AIOpsがもたらす具体的なメリットと、検証に伴う「リスク」の有無便利そうなAIOps、実際は?

AIを応用した運用支援。便利そうなことは分かるが漠然としているAIOpsは、具体的にどのようなメリットをもたらすのか。AIOpsの効果が期待できる例を紹介する。

2021年11月10日 08時00分 公開
[Aaron TanComputer Weekly]

 「AIOps」はIT運用(Ops)向けAIを表すためにGartnerが生み出した造語であり、機械学習とデータサイエンスによるIT運用とパフォーマンスの問題点の特定、トラブルシューティング、解決に寄与する。AIOpsにはある程度の自動化と手作業の削減も含まれる。

 AIOpsはビッグデータを取り込むところから始まる。そのビッグデータは、データの履歴分析や取り込み中データのリアルタイム分析に使われる。機械学習を活用してビッグデータから得た洞察や分析に基づいてアクションを開始する。これらにより、多くの労力が必要なタスクに対応できる方法がITチームに提供される。

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 ITインフラの複雑さが増すにつれ、AIOpsも普及している。Gartnerの予測によると、アプリケーションとインフラの監視にAIOpsとデジタルエクスペリエンス監視ツールを使う大企業が2023年には30%に増加するという。AIから導き出されるグローバルなビジネス価値が2022年までに約3.9兆ドル(約445兆1850億円)に達するともGartnerは予測している。

AIOpsが解決可能な問題

 ITチームは、迅速に問題を解決するというプレッシャーを受けている。インテリジェントなインフラ監視システムで大量のデータを分析し、高効率かつ実用的な方法で調査結果を提示することにはメリットがある。こうしたニーズを解決するのがAIOpsだ。AIOpsは、ITチームが必要とする検証済みデータによる洞察を提供し、自動化された方法でスマートかつ迅速な意思決定を下せるようにする。分析されるデータには次のようなものがある。

  • インフラとアプリケーションのデータ

監視システムのデータやインテリジェントなアプリケーションおよびサービス監視ツールのログなど。

  • ITサービス管理のデータ

チケット、変更管理、資産情報など。

  • ビジネスシステムのデータ

RPA(ロボティックプロセスオートメーション)ツールを含む。

  • 高度なビジネス指標

問題点がビジネスにどのように影響するかを関係者が理解するのに役立つ。

 AIOpsの最大の利点は、ほぼ間違いなくパフォーマンス監視機能だ。最新の監視プラットフォームは、ハイブリッドインフラの可視性を提供できる。だが、もはや可視性だけでは不十分だ。監視対象データを並べ替えて意味ある情報を手作業で引き出すこれまでのプロセスは拡張性に乏しく、停止している時間も長過ぎる。複雑化が増す現在の環境を考えれば、ITチームが必要とするのは問題点を迅速に特定できるインテリジェントな監視プラットフォームだ。

ビジネス成果を高めるAIOps

 IT部門の場合、関連するデータを全てまとめることでサービスを改善し、ビジネス成果を大幅に向上させられる可能性がある。AIOpsは、予測機能と原因分析を通じて問題点に関するより多くのコンテキストと洞察を提供する。

 例えば、長引けば停止につながる恐れのある不適切なリソース使用パターンを検出できる。ITチームはデータ主導の自動分析を使ってその停止を回避するための推奨事項を提供し、最終的には数十時間の人的関与やサービスの中断なしにその問題を解決できる。こうした機能は、既にスリム化されているITチームの作業負荷を大幅に軽減するかもしれない。

 AIOpsは安定性と可用性の高い顧客向けサービスのサポートに必要な洞察も提供する。ITチームは、安定性への影響に基づいてアプリケーションやインフラの障害に優先順位を付けて取り除くことができる。その結果ユーザー満足度が向上し、長期にわたる顧客維持が確保され、収益が増加する。

AIOpsの今後

 AIOpsの採用が増えるにつれ、機能は進化を続けるだろう。AIOpsと自動化は次のようなメリットを引き出すと期待されている。

  • 規範的かつ予測的機能の強化

機械学習を使ってデータセンターのパターンを細部まで掘り下げることにより、より実用的な洞察と先を見越した新機能が提供されるだろう。インシデント、問題、変更、人間やインフラの知識ベースのデータによって機械のデータにコンテキストを与えることで、自己修復型組織に向けた準備が整う。

  • セキュリティ分析の向上

アプリケーションやインフラの異常を検出することを目的に、データには既にコンテキストが与えられている。次のステップはユーザーの異常な行動を特定することだ。企業データの侵害にかかるコストは平均390万ドル(約4億3500万円)に上る。SIEM(Security Information and Event Management)ツールを持たないIT部門にとって、セキュリティ分析は魅力的な機能だ。

  • 優れた従業員エクスペリエンス

人材が左右する今日の経済では、従業員の体験を測定して定着率を上げ、生産性を高めることが重視される。従業員が自社のアプリケーションにどの程度満足し、どのツールの効果が最も高いかを判断できる。エンドユーザーエクスペリエンス管理機能はますますコモディティ化が進んでいる。

 AIOpsは、IT部門がリモートワークやデジタルビジネス取引を乗り切る上でこれまで以上に役立つ存在になっている。2021年、ITの運用は新たな課題に直面している。少なくともAIOpsの機能領域を検証することに差し迫ったリスクはほとんどなく、潜在的な見返りは多い。

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