ITに詳しくない従業員でもアプリケーションを開発できるようになるローコード/ノーコード開発ツールに、企業は期待を寄せている。自社のニーズを見失わずに、ローコード/ノーコード開発ツールを使いこなすには。
企業における開発者は限られた人材だ。ITに詳しくない事業部門の従業員がアプリケーションを開発できるようにするために、最低限のソースコードを記述する「ローコード開発」ツール、ソースコードを記述しない「ノーコード開発」ツールを導入することは理にかなっている。ただしそのメリットを最大限に引き出すには、幾つかの点に注意しなければならない。
ERPベンダーUnit4のCTO(最高技術責任者)であるクラウス・イェプセン氏は、「ローコード/ノーコード開発ツールを使えば、熟練した開発者やエンジニアを巻き込むことなく、開発作業に向いている人材を活用できる」と話す。高度な技術を持つ開発者を採用するのは簡単ではなく、コストも掛かりがちだ。「企業がアプリケーション開発に適性のある人材をトレーニングし、適切に監督できれば、社内人材を有効活用できる」とイェプセン氏は語る。
ローコード/ノーコード開発ツールは、開発者人材の不足を解決する“万能薬”ではないが、そのための解決策の一つであることは間違いない。背景には自動化の推進がある。調査会社GlobalDataでアナリストを務めるミサ・シン氏によれば、企業は現在、開発者を採用するコストの高騰、人材不足、消費者の期待の変化という課題に直面している。そうした状況の中で、企業はローコード/ノーコード開発ツールを「自動化を上手に実装し、組み込むためのツール」だと認識しているという。既成テンプレートやAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)を利用したサービス、ワークフロー自動化機能を備えたローコード/ノーコード開発ツールを使うことで、企業は開発者不足に対処し、ローコード/ノーコード開発ツールの導入のコストを相殺できる可能性もある。
ただしローコード/ノーコード開発ツールには幾つかの注意点がある。複雑にする必要がないものを過度に複雑にしてはならない。企業にとって開発スピードは重要であり、スピードは市民開発のメリットだ。だが拡張性や革新性は必要であるとは限らない。より少ないコストでより良いものを作ることが最終的な目標だ。革新性が利益をもたらすかどうかは、その革新的なものが自社ビジネスのニーズに応えるものなのかどうか、コストの面で達成できるかどうかに左右される。
「IT部門が推進、サポートできれば、市民開発者はビジネス全体に拡大させることが可能だ」とカミンズ氏は言う。ローコード/ノーコード開発ツールは、ビジネス上の課題を真に理解している従業員に対して、既存の手法にとらわれることなくアプリケーションを開発できる機会を提供する。必ずしも革新的なものを開発する必要はないが、目標に向かうための適度なスピードは重要だ。「ほとんどのビジネスチームは、革新的なものを望んでいるわけでも、必要としているわけでもない。物事がうまく、迅速かつ効率的に機能することを望んでいるだけだ」と同氏は言い添える。
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