サプライチェーンサービスプロバイダーのVallen Asiaは、ある大型契約を受注したことで重大な危機を経験した。これを契機に、同社はクラウドERPへの移行を決断した。
サプライチェーンサービスを提供するVallen Asiaにとって、複数の業界にまたがる企業の資材サプライチェーンをオンプレミスERPで運営することは不可能であることが証明された。
このサービスの需要が増えるにつれ、Vallen Asiaはスケーラビリティの問題に直面した。特に、複数地域をまたがるサプライチェーンを有する大企業が問題だった。
転換点となったのは、世界最大級の航空宇宙製品サプライヤーであるRaytheon Technologiesから、アジアの複数の拠点をまたがる資材サプライチェーンを管理する大型契約を獲得したときだった。
Vallen AsiaのCEOアンドリュー・ベネット氏は次のように語る。「この契約によって当社の事業はほぼ完全に停止した。当社のリソースは全て使い尽くされ、他の商談を断らざるを得なかった。システムをスケーリングできず、リソースも帯域幅もなかったからだ。主な原因はプラットフォームにあった」
Vallen Asiaはここしばらくの間スケーラビリティの問題に直面していた。それはEコマースのフルフィルメントであれオンサイトにあるサードパーティー製自動販売機への供給であれ、顧客の多様な要件に対応するビジネスモデルが求められているためだ。
「こうした要件は工場ごとに異なるため、単に対応が追い付かなかった。そのため請求から計画まで手作業の回避プロセスが必要だった。当社の顧客が必要とする分析やデータレポートなどは言うまでもない」(ベネット氏)
Vallen AsiaはInforのオンプレミスERP「M3」を使っていたが、これをInforの「CloudSuite Distribution Enterprise」に切り替えることを決断した。CloudSuite Distribution Enterpriseは大規模卸売業者用に設計されたSaaSで、InforのクラウドERPサービスに含まれている。
Vallen AsiaはM3を大幅にカスタマイズしていた。これをマルチテナントのクラウドアプリケーションに直接移行するのは非常に手間が掛かる。そこで6カ月をかけてシングルテナントの実装を行い、さらに6カ月をかけてマルチテナント環境に移行した。
CloudSuite Distribution EnterpriseとM3はアーキテクチャが根本的に異なることを前提に、Vallen Asiaはビジネスプロセスの一部を微調整する機会も設けた。
「システムの範囲内で機能するようにビジネスプロセスを変更し、カスタマイズはしなかった」(ベネット氏)
CloudSuite Distribution Enterpriseは流通にフォーカスして業界の標準プロセスをカバーしているため「当社にとっては新たな標準機能の作成に利用できる」点が助かったとベネット氏は言う。
最大の課題は財務プロセスをサポートすることだったとベネット氏は語る。財務プロセスは長い時間をかけて開発してきたため、解明するのが非常に困難だった。「プロセスを解明する方法を検討するのに時間と労力を要した。専門家との協議が必要なテーマもあった」と同氏は補足する。
クラウドERPへの移行により、Vallen Asiaは運用コストを30%削減した。それは購入、計画、手作業のプロセスに必要な人員の削減に負うところが大きい。
Vallen AsiaはCloudSuite Distribution EnterpriseだけでなくInforのクラウドビジネスインテリジェンスプラットフォーム「Birst」も利用して、カスタマーポータルや財務チームを介した情報の流れを自動化した。「Birstによる自動化は、最終的には生産性の純増につながっている」とベネット氏は話す。
世界のサプライチェーンを混乱に陥れたコロナ禍のさなか、Vallen AsiaのクラウドERPへの動きはタイムリーであり、ジャストインタイムアプローチからジャストインケースアプローチまで、サプライチェーンダイナミクスの変化に適切に対応している。
ベネット氏によると、CloudSuite Distribution Enterpriseが重要な役割を果たした分野の一つが需要計画だという。同氏はVallen Asiaが顧客向けに複雑さを適切に管理した例として、安全在庫レベルの最適化、貨物に関する考慮事項、動的なリードタイムを挙げている。
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