テレワーク文化になじんでいないと難しいことも
「ERP」は出社せずに導入できるのか? 新型コロナの在宅勤務で課題に
パンデミックの影響で出張や対面打ち合わせが困難になったために、ERPシステムを導入中の企業は「いかにテレワークで導入作業を進めるか」を検討する必要に迫られている。そもそもテレワークでの導入は可能なのか。
「ERP」(統合業務)システムの導入は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により遅延またはキャンセルが発生する可能性がある。コンサルタントやアナリストによると、出張制限がプロジェクト遂行に支障を来しており、在宅勤務などのテレワークでERPシステムの導入プロジェクトを進めるのはさまざまな困難がある。
ERP導入作業は出社なしでも可能か
新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的な大流行)は、ERPシステムの導入作業を複雑にしており、その経済的影響がベンダーにとっての新たな問題になっている。例えばユーザー企業がサポート期限の延長と価格改定を求めてくる場合がある。ERPシステムの導入範囲が縮小される場合もある。
ERPシステムの導入プロジェクトに携わるPemeco Consultingのマネージングディレクターであるジョナサン・グロス氏によると、出張制限の影響でERPシステム導入の段階的な延期が必要になっているという。「ERPシステムの導入における新しいビジネスプロセスの設計では、現場の検査を必要とする場合がある」とグロス氏は説明する。その具体例には、工場の建屋内を目視で確認したり、倉庫内を歩いて商品が実際どのように流れるかを把握したりする。
対面の作業を避けてERPシステムを導入する場合、技術的な課題や共同作業の問題が発生する。「プロセスを説明するためには、ビデオ会議と大型ディスプレイ、ホワイトボードやその代わりになるタブレットなどが必要になる」とグロス氏は述べる。ただし「このようなダイナミックな共同作業は現実的にはかなり難しい」と同氏は指摘する。
グロス氏によると、ERPシステムの導入作業にはテレワークでも進められる作業が幾つかあるという。ただし「ある時点でプロトタイピングを実行する必要があるが、これをテレワークで実行するのは非常にリスクが高い」とグロス氏は述べる。プロトタイピングとは、アプリケーションの検証とテストを意味する。
ソフトウェアプロジェクトを研究する研究組織Standish Group Internationalの創設者であり会長であるジム・ジョンソン氏によると、ERPシステムの導入プロジェクトは失敗率が高く、遅延やコスト超過の問題に直面することがよくある。ジョンソン氏は「ERPシステムの導入作業の全てをテレワークで実行できるとユーザー企業が確信しているのでなければ、絶対に実行すべきではない」と述べる。
コンサルティング企業Panorama Consulting Groupのソフトウェアセレクションディレクターであるジェフ・マクファーソン氏は「一部の企業はテレワークでの導入作業もやり遂げる可能性がある」と説明する。ただし「その企業にテレワークの文化と十分な経験がある場合に限られる可能性がある」と語る。
対面を避けた導入作業は「時間のかかる工程になるだろう」とマクファーソン氏は指摘する。テレワークの方法の習熟にはそれなりの時間がかかるからだ。同氏によると、ERPシステムの導入を計画している企業は、専門知識を持った人材が現地に出張できない場合、現地で採用しようとする場合があるという。
9カ月後の状況の予想
「(2020年3月初旬の)たった10日間で多くの出来事が発生したというのに、9カ月後には一体どうなっているだろうか」とマクファーソン氏は語り、「一部のERPシステム導入プロジェクトは保留されるが、他の多くのプロジェクトは縮小されるだろう」と予測する。ITベンダーは、販売と顧客対応にこれまで以上の創意工夫を求められる可能性がある。
Panorama Consulting GroupによるERPシステムに関する2020年の調査レポート「The 2020 ERP Report」によると、2019年は回答企業の37%がオンプレミス、残り63%はSaaS(Software as a Service)またはその他のクラウドサービスのERPシステムを使用していた。「価格設定は必ず検討する必要がある。新しい価格設定のパッケージで追加機能を提供しているベンダーがあるからだ」とマクファーソン氏は述べる。調査会社Computer Economicsの調査担当バイスプレジデントであるデビッド・ワーグナー氏によると、パンデミックの結果としてITインフラ管理の負担を軽減するために、クラウドサービスの導入を進める企業が増えている。
ワーグナー氏は「今から幾つかの変更をするのは遅過ぎる可能性がある」と強調。「世界的な危機の真っ只中にERPシステムを刷新したり、全てをクラウドに移行したりすることは考えられない」と指摘する。とはいえ危機が去った後に同様の問題が生じないようにするために、企業はそれぞれ、何ができるかを模索することになる。
新型コロナウイルス感染症の経済的影響を確認することになる次の2四半期は「ERPベンダーにとって良いビジネスチャンスになるだろう」と、調査会社Pund-ITのアナリストであるチャールズ・キング氏はこう予想する。2020年の夏の終わりか秋ごろに社会が平常に戻るならば、2020年は「『他に類を見ないほど困難だったが、生き延びることができた』という経験として記憶に残るだろう」とキング氏は語る。しかし問題がより深刻になるか、長期にわたる不景気に陥った場合は、「かつてのIT不況時にベンダーを悩ませたような市場や事業の失敗が、再び繰り返される可能性がある」と同氏は指摘する。
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