コロナ禍で人命を救った「HoloLens 2」【前編】
航空機エンジニアの“「人工呼吸器」職人化”に「HoloLens 2」はどう貢献したか
パンデミックの課題解決に、Microsoftの「HoloLens 2」を活用する動きが広がっている。さまざまな現場をHoloLens 2はどのように支えているのか。
2020年、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)の最中に入院患者が急増した英国の医療機関は、人工呼吸器の調達が困難になっていた。そのときRolls-Royceといった英国の大手メーカーが急きょ、人工呼吸器の製造に乗り出した。専門外の従業員にそのノウハウをどう伝えるのか――。
当時、シェフィールド大学(University of Sheffield)の先端製造研究センター(AMRC:Advanced Manufacturing Research Centre)でデジタル改革責任者を務めるラブ・スコット氏は車を走らせ、英国各地のメーカーを訪問。人工呼吸器製造担当者に面会し、MicrosoftのMR(複合現実)デバイス「HoloLens 2」を届ける活動に精を出していた。コロナ禍の中でHoloLens 2は、これまで自動車や航空機を作ってきたエンジニアに、人工呼吸器の製造方法を教えるために大活躍した。
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仕事場でAR技術の活用が広がっている
航空機エンジニアが人工呼吸器を組み立て 「HoloLens 2で組み立て指導」の中身は
頭に着用するHoloLens 2は、レンズ越しの空間に製造物や製造現場の3D(3次元)映像を表示する。エンドユーザーは3D映像を遠隔にいる人と共有できるため、現場の様子を伝えたり、指導を受けたりする際に役立つ。
パンデミック中、航空機メーカーAirbusが英国ウェールズに設置する研究開発施設が、医療機関で不足が深刻だった人工呼吸器の製造工場に転用されていた。AMRCはこの施設でHoloLens 2を使い、従業員に人工呼吸器の組み立て方をレクチャーした。従業員はAMRCの本部にいる専門家から説明や指示を受け、組み立ての知識を吸収。「迅速なスキルアップ」(スコット氏)のおかげで的確に作業を進め、人工呼吸器を作ることができた。一方でAMRCは、専門家が現場に出向いて一人一人に教えるより、お金と時間を削減できた。
HoloLens 2は2019年発売で、米国のMicrosoft公式サイトでの価格は3500ドルから。決して安価とは言えないが、パンデミック前から製造現場や建設現場を中心に、導入が進んできた。ユーザー企業はHoloLens 2の活用によって作業の効率化を図ったり、従業員のスキルを高めたりし、業務改善によるコスト削減を追求している。
水ビジネスを手掛けるEcolabはHoloLens 2を使い、従業員の出張経費を削減した。同社の技術者は従来、川や湖の水質を分析するために世界各地を回り、勤務時間の最大90%を移動に費やしていた。そうした中にあって、EcolabはHoloLens 2を約100台導入し技術者に配布。現場に行かなくても、遠隔から仕事ができる環境を整えた。その結果、移動の時間とコストを大幅に削減できたという。同社バイスプレジデントのケビン・ドイル氏は「HoloLens 2によって飛行機に乗るよりもずっと手早く、水質分析に必要な情報を獲得できるようになった」と述べる。
中編は、医療分野でのHoloLens 2のさまざまな活用例を紹介する。
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