏は次のように話す。「これは、もっと内容を詰めなければならない考え方だ。企業が直面する課題の一つを解決する可能性があるソリューションではあるが、プラットフォームが安定し、信頼できるようになるまで保留にしている。AWSにある当社のインフラは2018年9月に稼働したばかりなので、まだ機は熟していない」

 「資産プラットフォームのアップグレードは、新しいバージョンの稼働と見なすつもりだ。また機械学習を使えば記録アプリケーションの一部をより効果的に自動化できるようになるかどうかを知りたい。今は移行が終わったばかりなので、安定化を図り、価値が追加された分野を示して全社に新しいサービスを行き渡らせる必要がある」(ハウ氏)

AIによって貴重な人材を有効活用

 NHS Business Services Authority(NHSBSA)の最高デジタル責任者ダレン・カリー氏もデジタル変革プログラムを主導している。始まりは2015年、NHSBSAが管理する妊産婦優遇サービスの紙の記録をデジタル化する方法について考え始めたことだった。

 「変革について考え始めたとき、AIは議題に上らなかった」というカリー氏は、今ではAIが「大きな可能性」を秘めていると話す。

 NHSBSAは既にクラウドファースト戦略を導入している。このオンデマンドITへのシフトと共に、同氏はAIなどの新興技術を確実に利用したいと熱望しており、既に計画は進行している。

 「英ニューカッスルにある600人のコンタクトセンターは、毎年約470万件の問い合わせを受けている。内容は年金に関するものや、家庭医からの要望、その他の健康関連の質問だ。最近、European Health Insurance Card(EHIC)関連のコンタクトセンターに『Amazon Alexa』を使用するAIを導入した」(カリー氏)

 同氏によると、構想から2週間でこの技術を導入して稼働にこぎ着けたという。4週間後、このサービスを年中無休に拡大した。このAIによってコンタクトセンターのオペレーター宛ての問い合わせが45%削減された。狙いは、単純な内容の問い合わせをオペレーターに取り次がないことだ。

 「“オーストラリアでEHICが使えるか”といった質問にはAIが対応する。この技術を導入したことで、人間が対応すべき問い合わせの数がぐっと減った。AIを別の仕事の一部にも利用することを検討したり、Amazon Alexaをコールセンター業務全体に導入したりすることも予定している」

どの程度運用効率が高まるかを調査

 タクシー会社Addison LeeでCIOを務めるイアン・コーエン氏は、新興技術を効果的に利用することと、顧客データを安全に扱うこととは関係していると話す。同氏によると、顧客が自身のデータ提供を許可するならば、企業には重んじなければならない義務があるという。

 「ここ10年、人々はフリーWi-Fiの利用や、Facebookでゲームをプレイするなどの理由で個人情報を交換している。今後はデータの扱いに慎重になり、その真の価値を理解することになるだろう」(コーエン氏)

 この将来を見据えたプロセスの一環として、同社は自動走行車の開発方法と主要都市での活用方法について調査している。Addison Leeはロンドン周辺の顧客のニーズを満たすため、配車方法について30年以上にわたってデータを蓄積しているという。

 Addison Leeは1日当たり約2万5000回利用されている。そのうち90%以上はドライバーの空き状況、交通状況、交通サービスをアルゴリズムで判断し、自動的に配車している。同氏は「機械学習が直感的かつ解釈的であることを考えれば、次はどのような進化が起きるのか興味深い」と、自社への導入はこれからだが業界全体にわたる広いコンテキストにおいて語った。

 「当社は、何かをつなげたときに起こることや、そうした環境から洞察を得る方法、学んだことをプログラムに落とし込む方法を理解する必要がある。真のAIが実現するのはまだ先の話で、人々は機械学習の最初の一歩を踏み出したところだ。認識力があり、文脈を判断し、状況を把握できるAIは未来のものだ」(コーエン氏)

関係者や顧客のメリットを増やすためのデータ使用

 Skyでデジタル意思決定および分析部門の責任者を務めるロブ・マクラフリン氏によると、新興技術の利用が最も適しているのは、多くのことが同時に発生する極めて複雑な分野だという。多数の経営幹部がAIの使用について語っているが、どの企業もいまだ幾つかの基本に対処していないと同氏は語る。

 「機械学習を適切に表現するなら『何にでも使える一連の統計的な手法』だ。行動を起こすために必ずしも使用しなければならないわけではなく、データセットの分析に使うことができる。AIはどちらかといえば何らかの形の決断を下すためのもので、より応用的だ。基本的に、AIはほぼ常に機械学習の活用と結び付いている」(マクラフリン氏)

 マクラフリン氏によると、同社の関係者に意思決定プロセスを説明する際は、人間を基にしたルールが便利だという。誰かがスポーツを好んでいるなら、サービスチームはサッカーを基にとした製品を提案するだろう。だがブラックボックス的なAI技術が提案する関係は扱いにくく、取捨選択して関係者に説明するのが難しくなる可能性がある。

 同氏は次のように語る。「機能を作り、それを事業に導入する必要がある。例えばAPIを当社のWebサイト、コンタクトセンターのシステム、モバイルアプリに接続する。そのためには当社を取り巻く人々との密な関係が必要で、それを管理するプロセスは複雑になり得る」

 同氏のチームは、活動内容が関係者の要件と確実に一致するようにしている。チームの取り組みは、3つのビジネス目標のうち少なくとも1つを対象とする必要がある。1つ目が、製品を推薦するための「上位製品の販売や抱き合わせ販売」。2つ目が、所持しているものより多くの製品を顧客に使用してもらうようにするための「活発な顧客エンゲージメント」。3つ目が、クライアントと効率的に取引するための「サービスメッセージング」だ。

 同氏は、パーソナライゼーションと新興技術に対するチームの取り組みに言及しながら、次のように語った。「データは有益でなくてはならず、顧客満足度を高く保つことをサポートする必要がある。消費者と企業の関係構築に役立たないデータに未来はない。真の価値交換こそ、顧客を相手にする全ての企業にとっての優先事項でなくてはならない」

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