「混合コンテンツ」による問題の回避策
「Chromeをアップデートしないで」――Salesforce“異例のお願い”の真相
Webブラウザ「Chrome」で発生する問題の回避策として、Salesforceが示した手段は非難を浴びた。それは「Chromeのアップデート適用を見送ること」だ。Salesforceはなぜ“異例の助言”をしたのか。その後の行動は。
Salesforce(salesforce.com)は「混合コンテンツ」(mixed content、「混在コンテンツ」とも)の問題に関する情報発信で迷走している。混合コンテンツとは、エンドユーザーとWebサーバ間の通信が「HTTPS」で暗号化されているWebサイトにおいて、平文の「HTTP」通信でやりとりされているコンテンツを指す。
GoogleのWebブラウザ「Chrome」が混合コンテンツをブロックすることで発生する問題を受け、Salesforceは「Chromeの最新アップデートの適用を見送るか、旧バージョンにロールバックすること」を推奨した。
アプリケーションセキュリティエンジニアのイアン・キャロル氏は2020年12月7日、ミニブログ「Twitter」で、Salesforceの示した回避策に疑問を呈した。「Salesforceは混合コンテンツを理由にChromeを古い状態にしておくようエンドユーザーに勧めている。これはひどい助言だ」とキャロル氏はツイート(書き込み)をした。
なぜSalesforceは“異例の助言”に踏み切ったのか
公式サイトおよびニュースレターを通じて発したドキュメントでSalesforceは、Googleが新しいセキュリティ対策として、混合コンテンツからの安全でないダウンロードをブロックする機能を段階的にChromeに実装していると説明。同時にChromeで正常に画像表示やダウンロードができなくなる問題が発生することを指摘した。ドキュメントによると、SalesforceのCMS(コンテンツ管理システム)サービス「Salesforce CMS」と、各種CMS内のコンテンツを同社サービスに取り込む「CMS Connect」が今回のChromeアップデートの影響を受ける。
Salesforceはドキュメントで、問題が発生する際の回避策を6つ提示していた。具体的には「現時点ではアップデートしない」こと、「Chromeを旧バージョンにロールバックする」ことなどだ。これは企業セキュリティのベストプラクティスに相反する“異例の助言”だと言える。
TechTargetはSalesforceが提示した回避策について同社にコメントを求めた。同社は2020年12月8日に対象のドキュメントを更新して回避策のリストを削除した。代わりにコンテンツをHTTPS通信で提供することを推奨する記述を追加した。その後、同社の広報担当者はドキュメントについて、メールで次のように回答した。
Salesforceはお客さまのデータの機密性、整合性、可用性がビジネスの継続に不可欠であることを理解しており、データ保護を非常に重要視しています。(中略)このドキュメントを更新することで、Chromeの安全でないダウンロードからお客さまを保護するための最新情報を提供しました
更新後のドキュメントでは、回避策として別のWebブラウザを使用するか、Chromeの混合コンテンツを許可するフラグをオンにする方法を示した後、次の文を補足している。
ビジネスクリティカルな理由でどうしても必要でない限り、これらの方法は推奨しません。できるだけ早く、HTTPS通信でコンテンツを提供できるWebサイトを構成することを強くお勧めします
Salesforceは回避策を差し替えたが、当初示した2つの回避策は異例の提案だった。セキュリティ専門家は、リスクを減らし、既知の脆弱(ぜいじゃく)性を修正するために、アプリケーションをアップデートすることを強く推奨し続けている。
2019年10月のブログ記事で、GoogleはHTTPS通信に関連するセキュリティ強化計画の一環として、混合コンテンツをブロックする計画を発表した。だが同社は、2020年9月までこの計画を進めなかった。ブログ記事は混合コンテンツの一例として、HTTPS通信で提供されるWebサイト内に、HTTP通信で提供されるWebページへのリンクを載せることを挙げている。
GoogleのChromeセキュリティチームのメンバーであるエミリー・スターク氏とカルロス・ジョアン・ラファエル・イバラ・ロペス氏は、ブログで次のように説明している。
HTTPS通信で提供されるWebページには、混合コンテンツが広く存在しています。これは、Webページ内の画像などのリソースが「http://」で始まるURLになっており、安全でない方法で読み込まれる問題です。Webブラウザはデフォルトで「JavaScript」のスクリプトや、Webページ中にインライン要素として他のWebページを表示する「インラインフレーム」などが読み込む混合コンテンツをブロックします。一方で画像、音声、動画は現状ブロックせず読み込むようになっており、エンドユーザーのプライバシーとセキュリティを脅かしています
Chromeによる混合コンテンツのブロックは、マーケティング支援サービス「Marketing Cloud」など他のSalesforceサービスにも影響する。同社はMarketing Cloudに関するドキュメントでも混合コンテンツを許可する別のWebブラウザを使用する回避策を提示する一方、「将来的には他の大半のWebブラウザもいずれ混合コンテンツをブロックするようになる」と説明している。
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