企業のインフラ投資額は全体的に成長しているものの、中には全く伸びていない業界がある。かつてはインフラ投資の“王者”だった、その業界とは。
データセンターをはじめとするインフラへの投資額は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)が終息しつつある2022年に、回復傾向に転じた。ただし業種によって、インフラ投資の活発さには大きな違いがある。
IT市場調査会社のSynergy Research Groupは、大手ユーザー企業(エンタープライズ)と大手クラウドベンダー(ハイパースケール)、通信事業者のインフラ投資動向を分析した。同社によると、この3業界を合わせた2022年のインフラ投資総額は7000億ドルに上る。
インフラ投資額の2016年から2022年におけるCAGR(年平均成長率)は、大手ユーザー企業では6%、大手クラウドベンダーでは20%。通信事業者では0%だ。2022年の12カ月の間に、大手ユーザー企業と大手クラウドベンダーではインフラ投資額が9%増加したのに対し、通信事業者では4%減少した。大手ユーザー企業のインフラ投資額は、2019年と2020年は軟調だったものの、2021年に回復に転じている。
2022年のインフラ投資総額における大手ユーザー企業の割合は、2016年と同様に29%であり、2016年から2022年まで大きな変動はない。大手クラウドベンダーの割合も29%であるものの、2016年の13%と比較して16ポイント増加。通信事業者の割合は、2016年の58%から42%へと低下した。
インフラ投資総額に占める大手クラウドベンダーの割合は「着実に増え続けている」とSynergy Research Groupは指摘する。大手クラウドベンダーのインフラ投資額の増大は、クラウドサービスの需要が成長し続けていることを反映している。通信事業者は依然として、低迷から抜け出せていない。「インフラ投資額の推移が、それを反映している」と、Synergy Research Groupは見解を示す。
大手ユーザー企業のインフラ投資額は、COVID-19のパンデミックの時から回復したというのが、Synergy Research Groupの見方だ。サプライチェーンの停滞に起因するデータセンター設備のコスト高騰も、投資額の増大に関係していると同社はみる。
クラウドサービスへの投資意欲が衰えない中でも、オンプレミスインフラへの投資が広がるとの見方がある。次回は、その理由を検証する。
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