「続けたくなるテレワーク環境」の作り方【第1回】
テレワークを避けられないなら最低限押さえておきたい「経営課題」とは
感染症対策として急場しのぎでテレワークを導入した企業が、テレワークを長期施策として捉えたときに、浮き彫りになる経営課題とは。主要な項目を整理する。
この連載について
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の対策としてテレワーク体制に移行することになったものの、VPN(仮想プライベートネットワーク)やVDI(仮想デスクトップインフラ)のリソースを十分に用意できなかったために「通信がつながりにくい」「動作が重い」などの不満に直面した企業は少なくない。本シリーズは「テレワーク(特に在宅勤務)を前提にしたデバイス管理のベストプラクティス」をテーマに、テレワークを長期的に継続する上での技術的課題や不満の解消に役立つ情報を紹介。現状の課題整理、課題の解決と必要なシステム、支援ツールの情報などを整理する。
テレワークは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大防止の観点から、一気に導入の機運が高まった。COVID-19が拡大するよりも以前から、テレワークの導入や検討を進めていた企業もある。パーソル総合研究所が2020年12月16日に発表したデータ(調査期間2020年11月18日~23日)によると、全国平均で24.7%の企業がテレワークを実施している(有効回答数1万9946件)。さまざまな調査機関がテレワーク時の満足度調査をし始めており、経営層と従業員それぞれの問題点がこれから具体化してくると考えられる。
本稿はCOVID-19対策としての一時的なテレワーク導入から、継続的なテレワークへの移行を進める上で企業が直面する経営課題を整理する。
テレワークにおける経営課題
導入済みか、これから導入するかを問わず、テレワークに取り組む企業が直面する主な経営課題は以下の通りだ。
- 従業員がきちんと働いているかどうか分からない
- 残業の管理ができず、長時間勤務になる懸念がある
- 人事評価が正当にできるかどうか確信が持てない
- テレワーク環境を整えるのにコストがかかる可能性がある
- IT環境を整えるための人員が足りない
- 貸与したPCを持ち運ぶ際の盗難や紛失が気になる
- 他の従業員とのコミュニケーションが取りづらく生産性が下がる懸念がある
テレワーク時の労務管理
米国ではジョブ型雇用(従業員の職務内容を明確に定義し、労働時間ではなく成果で評価する雇用制度)が一般的だ。企業は「成果を上げられていない」と判断した従業員を容易に解雇できる。労働時間や勤務態度などを評価する必要はない。
企業はテレワーク中の従業員について、何時間仕事をしているか、集中して作業をしているかどうかを管理することは不可能だ。本格的にテレワークを導入したいのであれば、ジョブ型雇用への移行とセットで考えるのが望ましい。
ただし日本の場合、労働安全衛生法の改正により労働時間管理が厳格化されたり、労働基準法の厳しい解雇条件があったりと、ジョブ型雇用に移行するのは容易ではない。企業は従業員の職務を明確にし、その達成度により人事評価を実施し、報酬に反映させる仕組みを作り、年功や労働時間に基づく評価要素を極力排除する必要があると考えられる。これからテレワークを導入する企業は、まずこのような労務管理の仕組みの改革に着手すべきだ。そうすれば「従業員が何時間PCで作業していたか」「仕事に関係ないWebサイトを見ていなかったかどうか」などを監視する労務管理システムを構築する必要がなくなる。
従業員の意識改革
「日本人は欧米人と比べると、家族より仕事を優先しがちだ」と昔からよく言われてきた。オンとオフの切り替えが苦手で、出社をせず自宅で仕事をしていると社会から取り残されたような不安を感じる人もいる。同居家族がいる場合は在宅勤務に居心地の悪さを感じたり、家族が不満を覚えたりすることもある。
従業員自身が「テレワークによって自由にできる時間が増え、余暇や家族と過ごす時間が増えた」と感じられるようになれば、このようなストレスは軽減する。企業は労務制度の改革とともに、従業員の意識を変える教育システムも用意するのが望ましい。
テレワークは長時間労働を助長するデメリットもある。日本労働組合総連合会(連合)が2020年6月に実施した「テレワークに関する調査2020」では、回答者の51.5%が「通常の勤務よりも長時間労働になることがあった」と答えた(有効回答数1000件)。確かに、従業員が自分自身で働き方をコントロールしないと、出社勤務よりも長時間仕事をしてしまう可能性がある。ただし割り切って考えれば「18時以降はPCに触れない、電話にも出ない」など、従業員自身でルールを決めてコントロールすることもできる。めりはりのある働き方ができれば、プライベートの時間を増やしやすくなる。
テレワークを導入する企業は、これまでに整理した経営課題だけでなく、IT面での課題にも対処する必要がある。特に重要性が高いのがセキュリティの確保だ。次回は「ネットワーク」と「デバイス」(エンドポイント)に分けて、それぞれのセキュリティ面の課題と、その解決策となるIT製品分野を整理する。
田北幸治(たきた・こうじ)
アイ・ビー・シー 代表取締役社長
大学院修了後、外資系コンピュータベンダーで金融機関向けシステムエンジニア(SE)、営業を経験。その後IT企業を立ち上げ、ソフトウェア事業を展開。外資系ソフトウェア企業の日本代表を経て、2015年にエンドポイントセキュリティやエンタープライズモビリティー管理(EMM)に特化した製品を扱うアイ・ビー・シーを立ち上げる。
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「続けたくなるテレワーク環境」の作り方
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