「脱クラウド」で“クラウドの呪縛”から解放される方法「VMware Cloud on AWSで“クラウド破産”」の傾向と対策【後編】

熟慮の末にクラウドサービスへ移行したにもかかわらず、想定外の問題に直面して「脱クラウド」に踏み切らざるを得なくなった企業は、どうすればよいのか。スムーズなオンプレミス回帰のポイントを説明する。

2022年03月21日 12時00分 公開
[Brian KirschTechTarget]

 VMware製品で構築した仮想マシン(VM)をクラウドサービスで実行するサービス(以下、VMware製品実行サービス)を利用すれば、VMware製品のユーザー企業は比較的スムーズにクラウドサービスへの移行を進めることができる。ただし前編「VMwareユーザーが『脱クラウド』せざるを得なくなる理由」の通り、クラウドサービスへの移行で想定外のコスト増加に直面し、クラウドサービスからオンプレミスインフラに戻る「脱クラウド」を決断する企業がある。

 ユーザー企業はクラウドサービスへの移行を選ぶ前に、クラウドサービスがもたらすメリットと運用コストを検討すべきだ。クラウドサービスを利用しつつ、特定のアプリケーションやデータをオンプレミスインフラに残すハイブリッドクラウドは、クラウドサービス移行の簡略化とコストの節約に役立つことがある。アプリケーションのリソース消費量を分析するプロファイリングツールは、特定のアプリケーションをクラウドサービスとオンプレミスインフラのどちらで運用すべきかを判断するのに役立つ。

 熟慮の末にクラウドサービスへの移行を果たしたにもかかわらず、脱クラウドを進めざるを得なくなった企業は、どうすればよいのか。

“脱クラウド”の正しい進め方

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 脱クラウドを決断して、アプリケーションやデータをオンプレミスインフラに戻そうとしたときに、古いハードウェアを破棄してしまっている場合がある。ユーザー企業がクラウドサービス移行を決断する主な理由が、オンプレミスインフラのハードウェアが寿命を迎えたことだからだ。このような場合は、HCI(ハイパーコンバージドインフラ)を用意すれば、オンプレミスインフラに膨大な量のアプリケーションとデータを戻せるようになる。

 HCIはストレージ仮想化技術でサーバのディスクをストレージとして利用できるため、ストレージインフラの削減につながる。HCIの導入には概して高額なコストを伴うが、必要な設置面積の少なさやスケールアウトのしやすさという特性がある。

 全てのアプリケーションを脱クラウドの対象にする必要はない。オンプレミスインフラに戻した方がよいアプリケーションもあれば、クラウドサービスで動かし続けた方がよいアプリケーションもある。例えばデータの保管にかかるコストの観点から、大規模なファイルサーバをオンプレミスインフラに戻すといった判断を、あらゆるアプリケーションに対してすることが必要だ。

 Amazon Web Services(AWS)のクラウドサービス群を利用するアプリケーションは、同じくAWSが提供するVMware製品実行サービス「VMware Cloud on AWS」で運用するのが適している。データのやりとりが発生する場所をAWS内に絞り込むことで、AWS外へのデータ転送に伴う追加料金や遅延の発生を避けやすくなる。他のクラウドベンダーのVMware製品実行サービスも同様だ。一方でVMware製品実行サービスは、オンプレミスのVMware製品の完全な代替にはならない。オンプレミスインフラだけではできないことを実現するためのインフラとして捉えるとよい。

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