パンデミックが落ち着く中でオフィスワークへの回帰が見られる一方、会議の在り方は「コロナ禍前には戻らない」とWeb会議ベンダーは語る。ハイブリッドワークへの移行が進む中、Web会議ベンダー各社はどう動くのか。
Zoom Video Communications、Microsoft、Cisco Systemsの経営幹部はいずれも、「自社のWeb会議製品は、オフィスワーカーとテレワーカーに同等のWeb会議体験を提供するには至っていない」と認識している。2021年9月開催のコミュニケーションツール関連イベント「Enterprise Connect」のパネルディスカッションに、これらのWeb会議ツールベンダー3社の担当幹部が参加。各社はユーザー企業の間で、オフィスワークとテレワークを組み合わせたハイブリッドワークへの移行が進んでいると明かし、「企業の従業員同士の協働の在り方が複雑になる」との見通しを示した。こうした中、各社は全ての会議参加者に同様の会議体験を提供できるように、Web会議ツールを進化させようとしている。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)が始まる前は、日常的な会議は主に対面だった。「あの頃のやり方には戻れない」と語るのは、Zoomで音声クラウドサービス「Zoom Phone」と会議室用テレビ会議アプライアンス「Zoom Rooms」の販売責任者を務めるグレーム・ゲディーズ氏だ。ゲディーズ氏は、ハイブリッドワークへのWeb会議ツールの適応は「まだ始まったばかりだ」と説明しつつも、「これから本格化していく」と話す。
CiscoでWeb会議ツール「Webex」のデバイス担当バイスプレジデント兼ゼネラルマネジャーを務めるスノー・キスブ氏は「COVID-19のパンデミックに伴い、多くの企業が急きょテレワークへの移行を余儀なくされ、Web会議をしなければならなくなった」と話す。キスブ氏はWeb会議の画面分割機能が「会議を民主化した」と説明する。画面分割機能は、全ての参加者を同じサイズのフレームに表示する機能だ。一部の従業員がオフィスに戻りつつある中、企業はこうした全ての会議参加者への平等な扱いを継続する必要があるという。
Zoom、Microsoft、Ciscoはいずれも人工知能(AI)技術を利用し、リモートの参加者だけでなく会議室にいる会議参加者も1人ずつ1つのフレームに表示する機能を提供する。この機能により、全ての会議参加者が平等な扱いを受けるだけでなく、テレワーカーは会議室にいる会議参加者の表情やしぐさを読み取りやすくなる。Ciscoはこの機能をすでに提供しており、Zoomはβ版を提供している。Microsoftは、2022年中にこの機能をリリースする計画だ。
MicrosoftでWeb会議機能を持つユニファイドコミュニケーション(UC)システム「Microsoft Teams」向けデバイス担当ゼネラルマネジャーを務めるイリヤ・ブクシュテイン氏は、現状では会議室からの会議参加者がプレゼンテーションをするために移動し、固定されたカメラの前に来てしまうことがあると指摘。「そうなると背中ばかりを見る羽目になる」と同氏は語る。同氏は、AI技術を使ったライブトランスクリプション(文字起こし)や翻訳も、全ての会議参加者がスムーズに会議参加するための方法だと述べる。
パネルディスカッションの司会を務めた調査会社Recon Researchの創業者アイラ・ウェインステイン氏は、拡張現実(AR)や複合現実(MR)、仮想現実(VR)といった技術が今後のオンラインコラボレーションに役立つかどうかを尋ねた。パネルディスカッションに参加した企業は、これらの技術への投資を発表している。MicrosoftはMRアプリケーション開発ツール群「Microsoft Mesh」を開発しており、Zoomは自社のWeb会議ツールやホワイトボードアプリケーションと、FacebookのVRアプリケーション「Horizons Workrooms」を連携させる計画だ。
キスブ氏は「AR技術の利用は、通常の会議には最適ではない」と語る一方、新製品の仮想モックアップ(試作模型)を検討するのに役立つ可能性があると述べる。ブクシュテイン氏は「会議室はAR技術よりも一般的な、大型モニターのような技術の恩恵を受けそうだ」と語る。例えばディスプレイが大きければ、映像とスライドに加え、チャットや挙手した人のリスト、会議のライブ文字起こしなども表示できると、同氏は説明する。
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