英国のアパレル企業が相次いで消費者からの返品に手数料を請求する動きを見せている。その背景にはどのような問題があるのか。
英国の公共放送局BBC(英国放送協会)は2023年9月、ファッションブランドH&Mを手掛けるアパレル企業H & M Hennes & Mauritzが、オンラインで購入した商品を返品する際に、消費者に手数料を請求するようになったことを報じた。本稿は同社がこのような動きに至った背景や、他のファッションブランドの動向を整理する。
手数料を請求するに至った背景としてBBCは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)で急増したオンラインショッピングの利用を挙げる。その結果、返品に伴う配送料とコスト、無料返品を利用する消費者がかさむこととなった。この動きを理由に、H&Mはオンラインで購入した商品の返品時に欧州の消費者に対しては1.99ポンドの手数料を課す。H&Mのメンバーシップに登録済みの会員や、店舗への返品持ち込みであれば無料だ。
欧州や北米で事業展開する以下のアパレル企業も、オンラインで購入した商品の返品時に手数料を請求している。
消費者の購買意欲を高めるための特典であった無料返品を廃止する動きがある一方で、返品作業に関するコストを削減する取り組みに注目が集まっている。IT業界や物流業界では、小売業者が返品作業で負担する経費の削減と、作業で発生するカーボンフットプリント(人間活動による温室効果ガス排出量を二酸化炭素に換算した指標)の増加を抑制するための技術開発が盛り上がりを見せている。
厳しい経済情勢が続く中、消費者から販売元に商品を戻す「リバースロジスティクス」で生じるコストは、小売業者にとって無視できない存在だ。返品後の商品を再び販売することは容易ではなく、返品後の状態によっては廃棄物になる可能性もあるため、環境保護の観点からも課題だと言える。
第2回は英国ファッション協会が公開したレポートから、返品問題に向けてアパレル企業が取るべきアクションを考察する。
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