「テレワークでコスト削減」は幻想 新たにかかる“意外なコスト”とはテレワークの開始直後には見えにくい「4つのコスト」【前編】

テレワークの導入によって新たなコストが生まれることもある。その一つが、従業員宅に業務環境を整備するためのコストだ。テレワーク導入前に慎重に検討すべき「見えにくいコスト」の正体とは。

2022年02月23日 08時15分 公開
[Jon ArnoldTechTarget]

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 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)により、企業のテレワーク導入が急速に拡大した。従業員は概してこの変化を歓迎したが、テレワークが雇用主や従業員にもたらす弊害も2021年の間に少しずつ明らかになった。雇用主にとっても従業員にとっても、2022年以降も継続したいと思える利点がテレワークにはある。だがテレワークを継続するに当たって、精査が必要な要素もある。

 その一つがコストだ。テレワークは雇用主と従業員の双方にとって、経済的な恩恵をもたらす面もあれば、想定外の支出につながる面もある。パンデミックの時代に適応するための働き方としてテレワークを維持するのであれば、経営陣はそれによってかかる“実際のコスト”を余すことなく検討することが望ましい。テレワークに伴って生じる“すぐには見えないコスト”にどのようなものがあるのか。本連載はその4つの例を紹介する。

コスト1.ホームオフィスの設備整備費

 パンデミックが始まった当初、特別な理由のない従業員はテレワークをしていなかった。パンデミックは一時的なものと考えて、ほとんどの雇用主と従業員はテレワークの恒久化を考えていなかったと考えられる。しかしパンデミックが長期に及び、従業員がテレワークに適応したことから、恒久化しようとする企業の取り組みが進みつつある。オミクロン株といった新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の新たな変異株の流行がテレワーク恒久化の動きを後押しし、「安全な勤務環境の提供」がテレワーク促進の中核的なテーマになりつつある。

 テレワークの恒久化が進むと、テレワーカーは自宅の仕事環境をオフィスに近づけるための設備強化が必要になる。必要になるものの例として、共同作業をよりスムーズするための新しいPC、スマートフォン、Webカメラ、スピーカー、ヘッドセットといったIT機器が挙げられる。

 それ以外にも、業務に適したデスクや椅子、Web会議の画面を明瞭にするための照明などが必要になることが考えられる。従業員の自宅を仕事のための拠点にするのであれば、こうしたIT機器やオフィス家具への金銭的支援が必要になる可能性が高い。隠れたコストを見つけようとするとき、ホームオフィスの整備にかかる設備コストは精査しておく必要がある。

コスト2.ホームオフィスのインターネット接続サービスコスト

 テレワークの成否を分ける大切な要素が、従業員の自宅におけるネットワーク接続環境だ。インターネット接続サービスの利用コストは継続的に生じることから、ホームオフィスの整備(IT機器やオフィス家具の調達)にかかるコストとは分けて考える必要がある。これらの資産は買い替えコストを考える必要はあるものの、一般的には一度購入すればしばらくはコストがかからない。

 従業員が必要とするインターネット接続サービスのスペックは、業務の内容によってさまざまだ。雇用主は、従業員が自宅で利用するインターネット接続サービスのスペックが業務を全うするのに不十分であるケースを想定しておく必要がある。その場合、現時点で従業員が利用しているサービスよりも上位のインターネット接続サービスを導入する必要がある。スマートフォンやタブレットなど、モバイル通信のデータプランも同様だ。場合によっては、従業員の自宅では上位のインターネット接続サービスが利用できなかったり、なんらかの要因によりネットワーク接続が途切れがちになってしまったりすることもある。この場合、ネットワークを引き直したり、新たなインターネット接続サービスと契約したりといった対処が必要になり、コストはさらに増加する。


 後編は、残る2つの隠れたコスト「既存オフィスの維持コスト」「従業員の生産性維持費」について考察する。

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