従業員エンゲージメント(組織との信頼関係)と定着率は密接な関係がある。従業員エンゲージメントの改善に向けて、どのようなITツールがあれば施策を効率化できるのか。
人事ソフトウェアベンダーRemote Technologyの調査によると、米国および英国での離職率は2019年以降、上昇傾向を示している。ただし、離職率の抑制に役立つ「銀の弾丸」はない。
従業員エンゲージメント(組織との信頼関係)と従業員の定着率改善に向けて、何が役に立つのか。離職の問題を理解するのに使えるツールの一例は、以下の通りだ。
上記のツールは、従業員の意見やフィードバックを集めるのに役立つ。意見やフィードバックを集めれば、従業員が現職にとどまるつもりがあるかどうか、どうすれば定着するかを判断するヒントが得られる。
「エクスペリエンス管理ツールを導入して以来、定着率が実質的に上昇している」と話すのは、ITコンサルティング企業Nash Squaredで最高人事責任者を務めるメラニー・ヘイズ氏だ。
従業員エンゲージメントと定着率は切り離せない概念だ。だからこそ、従業員の感情を推し量り、隠れた問題や要望を見極め、それに基づいて行動するのに上記のようなツールが役に立つ。ヘイズ氏はそう考える一方で「従業員の感情は常に変化する」点も重視する。「だから絶えず従業員の声に耳を傾け続けることが重要だ」(同氏)
課題を明確に見極められれば、たとえ予算が限られていても、IT部門の責任者は適切なアプリケーションを調達して課題に取り組み、行動に優先順位を付けることがはるかに簡単になる。
調査会社Gartnerのバイスプレジデントアナリストであるジョン・コストウラス氏は、従業員が退職を考える理由に応じた解決策は豊富にある、と説く。報酬が課題ならば、関連性の高い福利厚生に幅広い選択肢を設けたり、給与の支払い方法に融通を利かせるITツールを導入したりする手段がある。上司に不満があるのなら、管理職の専門能力育成を支援するツールや、管理業務の一部を自動化するツールがある。
ただし最終的に何らかのITツールを導入する場合、どのような結果を望むのかを明確にする必要がある。そうでなければ、「途中で方向性を見失うことになる」とコストウラス氏は警告する。
導入するITツールが目的に合致した使いやすいものになるようにするためには、「導入プロセスの最初からユーザーを関与させること」が重要だという。コストウラス氏は「最も重要なのは使いやすさだ」と主張する。「そのツールを苦もなく扱えるか」「トレーニングもそれほど必要としないで済むか」といった点を、IT部門や人事部門以外の一般従業員および管理職に判断してもらうことが重要、ということだ。
第3回はIT導入に際して、IT部門と人事部門が継続的な協力体制を築くためのポイントを解説する。
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