CIOの役割と言えば、IT分野の戦略を組み立て、システムや情報管理の業務を統括することだと考えがちだ。だがF1チームAston Martin F1のCIOの考え方は少し違う。何を重要視しているのか。
自動車レースのフォーミュラ1(F1)世界選手権に出場するチームAston Martin Aramco Cognizant Formula One Team(以下、Aston Martin F1)のCIO(最高情報責任者)には、どのような役割が期待されているのか。同チームでCIOを務めるクレア・ランズリー氏に話を聞いた。第1回に続き、本稿はランズリー氏がチームを成功に導くためにどのような仕事を重視しているのかを紹介する。
ランズリー氏は約40人のITチームを統括する。2022年7月の就任から6カ月が経過し、同氏はデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進に着手したところだ。
「今はチーム内に溶け込み、成功を目指した準備作業に注力している」とランズリー氏は語る。今後はレース会場にも出向いて、Aston Martin F1が開発する「F1マシン」がどの程度過酷な環境に置かれているのか、サーキット上での整備プロセスをより円滑にするために何ができるのかを把握したいと考えているという。
ランズリー氏は、F1が「男の世界」というイメージが強いことは理解している。「そのような見方をひっくり返すと同時に、IT部門に変化を起こしたい」と同氏は言う。そのためには、データセンターにこもるのではなく、事業に関わる時間を増やす必要があると同氏は考えている。
「できるだけガレージに出向きたい」とランズリー氏は述べる。エンジニアがデスクで仕事をするのは、その場所が価値を生み出す場所だからだ。同氏はそこに赴き、エンジニアとコミュニケーションを取る必要があると考えている。それはF1の世界の通例とは異なるアプローチだと同氏は語る。
ランズリー氏はモータースポーツ業界でシニアマネジャーを務めた経験を持つ。CIOの役職に就いたのはAston Martin F1での職務が初めてだ。同チームは、長期的な展望を実現するためにはITが重要な役割を担うという考えを持っている。同氏はそのような職場でIT分野のリーダーシップを発揮する機会を切望していた。
Aston Martin F1で面接を受けた時点から、ランズリー氏はチームを成功に導くために、ITを使って何を実現すればいいのかを理解し始めたという。「車体の設計から発進まで、全てに技術が関係している。この取り組みは長い道のりになる」(同氏)
「Aston Martin F1がチャンピオンシップで優勝するチームになるために、どれほどの規模のDXが必要なのかを考えるのは実に楽しい」とランズリー氏は語る。同氏はこれまでの経験を踏まえると、計画立案と同時にアジェンダを管理し、DXを確実に、適切なタイミングで実施することが必要だと考えている。
第3回は、Aston Martin F1が成果を出すために、CIOにどのような役割が求められているのかを掘り下げる。
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