マスク氏の過激ツイートより“もうけ”になるソーシャルメディアでの行動とは経営幹部のソーシャルメディア活用【前編】

マスク氏の過激なツイートがプラスに働くことはなかったが、経営幹部はソーシャルメディアをうまく活用することで実益につなげることができる。どのようなメリットがあり、どう行動すればいいのか。

2024年03月02日 08時30分 公開
[Ben LutkevichTechTarget]

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 電気自動車(EV)メーカーTeslaのCEOで実業家のイーロン・マスク氏が、短文投稿サイトの「X」(旧Twitter)への投稿を通じて社会を騒がせた。2023年11月16日に投稿された反ユダヤ主義的なツイートに、賛同する返信をしたためだ。

 さらに同日、米国メディアを監視するNPO(非営利団体)Media Matters for Americaは、Xで幾つかの企業の広告が、親ナチス主義的なツイートに隣り合って表示されていたことを指摘した。AppleやIBM、Oracle、メディア企業のBravo Media、通信事業者Comcast Cable Communications Management(Xfinityの名称で事業展開)などの広告だ。これらの動きを受けて、Xへの広告掲載を取りやめる企業が相次いだ。

 こうしてマスク氏の行動が生んだ影響は、経営幹部にとっての教訓になる。同氏の振る舞いはXの評判や自身の名声を損なうことになったからだ。とはいえソーシャルメディアを適切に使えば、経営に良い影響をもたらすことは可能だ。本稿は、経営幹部がソーシャルメディアを活用することで得られる可能性のあるメリットと、注意すべき行動を紹介する。

ソーシャルメディアで得られる利点と振る舞い方

 ソーシャルメディアを上手に使いこなせば、経営幹部の個人アカウントが自社の営業や経営幹部自身の宣伝をするためのツールになる。企業がソーシャルメディアで発信することで得られるメリットには以下がある。

  • 消費者が企業へ親しみを持つ
    • ソーシャルメディアを通じて消費者と経営幹部が直接コミュニケーションを図る中で、自社に対する親近感や信頼感を向上させられる可能性がある。
  • 新規顧客を開拓できる
    • ソーシャルメディアによって既存顧客との関係を強化できるだけでなく、新たな顧客の獲得にもつながる。経営幹部の人となりを明らかにすることで、自社に興味を持った人材の採用に発展させたり、自社の認知度を高めたりできる。
  • 企業の透明性が高まる
    • 普段考えていることや業界のニュースを発信することに加え、非公式の情報を少しだけつぶやくことでオープンな企業文化をアピールできる。
  • 消費者が求めているものを把握できる
    • 消費者が自社に対して何を求めているのかといった情報を、ソーシャルメディアを通じてリアルタイムに得ることができる。

ソーシャルメディアではどのように振る舞うのが正解か?

 経営幹部がソーシャルメディアの強みを最大限に活用して効果を得るためには、次の点に留意したい。

  • 信頼性が高い内容を発信する
    • 消費者からの信頼を得られるような内容を投稿することで、消費者が自社や従業員に対して親しみを持てるようになる。内容は、人生の節目のイベントや家族との時間、個人的な関心事などで構わない。親しみを感じてもらえるような内容を発信することで消費者とのつながりを強化でき、メディアからの注目度が高まる可能性がある。辞書や参考書の出版社Merriam-Websterは2023年を代表する言葉の一つとして「Authentic」(真正の、信頼すべきという意味)を選んだ。これは、人々が誠実さに価値を見いだしていることを表しているといえる。
  • 行動に一貫性を持つ
    • 経営幹部自身の投稿や、他のアカウントが発信した投稿への対処に一貫性を持たせる。定期的に投稿して存在感を得たい場合は、予約投稿機能を使うことを勧める。ソーシャルメディアの予約投稿やアカウントの一括管理、投稿のパフォーマンスの監視ができるソフトウェアもある。ソフトウェアベンダーHootsuiteの同名サービスやSprout Socialの同名サービス、Sprinklrの同名サービスなどだ。価値観に合ったコンテンツへの「いいね」といったアクションやコメント、リポストを継続して実施できるようにすることも大切だ
  • 議論をけん引する
    • 自社が属する業界や関連するテーマ、社会問題といった内容について発信し、その分野の議論をけん引する第一人者「ソートリーダー」になるといった使い方もある。「このアカウントをフォローしておけば特定のテーマや業界について学ぶことができる」という役割を獲得できれば、消費者との関係を強化できる可能性がある。ひいては売り上げの向上や見込み客の増加につなげることができる。
  • 社会課題の解決に取り組むリーダーになる
    • ソーシャルメディアへの投稿を通じて、サステナビリティ(持続可能性)に貢献すること、社会貢献に積極的な姿勢を示すことができる経営幹部であることを伝えられるようにする。従業員との心理的なつながりを示したり、働きやすい職場環境の確保に取り組んだりしているといった内容の発信をするとよい。
  • 危機管理下のコミュニケーションを重視する
    • 災害時や自社に影響を及ぼす問題が起きた場合に、その状況に無関心であると思われるような印象を与えるのは悪手だ。まずはその状況に意思表明し、自社としての行動指針を提示するだけでなく、解決に向けた最新情報を定期的に投稿することが重要だ。
  • 消費者が注目しやすい内容を投稿する
    • 消費者が注目しフォローしたくなる内容を投稿する。投稿の1行目で注意を引き付けられるような内容が望ましい。画像や動画を活用することも有効だ。消費者の投稿を確認したり消費者と交流したりする中で、消費者のニーズや市場の状況について実態に即した洞察を得られる。他のソートリーダーと共同で発信するのもよい。その際に消費者に対して寛大な姿勢で接することや返答の素早さを示すことも重要なポイントだ。
  • 企業アカウントと差別化を図るために個人的な見解を発信する
    • リーダーシップに対する考えや新技術といったテーマに個人的な見解を示すことで、広報代理店が運用している企業アカウント然とした雰囲気にならないようにすることも一つの手だ。あからさまな集客活動はせず、消費者とのコミュニケーションや関係の構築を主目的にする。経営幹部の個人アカウントは自社のブランドイメージに影響することを踏まえつつ、親しみが感じられる内容を発信していくのがよい。
  • 時宜にかなった内容を投稿する
    • 最新ニュースや世界の出来事といったタイムリーな話題にも反応しておきたい。そのような投稿を通じて消費者との間で議論が始まり、自身の考えをその場で示すことができる。結果として、消費者との関係を維持できるだけでなく、ソーシャルメディアにおける存在感を維持できる

 後編は、ソーシャルメディアを使いこなす経営幹部の事例を紹介する。

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