Web会議ツールなど、場所や時間にとらわれない働き方を可能にするコミュニケーションツールは、さまざまな人に活躍の場を広げているのは確かだ。ただし「アクセシビリティー」の観点では、課題は依然としてある。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)中、企業はテレワークへの移行を余儀なくされた。テレワーク実現の手段として「アクセシビリティー」(使いやすさ)に配慮した、さまざまなコミュニケーションツールの採用が進むことになった。それによって生まれたメリットは、障害者雇用の壁が低くなったことだ。
Web会議ツールといったコミュニケーションツールは場所を問わず、さまざまな情報を入手したり、会議に参加したりすることを可能にした。それにより障害のある従業員にとって活躍の場が広がった。とはいえコミュニケーションツールのアクセシビリティーに関する課題がなくなったわけではないという。それはどういうことなのか。
コミュニケーションツールのアクセシビリティーについて、ベンダーやユーザー企業は「自己満足に浸っていてはいけない」と、アクセシビリティーアナリストのクラウディオ・ルイス・ベラ氏は強調する。ベラ氏は、2023年3月開催のコミュニケーション関連カンファレンス「Enterprise Connect 2023」で講演。コミュニケーションツールのアクセシビリティーを高める方法や、障害のある従業員がコミュニケーションツールを利用する上での課題を語った。
企業はオフィスワークとテレワークを組み合わせた「ハイブリッドワーク」を推進する上で、コミュニケーションツールを役立てている。コミュニケーションツールの利用時に特に重視しなければならないのは「いかにアクセシビリティーを向上させるかだ」とベラ氏は指摘する。
ライフサイエンス事業を手掛けるVerily Life Sciences(Alphabet傘下)のアクセシビリティー責任者、テイマー・サビア氏は「ハイブリッドワークの導入を機に、障害者をはじめ、さまざまな人材の活用について改めて考えることが必要になった」と述べる。場所を問わない働き方を実現すれば「さまざまな人材にとって活躍の場が広がり、生産性の向上やイノベーションの創出につながる」とサビアは言う。
コミュニケーションツールのアクセシビリティーをどう向上させるかについて、正解はない。同じ障害のある人でも、コミュニケーションツールに求めるものは同じではないからだ。「例えば同レベルの聴力障害のある従業員が2人いるとする。1人は字幕の利用を求めるが、もう1人は手話通訳者がいた方がありがたいと考える」。VMwareでアクセシビリティー担当を務めるシェリ・バーン=ヘイバー氏はこう語る。バーン=ヘイバー氏は「アクセシビリティーを向上させるには、コミュニケーションツールを導入する前に、従業員のニーズに熱心に耳を傾ける必要がある」と説明する。
第2回はアクセシビリティーの観点から、仮想的なホワイトボードである「オンラインホワイトボード」などのコミュニケーションツールの注意点を取り上げる。
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