従業員900人の解雇を「Zoom」のWeb会議で伝えた米企業のCEOには、同社の従業員からだけではなく、人事の専門家からも批判が集まった。ただし中には、このCEOに“同情”を示す専門家もいる。それはなぜなのか。
オンライン住宅ローンサービス「Better.com」を運営するBetter Holdcoの最高経営責任者(CEO)、ビシャル・ガーグ氏は、Web会議ツール「Zoom」を使った会議で、900人の従業員に解雇を告げた。このWeb会議の様子は録画され、動画共有サイトに投稿された。ガーグ氏の“悪評”がSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)で広がるきっかけとなった。
「もしあなたがこの会議に出席しているのなら、あなたは解雇される不運なグループの一員だ。あなたの雇用は即日終了する」。Web会議でガーグ氏は、参加者にこう告げた。SNSで拡散した動画には、このWeb会議を録画していた人物が解雇宣告を聞いて上げた痛ましい声も収録されている。
今回のWeb会議の内容は、Better Holdcoの従業員だけでなく、人事の専門家にも衝撃を与えた。従業員への同情心も、計画性もない解雇の伝え方だと専門家は指摘する。
従業員関係管理サービスを手掛ける企業HR AcuityのCEO、デブ・ミュラー氏は、ガーグ氏による解雇の伝え方は「落第点だ」と述べる。投稿された動画を見るとガーグ氏は、従業員に解雇のニュースを伝える際に、解雇宣告が自分にとって、いかにつらいことかを従業員に語って聞かせている。
ガーグ氏の振る舞いについてミュラー氏は「何もかもが不適切だ」と話す。ミュラー氏は、ガーグ氏が今回のWeb会議で「過去の解雇宣告でどれほど自分が心を痛めたか」を言及したことについて、「従業員への共感の心が完全に欠如している」と指摘。「本当に不誠実で、自分のことばかり考えている」(ミュラー氏)と強調する。
こうした場面では、「なぜ会社がこうした措置を取るのか、それを避けるためにどんな措置を取ってきたのか、従業員はどのようなプロセスで選別したのか、そしてその人たちがどうなるのかを、真摯に説明する必要がある」とミュラー氏は話す。「(ガーグ氏は、)異なるアプローチを取るべきだった」(ミュラー氏)
人事コンサルティング会社OperationsIncのCEO、デービッド・ルイス氏は、ガーグ氏の解雇宣告について「うまい伝え方ではなかった」と話す。ただしルイス氏は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)が、解雇の伝え方の選択に影響した可能性を指摘する。COVID-19の拡大を防がなければならない中、Better Holdcoは解雇の対象となる従業員全員を拠点に集めることができず、Web会議を通じて解雇を伝えるしかなかった。「だが、そうすべきではなかった」と同氏は強調する。
複数の従業員にまとめて解雇宣告をするのは「ひどいやり方」だとルイス氏は話す。一方で「まだましな方法だった」と同氏は付け加える。解雇を段階的かつ個別に従業員に伝えていた場合、自分が解雇されるかどうか分かるまで、従業員は順番を待たなくてはならないという問題が生じていたと同氏は指摘する。
後日ガーグ氏は解雇の伝え方の不手際を認め、従業員向けのメッセージを同社のWebサイトに掲載。以下の通り謝罪した。
私の伝え方が、困難な状況を悪化させたと悟りました。心から申し訳なく思います。この状況を教訓として、あなた方に期待されるリーダーになるために努力すると約束します。
人事の専門家は、解雇宣告の方法を間違えたと考えるガーグ氏の自己評価は正しいと評価する。それでも「今回の失敗は大きい」とルイス氏は述べる。「必要なのはよく練られた台本と解雇を伝える責任者の感情の排除だ。謝罪の言葉は必要ない」(同氏)
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