通信大手Verizon Communicationsは大学と提携し、「5G」を活用してデジタル格差の解消といった社会の変革を目指す。どのように実現するのか。
通信事業者Verizon Communicationsは、米国のアリゾナ州立大学(ASU)と協力し、「5G」(第5世代移動体通信システム)の新たな活用法の研究開発に取り組む。Verizonの一部門であるVerizon BusinessのCEOタミ・アーウィン氏は、この取り組みはデジタル格差の解消や、リモート学習の質の向上を支援するものだと語る。
米国では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)によるデジタル格差が深刻化している。アリゾナ州では、20万人以上の学生を含めた100万人もの住民がインターネットに常時接続できていない。ASUはこのようなデジタル格差を解消するため、解決策の開発に取り組んでいる。
ASUの学長マイケル・クロウ氏は、同大学は変革のさなかにあるとし、次のように語る。「教育を受ける者は、もはやデジタル格差により分断されることはない。ASUは従来不可能だった方法で、人々の創造性を解放する」。同大学は高速ブロードバンド(広い帯域幅による高速データ通信)を実現する5G技術を用いて、拡張現実(AR)と仮想現実(VR)を用いた没入型学習の開発を目指す。没入型学習はリモート学習にも活用できる。同大学は5Gを使い、リモート学習を実施しやすくするための取り組みにも注力する。
デジタル格差の解決策に利用する技術が、5Gを活用したVerizonの超広帯域無線通信(UWB:Ultra Wide Band)だ。UWBは通信の高速性や広帯域性、低レイテンシ(低遅延)といった特徴を有する。これを活用することで、没入型学習からコミュニティー支援まで、幅広い分野で利用する各種アプリケーションの機能を強化できる。他にもVerizonはASUの研究者と協力し、5Gや、データを生み出すさまざまなデバイスの近く「エッジ」でほぼリアルタイムにデータを処理し分析する「エッジコンピューティング」を活用した技術の開発を目指す。
Verizonによる5G活用推進プロジェクト「5G Innovation Hub Program」の一環として、ASUは一連の取り組みを進める。同プロジェクトはVerizonが企業や大学、国立研究所、政府、軍部と提携し、5Gを活用した産業の変革方法を探求するものだ。同社は医療から治安、エンターテインメントまで、業界ごとの用途開発を専門とする5Gラボを、米国で5カ所、英国のロンドンで1カ所運営している。
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