人工知能技術の発展とともに自身の業務の先行きを考えて不安を覚える頭脳労働者もいる。だが、上手に付き合う方法はある。生成AIツールをどう使うべきなのか。どう使うべきではないのか。専門家に聞いた。
テキストや画像などを自動生成するAI(人工知能)技術である「ジェネレーティブAI」(生成AI)。AI(人工知能)ベンダーOpenAIのAIチャットbot「ChatGPT」の急速な普及により、生成AIを取り巻く動きが活発化している。さまざまな生成AIツールが生まれる一方、生成AIツールの“功罪”に関する議論は、依然としてやまない。われわれは生成AIツールをどのような目的で使うべきなのか。そして、どのような目的で使ってはいけないのか。
2023年3月、シンクタンクのBrookings Institution(ブルッキングス研究所)とGeorgetown University(ジョージタウン大学)が、オンラインイベント「ChatGPT and the future of work」を共同開催した。Stanford University(スタンフォード大学)経営大学院で教授を務めるスーザン・エイシー氏は、同イベントで「ChatGPTは教師データのパターンに依存しており、まだ聡明(そうめい)だとは言い難い」と指摘。例えばChatGPTがソーシャルニュースサイト「Reddit」のチャットを基に学習すると、Redditのチャットのような言葉遣いになると説明する。
エイシー氏は「ストレスがたまりやすい、反復的な作業」の効率を上げるのに、ChatGPTが役立つとみる。例として同氏が挙げるのが、調査に関する作業だ。「情報を要約し、冗長な情報が表示されないようにするChatGPTは、どのような種類の調査にも役立つ」(同氏)
Massachusetts Institute of Technology(MIT:マサチューセッツ工科大学)で経済学の教授を務めるデイビット・オーター氏は同イベントで、ChatGPTなどの生成AIツールは「人のスキル、専門技術、知識、創造性を高めるのに役立つ」と語った。一方で生成AIに限らず、技術は使い方によっては「人のスキルの価値を下げる可能性がある」と主張する。例えばGPS(全地球測位システム)によって実現した地図アプリケーションの普及によって「道を熟知したタクシー運転手のスキルの価値は下がった」と同氏は語る。
「われわれは、AI技術によって何を実現するのかを考える必要がある」とオーター氏は指摘する。人は「自身の能力を補完するための技術開発に関心を持つべきだ」というのが、同氏の考えだ。気候変動など、難しい社会目標の解決を支えるために、AI技術を生かすことを同氏は提案する。
ソフトウェア開発会社Rootstrapでチーフデータサイエンティストを務めるミカエラ・ピサーニ氏は「後から人が成果物を確認することを前提にすれば、ChatGPTは最初のドラフト版を作成するのに役立つ手段だ」と語る。「われわれはChatGPTをあくまでも道具として使い、人の仕事を代行させないようにしなければならない」(ピサーニ氏)
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