ポストcookie時代のマーケティング戦略【後編】
個人情報不要の「コンテキストターゲティング」はデジタル広告を変えるか
サードパーティーcookieの利用が制限されたら、どのようにして広告をパーソナライズすればいいのか。主要な5つの代替策のうち3つを紹介する。
サードパーティーcookie(訪問先Webサイトとは異なるドメインに関連付けられたcookie)の代替策として利用可能な広告パーソナライズの手法には、どのようなものがあるのか。現時点で主要な選択肢として挙げられるのは、以下の5つだ。
- IDプロバイダー
- ファーストパーティーデータ
- サブスクリプションユーザーベース
- デバイスフィンガープリンティング
- コンテキストターゲティング
中編「『ファーストパーティーデータ』はターゲティング広告に使えるか」は上記のうち、オンラインユーザーを特定できるIDを提供するIDプロバイダーと、訪問先Webサイトのドメインに関連付けられたデータであるファーストパーティーデータを紹介した。後編は残る3つを紹介する。
3.サブスクリプションユーザーベース
企業が価値あるファーストパーティーデータを集めるには、強力なサブスクリプションユーザー基盤を持つ必要がある。特にパブリッシャー(Webサイト運営者)は、この側面にフォーカスしなければならない。パブリッシャーは消費者に対して信頼できるコンテンツを提供することで、読者との関係を築く。
メールアドレスは、ファーストパーティーデータの一例だ。顧客のメールアドレスを入手すれば、パブリッシャーは自社のWebサイトでの顧客の行動を追跡できる。パブリッシャーはメールアドレスの登録と引き換えに、読者に週刊ニュースレターや最新の動画、特集記事を提供する。消費者がパブリッシャーを信頼し、コンテンツを楽しめば、メールアドレスを登録する可能性が高くなる。
調査会社Forrester Researchのシニアアナリストであるティナ・モフェット氏が「ファーストパーティーデータを活用している好例」として挙げるのが、Trunk Clubをはじめとするサブスクリプションベースの衣料品販売サイトだ。こうしたWebサイトは顧客に、自分の体のサイズや好きなパターンなどを尋ねる。「その答えが彼らのファーストパーティーデータになる。これは広告主にとって宝の山だ」とモフェット氏は語る。
4.デバイスフィンガープリンティング
個人情報を使わずにデバイスを特定するデバイスフィンガープリンティングは、サードパーティーcookieの挙動をある程度模倣する代替策の一例だ。人々がスマートフォンやノートPCなどのデバイスを使うとき、デバイスはサーバと通信する。サーバは、デバイスのIPアドレスやWebブラウザ、使用言語、時刻、顧客がデバイスを使っている場所といった情報を要求する。調査会社Gartnerのリサーチバイスプレジデント兼ディスティングイッシュトアナリストのアンドルー・フランク氏によるとデバイスフィンガープリンティングは、デバイスに関するこうしたさまざまな情報を使って、cookieのようなデバイス固有の識別子(デバイスフィンガープリント)を作成する。
「広告主は、ユーザーについて手に入る情報は何でも取り込む」と、DSP(Demand Side Platform:広告主向け広告配信プラットフォーム)を手掛けるBeeswaxのCEO、アリ・パパロ氏は説明する。広告主は例えばユーザーのIPアドレスや使用しているWebブラウザなどを基に「一種のパズルのように、一意のユーザーを推測しようとする可能性がある」(パパロ氏)。
cookieはユーザーのデバイスに保存される一方、デバイスフィンガープリントはサーバのデータベースに保存される。デバイスフィンガープリンティングは、ユーザーがWebサイトを訪問したときから始まる。通常はJavaScriptなどのスクリプト言語で記述されたトラッカーがデバイス情報を収集する。
デバイスフィンガープリンティングは、サードパーティーcookieに代わる選択肢の候補だ。ただしユーザーのプライバシーと同意に関する問題がある。「フィンガープリンティングは一般的に、ひんしゅくを買う。消費者の同意なしに実行されるからだ」とパパロ氏は語る。「消費者は望むかどうかにかかわらず、プロファイリングされてしまう」(同氏)
5.コンテキストターゲティング
コンテキストターゲティング(コンテキストマーケティング)は、顧客データのトラッキングが不要な選択肢だ。オーディエンス(Webサイトの訪問者)にマッチした広告ではなく、コンテンツにマッチした広告を配信するものだとフランク氏は説明する。
コンテキストターゲティングは、ユーザーデータを使用せずにターゲット広告を配信する「非常に効果的な手法だ」とパパロ氏は説明する。「cookieの消滅に耐えることができ、将来にわたってある程度有効だと考えられている」(同氏)
企業は、キーワードやトピックの他、Webサイトの全体的なテーマを用いてコンテキストターゲティングを利用できる。コンテキスト広告は、Webページが表示するコンテンツにマッチしている。そのため顧客体験を損なわない。例えば消費者がコーヒーについての記事を読んでいると、Webページにコーヒーメーカーの広告が表示されるといった具合だ。
コンテキストターゲティングの一般的な問題はスケーリングだとパパロ氏は語る。「企業が広告を出したいと考えるようなWebサイトは非常にたくさんある。だがコンテンツのコンテキストはあまり多くない」(同氏)
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
事例
[株式会社マクニカ] アイカ工業に学ぶ脆弱性対策 情シスが把握できずにいたアセットも正確に把握 -
製品資料
[株式会社マクニカ] 「脆弱性総まとめ」解説 被害事例から考える必須の対策ポイント -
製品資料
[Splunk Services Japan合同会社] サイバー脅威「トップ50」完全解説ガイド、新たな攻撃手法に対抗するには -
製品資料
[株式会社うるる] 「入札市場」完全ガイドブック:メリットから資格取得のポイントまで -
市場調査・トレンド
[株式会社うるる] はじめての「自治体/官公庁入札」 必要な知識がすぐに学べる入門ガイド
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
2
Oracle巨大ITプロジェクトはなぜつまずいたのか 8年で導入1割、追加で170億ドル
-
3
Microsoft製品でここまで自動化できる 情シスがやめられる手作業10選
-
4
ISMSの“コンサル丸投げ”が招く数千万円の無駄 NTTドコモビジネスの脱出劇
-
5
「VMware離れ」は本当か 3000社がVCF 9にかじを切った現実的な理由
-
6
「Microsoft 365」が乗っ取られる 跡形もなくMFAを破る手口
-
7
「AI活用を前提とした業務PCへの移行」に関するアンケート
-
8
AI全部入り「Microsoft 365 E7」に企業が二の足を踏む訳 移行意向はわずか4%
-
9
「技術屋」で終わらないために 情シスが今取るべき認定資格5選
-
10
Netflixのバックエンドは「ほぼJava」 3000超のアプリを支える開発基盤の裏側
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
2
AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
-
3
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
4
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
5
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
6
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
7
PostgreSQLの「機能」「性能」「運用」「拡張性」に関する悩みの解消法
-
8
5分で分かる「セキュア大容量ファイル転送サービス」の機能とメリット
-
9
Macの安全神話は崩壊? 最新の脅威動向から見えた攻撃のトレンドと有効な対策
-
10
情報セキュリティ対策早分かりガイド:25の自社診断で弱点と解決策を理解
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー