「CCNA」改定のポイント【後編】
改定版「CCNA」に加わった新分野と変わらないネットワークの基礎知識は?
ネットワーク担当者の登竜門とも言えるCisco認定試験の「CCNA」の内容が改定された。受験者は具体的にどのような項目を新たに学習する必要があるのか。
Cisco Systems製品に関する技術者資格「シスコ技術者認定」(Cisco Career Certifications)の改訂のうち、最も大きな点の一つがネットワーク技術者の登竜門とも言える「CCNA」(Cisco Certified Network Associate)の認定試験の内容が一新した点だ。CCNAの公式ガイドブック『Official Cert Guide』の著者を務めてきたウェンデル・オドム氏は、CCNAの新認定試験「200-301 CCNA」のガイドブック『Official Cert Guide』も「Volume 1」「Volume 2」の2冊構成で既に書き上げている。新しい認定試験では何が新しくなったのか、オドム氏の話を基に紹介する。
―― 新しいCCNA認定試験が扱うのはどのようなトピックですか。
ウェンデル・オドム氏(以下、オドム氏) Volume 1は無線LANに4つの章を割いている。内容は基本的なものだ。例えば下記のようなトピックを扱う。
- 無線LANアクセスポイント(AP)とは何か
- 無線規格にはどのようなものがあるか
- APをどのようにスタンドアロン(自律型)APとして構成するか
- APの構成を無線LANコントローラーでどのように設定するか
こうしたトピックはネットワーク担当者にとってはあまり奥深い内容ではないが、それが学習の最初のステップだ。CCNAは、ネットワーク技術を学ぶ上で最初のステップとなる内容を豊富に盛り込んでいる。
新しいCCNA認定試験は、下記のような新たなトピックを扱っている。
- DHCPスヌーピング
- DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)サーバとクライアントの間の通信を監視する機能
- ダイナミックARP検査
- IPアドレスを基にしてMACアドレス情報を取得するプロトコルであるARP(Address Resolution Protocol)のパケットを検査するセキュリティ機能
この他、ファイル転送のプロトコルであるFTP(File Transfer Protocol)やTFTP(Trivial File Transfer Protocol)について言及しているパートもある。
古いCCNA認定試験はネットワーク技術の基本を扱っていた。新しい認定試験はネットワークのさらに深い知識に踏み込んでいる。例えば「アンダーレイ」と「オーバーレイ」がある。これらはソフトウェア定義ネットワーク(SDN)を構成する際に用いられる技術だ。
もちろん新旧のCCNA認定試験が変わらずに扱っているトピックも少なくない。スイッチを使ったネットワークの構築方法や、ループ状のレイヤー2(L2)ネットワークにおいて永続的にパケットが流れることを防止するプロトコルである「STP」(Spanning Tree Protocol)など、従来のLAN技術も詳しく扱っている。
Webシステムを外部から利用するための仕組みである「REST API」、テキスト形式のデータフォーマットである「JSON」(JavaScript Object Notation)なども、新しいCCNA認定試験は新たに取り上げている。「Ansible」「Puppet」「Chef」といった構成管理ツールの内部的な仕組みの比較にも言及している。こうした構成管理ツールの具体的な操作方法には触れないが、どの構成管理ツールがエージェントを使用する「プッシュ型」の仕組みを採用していて、どの構成管理ツールがエージェントレスの「プル型」の仕組みを採用しているかといったトピックは、試験範囲に入っている。
新しいCCNA認定試験では、新しい技術に関するトピックは試験項目全体の10%程度にとどまる。そのため学習を進めると、従来型のネットワーク技術を対象にした認定試験のように見えるだろう。まずは従来あるネットワークの基本的な技術を学習した上で、進化している新技術の学習に着手すればよい。CCNAはいわば、“ひな鳥が巣立つ”のを後押しする存在だ。新技術は、大規模ネットワークの構築に必要な知識や技術を扱う「CCNP Enterprise」のコア試験のような高度な認定試験の合格を目指す際により多く学ぶことになる。CCNA認定試験では、まずはその一部に触れておくのが適切だろう。
―― 新しいCCNA認定試験についてどのような質問が寄せられていますか。
オドム氏 意外にも、新しいトピックについての質問はそれほど多くはない。「プログラミング言語『Python』を知っている必要がありますか」が一番よくある質問だろう。試験トピックにはPythonへの言及はないが、自動化に関するトピックはある。つまり受験者はネットワークの自動化について考えるとき、最初のステップはプログラミング言語の理解だと考えてしまうわけだ。実際にはPythonのようなプログラミング言語を知らなくても、自動化についてさまざまなことを学習できる。
学習者と接する中で気付くことは、技術的な問題にとらわれ過ぎている人が少なくないことだ。例えばデータのカプセル化の仕組みに混乱してしまうことがある。あるいはルーティングプロトコルのOSPF(Open Shortest Path First)を使用するネットワーク機器間の接続情報であるLSA(Link-State Advertisement)の重要性が気になり、LSAの「タイプ1」「タイプ2」「タイプ3」の具体的な違いを理解する必要があるかどうかと考え込んでしまう人もよくいる。試験におけるLSAの重要度を一概に決め付けることはできないが、重要なことはOSPFを使う場合にLSAが実際にどのような機能を果たすのかを知っている必要はあるという点だ。
新しいCCNA認定試験が新しい自動化機能や技術をバランス良く取り入れ、初心者が新技術を学ぶ負担が過大にならないようにする一方で、実際にネットワーク担当者としての仕事をこなすのに必要な基礎を身に付けさせる内容となっていることに満足している。Cisco Systemsは今回の改定で適切なバランスを実現した。ガイドブックを学習することは認定試験の合格に役立つとともに、実際の業務でも活用できるだろう。Cisco SystemsはCCNA認定試験の改定を成功させたと言える。
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