「Microsoft Teams」のデータを保護するためのバックアップとリストアの設定は複雑になりがちだ。特に注意すべき点とベストプラクティスを紹介する。
Microsoftのユニファイドコミュニケーションツール「Microsoft Teams」(Teams)は、企業にとって一段と重要なツールになった。以前からTeamsの利用は広がってはいたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行で在宅勤務などのテレワークの重要性が高まったことで、普及がさらに勢いづいた。
チャットメッセージ、画像、ドキュメント、録画映像、ボイスメール、連絡先など、Teamsでやりとりされるデータは多岐にわたる。そのため大容量のデータを扱うその他のツールと同様、Teamsのデータの定期的なバックアップが重要だ。バックアップは、データ損失によるビジネスへの損害を防ぐことだけではなく、コンプライアンス(法令順守)要件を満たす上でも求められる。
企業がTeamsのデータを保護する上では、綿密に計画を立てなければならない。まずはMicrosoftがTeamsのデータをどこに保存するのかを理解する必要がある。
Teamsのバックアッププロセスは、やや複雑になっている。Teamsはサブスクリプション形式のオフィススイート「Microsoft 365」(旧称:Office 365)に含まれるツールであるということが、その主な理由だ。
市場にはMicrosoft 365のさまざまなバックアップツールが出回っている。メールサーバ「Exchange」やファイル共有・ポータル構築ツール「SharePoint」、オンラインストレージ「OneDrive for Business」といったMicrosoft 365ツールのみを標準的なバックアップ対象とするツールもあり、その場合Teamsは対象外になる。Teamsと同様に、タスク管理の「Microsoft Planner」や社内SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)「Yammer」などのMicrosoft 365ツールも、たいてい標準ではバックアップ対象になっていない。
Teamsのバックアップで注意すべき点はもう一つある。Teamsのデータ保存先があちこちに分散することだ。例えばTeamsのプライベートチャットで共有されたファイルはOneDrive for Businessに、「チャネル」という小グループ内のチャットで共有されたファイルはSharePointに保存される。ボイスメールや連絡先といったデータの保存先はExchangeだ。これは各データを全てバックアップするには、OneDrive for Business、SharePoint、Exchangeをそれぞれバックアップするしかないことを意味する。
残念ながら、Teamsのデータをリストア(復旧)する際は、バックアップ時よりも問題が発生しやすい。
バックアップツールでTeamsのファイルやWiki(社内情報共有ツール)のデータをリストアできたとしても、通常はデータ削除前と同じように利用できるわけではない。たいていの場合、リストアしたデータをTeamsで使えるようにするために、追加のステップを踏まなければならない。Wikiであれば新しいWikiを作成し、リストアしたデータをそこに貼り付ける必要がある。
こうしたTeamsのリストアの制約を踏まえて、2つの役立つベストプラクティスがある。1つ目は、常にMicrosoft 365の標準機能である「アイテム保持ポリシー」を有効にすることだ。アイテム保持ポリシーは、一定期間の経過後にデータを自動的に削除したり、逆に一定期間の間はデータの削除を不可能にしたりできる。アイテム保持ポリシーによってデータ保持の期間を設定しておけば、対象のデータはその期間中であれば消失することはない。場合によってはアイテム保持ポリシーを使用する方が、バックアップツールからリストアするよりも手間がかからないだろう。
2つ目のベストプラクティスは、バックアップツールを常に最新の状態に保つことだ。Teamsを他のツールと連携させるためのAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)である「Microsoft Teams API」を介して、外部のバックアップツールと連携できる。Microsoft Teams APIは新しいため、まだ自社ツールに組み込んでいるバックアップベンダーは多くはない。時間とともにバックアップベンダーはMicrosoft Teams APIを使用して、より効果的にTeamsのバックアップを支援する機能を提供するようになると考えられる。
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