定年退職や早期退職を経て、悠々自適の余生を送る50歳以上の中高年齢者。人材不足が慢性化するIT業界は、こうした中高年齢者の現役復帰に活路を見いだそうとしている。突き動かすのは切迫感だ。
職に就いておらず、積極的に就職先を探していない――。こうした人を、英国政府は「経済的不活動者」(Economically Inactive)と呼ぶ。経済的不活動者は増え続けているわけではない。それでも、より多くの人を仕事に復帰させることは、英国において依然として重要な課題となっている。
復帰を促す対象の中で特に重要なのが、定年退職や早期退職をした、50歳以上の中高年齢者だ。
「経済的不活動者の増加は、インフレーションの抑制を困難にし、成長にダメージを与え、既に疲弊している財政を圧迫する」。英国貴族院(上院:House of Lords)の経済問題委員会(Economic Affairs Committee)は、経済的不活動者に関する2022年12月発表の調査報告書の中で、こう説明する。
調査報告書によると、英国全土で110万人の人材が不足している。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)の中、50歳から64歳の中高年齢者がこぞって退職したことが、人材不足の「最大の要因だ」と指摘。「これまで見えにくかった、高齢化による人材不足への影響が顕著になってきた」との見方を示す。
IT分野は慢性的な人材不足にさらされている。例えばデータセンター業界では、高齢化による熟練者の退職が及ぼす影響が特に強いという。企業がこぞってシステムのモダナイゼーション(最新化)に取り組む一方、規制やコストの理由から、レガシーシステムを維持する必要がある企業もある。そのために必要な知識を持つ人材を見つけることが困難になっているのだ。
次回は、中高年齢者の現役復帰が難しい理由を整理する。
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