Oracleは電子カルテ(EHR)ベンダーのCernerを約283億ドルで買収し、ヘルスケア戦略発表の場で「全米EHR構想」を掲げた。電子カルテの相互運用性は長年の間解決困難だったこともあり、アナリストは悲観的だ。
2022年6月6日(米国時間、以下同様)、Oracleは約283億ドルで電子カルテ(EHR:電子健康記録)大手ベンダーCernerの買収を終えた。そしてOracleは「全米EHR」を構築するという難易度の高い目標を掲げると同時に、CernerのEHRシステム「Millennium」を改善するという現実的な目標も発表した。
Oracleの会長兼最高技術責任者(CTO)を務めるラリー・エリソン氏は、2022年6月9日に公開したウェビナー「The Future of Healthcare」の中でOracleのヘルスケア戦略とCerner買収の話題に触れた。「医療機関ごとに分かれている数千件ものEHRデータベースの上に位置する、全米規模で連携するEHRデータベースとして全米EHRを用意する」と述べ、EHRシステムのデータ規格が統一されていない問題を解決する計画を発表した。一般的にEHRシステムは、患者のアレルギー、投薬、血液検査をはじめとする各種検査結果などのデータを保管している。
エリソン氏によると、現在のEHRシステムは「患者中心」ではなく「病院中心」になっているのが問題だ。各病院が個別にEHRシステムを購入し、独立したネットワークで医療情報システムを運用することで、データベースも孤立している。医療機関は相互運用性の問題、つまり異なるEHRシステム同士で患者データを交換する難しさについて悩み続けている。
「CernerとOracleが力を合わせれば、健康情報を管理する“画期的で新しいシステム”をクラウドインフラに構築するのに必要な技術を全て用意できる」とエリソン氏は豪語する。このシステムがあれば、医療従事者は今までよりも「はるかに効率よく、適切な情報を受け取ることができる」と同氏は強調する。「適切な情報は、医療を根本から変革する」(同氏)
調査会社Gartnerでアナリストを務めるグレッグ・ペシン氏は、全米EHRを構築するというOracleの目標は「長い道のりとなり、多くの困難が待ち受けている」と指摘する。全米EHRの実現には「多くの障壁があるのが現実だ」とペシン氏は語る。
後編は、Oracleが国家規模のEHRを作るに当たって直面し得る課題について、ペシン氏の見解を紹介する。
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