活気づく労働者市場
退職をやめたらスポーツカーや「MacBook Air」を支給 激化する人材引き留め策
米国では働き手の不足から、一時解雇者数と会社都合の退職者数が低い水準で推移している。雇用促進のために従業員向け懸賞やインセンティブ付与などの施策に取り組む企業もある。
米国では一時解雇者数と会社都合の退職者数が低い水準で推移している。雇用促進のためにユニークな金銭インセンティブを提供する企業もある。
人材派遣会社Spherion Staffingは、事務、カスタマーサービス、IT関連職など幅広い職種や業界の仕事を従業員にあっせんしている。同社は採用を促し、離職を防ぐ施策として、従業員を対象とする週次の懸賞キャンペーンを実施している。このキャンペーンは2021年7月にスタートし、9月中旬まで続く見込みだ。同社はキャンペーンのためにAppleの「MacBook Air」、アクションカメラ「GoPro」、Ford Motorのスポーツカー「Mustang」などの賞品を用意した。
なぜ人材引き留め策はここまで“過激化”したのか
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)が起こる前の2019年、Spherion Staffingは約4万人の人材を企業にあっせんしていた。2021年7月ごろには「パンデミックが落ち着いてきたことで、前例がないほどに需要が戻っている」と、同社でマーケティング部門のバイスプレジデントを務めるダグ・デロー氏は説明する。
デロー氏によると「ほぼ全ての業界で人材が不足している。労働者市場は非常に活気づいていて、求人数が応募数をはるかに上回る」という。
米国労働統計局(BLS)の2021年7月の報告によると、2021年5月の米国の求人数は920万人で前月とほぼ変わっていない。連邦準備制度理事会のデータによると、一時解雇者と会社都合の退職者は2021年5月時点で約137万人と、低い水準にとどまった。
キャリアマネジメントやリーダーシップ開発を手掛けるKeystone Partnersで市場開拓担当のエグゼクティブバイスプレジデントを務めるリック・コブ氏は、企業が一時解雇をしない理由を「空いたポジションを埋める人材を見つけられないため」だと語る。
雇用を促し離職を防ぐインセンティブ
人材不足に対処し、従業員の離職を防ぐために、インセンティブを利用する企業もある。レストランチェーンPapa John's Internationalは2021年7月、「新規採用、紹介、感謝ボーナス」という総額250万ドルのインセンティブを発表した。新規従業員を既存従業員が紹介したときにインセンティブを支払う施策だ。保険会社Amica Mutual Insuranceは、カスタマーサービス担当者の求人票に、「契約時に2500ドルのボーナスを支払う」と記載した。
こうしたインセンティブを設ける企業があるにもかかわらず、2021年5月の退職率は2.5%だった(BLS調べ)。2020年4月以来の最高値だった2021年4月の2.7%よりは低下している。
求人数と離職率の間に「相関関係がある」と語るのは、人材分析サービスを提供するVisierで人材分析担当のバイスプレジデントを務めるイアン・クック氏だ。パンデミックが始まって1年がたち、当初は転職をする準備が整っていなかった労働者の「準備が整った」と同氏は推測する。
スポーツ施設や娯楽施設を運営する企業は事業再開により、数百人規模の雇用を始めた。こうした雇用は「労働市場全体で大規模に発生している」(クック氏)。
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