ニュージーランドで低所得者層向けに住宅を提供するCORTが、センサーと分析ソフトウェアを住宅に導入。IoTの活用によって分かったこととは。
ニュージーランドのCommunity of Refuge Trust(以下、CORT)は、IoT(モノのインターネット)を活用して住宅室内の空気環境と換気の改善に取り組んでいる。住宅の居住者が健康で快適な生活を送れるようにする狙いがある。CORTは、オークランド市で低所得者層向けに住宅を提供する、非政府で非営利の組織。同市で約550人以上が暮らす400件以上の中規模住宅を運営している他、100件以上の物件を開発中だ。
IoTデバイスの開発や導入支援を手掛けるTetherと協力して、CORTは住宅にセンサーと分析ソフトウェアを導入。温度や湿度、二酸化炭素(CO2)濃度、光、騒音など、住環境に関する条件を監視できるようにした。取り組みの狙いはどこにあるのか。
CORTは、ある住宅の内部に2つのセンサーと、住宅の外部に3つ目のセンサーを設置した。3つ目のセンサーは、住宅の内部と外部を比較することが目的だ。センサーは電池で駆動するため、住宅からの電力供給は不要。センサーの交換は5年に1度で済む。
これらのセンサーは、オーストラリアのIoTネットワーク事業者Thinxtraが運営するネットワークに接続する。このネットワークは、低消費電力で広域の無線通信を可能とする無線通信技術「LPWA」(Low Power Wide Area)の無線規格「Sigfox」に準拠している。センサーは、取得した情報をTetherのモバイルアプリケーションとWebアプリケーションに送信する。CORTはダッシュボードで生活環境をリアルタイムに把握できる。
CORTのCEO(最高経営責任者)であるスティーブン・ハート氏は、「低所得者層向けのコミュニティー住宅や低価格住宅であっても、建設後は他の住宅や商業施設と同じように継続的なメンテナンスや投資が必要だ」と述べる。
ニュージーランドの建築基準に関する法令は、安全で健康的かつ耐久性のある住宅を維持するための規制要件を定めている。ハート氏は「その枠組みがあれば居住者が安全で健康な生活を送れる、という保証はない」と話す。TetherとThinxtraのIoT技術を利用することで、CORTは各住宅の生活環境に関する知識をより深められるようになった。それは居住者とのヒアリングや観察だけでは分からなかったことだという。
Tetherの最高執行責任者(COO)であるサム・ブラックモア氏は、「住宅の開発に多額の資金が費やされる一方で、そこに住むことによる潜在的な影響を理解するための投資はほとんど実施されていない」と指摘する。ブラックモア氏はCORTの取り組みについて、「居住者が健康で快適さを保つために必要な知識の土台になる」と評価する。それを支えているのが、省電力かつ低コストで運用可能なIoTデバイスの活用だ。
オークランド市の住宅は一般的に断熱性が高く、過剰なエネルギーを使わずに冬や夏の期間を越せるように設計されている。ただし、ThinxtraのCEOであるニコラス・ランブロー氏は、想定していた生活環境と各住宅内で実際に起こっていることの間には大きな違いがあると指摘する。「当社がCORT、Tetherと連携して進めているのは、居住者の生活体験とリアルタイムのデータを組み合わせ、住宅を常に最適な状態に保つために必要な取り組みだ」(ランブロー氏)
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