クラウドサービスのコスト管理の手法としてFinOpsがある。FinOpsは、クラウドサービスのコスト増大に悩む企業にとっての解決策となり得るのか。
増大しがちなクラウドサービスの利用料金の最適化を図る手法として近年注目を集めつつあるのが、「Finance」(財務)と「DevOps」(開発と運用の融合)を組み合わせた「FinOps」だ。
FinOpsの普及に取り組む非営利団体FinOps Foundationは、企業が自社のニーズに合った適切なツールを使用できるように、FinOpsのフレームワークを公開している。そのフレームワークでは、クラウドサービスのコスト把握と最適化だけでなく、「ワークロード」(処理するタスクや作業)管理の自動化も主要テーマとなっている。
そうしたフレームワークや考え方はある一方で、ほとんどの企業がFinOpsを簡単には実践できない。進める上で何が足りていないのか。
ほとんどの企業において、自動化による運用の成熟度は、FinOpsを実現するための水準から程遠い。「FinOpsにおいて人工知能(AI)技術と自動化が果たす役割は、必要なレベルに達していない」と、PaaS(Platform as a Service)ベンダーPlatform.shのデータ&FinOps部門のシニアディレクターであるジョン・グラブ氏は指摘する。
グラブ氏は、「FinOpsで扱うデータは信じられないほど多い。自動化が不可欠だ」と述べる。加えてクラウドのアーキテクチャとデータモデリング(データの流れを図式化するプロセス)、クエリ、財務関係の深い知識が必要になるという。同氏は、財務部門とIT部門の関係改善を企業全体の目標とすべきだと考えている。この場合も、成熟した自動化技術の不足が懸念される。同氏は、「近い将来、大規模言語モデル(LLM)や他の技術で、より実用的なレベルにまでデータ認知が支援され、データの質と分析レポートが向上する」と期待する。
クラウドサービスベンダーLemongrass Consultingの共同創設者兼最高技術責任者(CTO)のイーモン・オニール氏は「自動化は、予算管理などさまざまなサービスにおいて活用できる」と語る。例えばコストの見積もりを自動化することで、予算変更リクエストの作成を簡素化し、承認されたら即時で予算を変更できる。
「自動化がなければ、サービスの革新は難しい。自動化によって、オンプレミスのサービスから、クラウド型のサービスへの切り替えが容易になり、コスト削減と品質向上を実現できる」(オニール氏)
クラウドサービスのコストを監視・報告するツールは市場に複数あるが、FinOpsを実現するには自動化機能が弱い。コストの監視、報告、配分はFinOpsの中核機能だが、現状は時間のかかるトレーニングや人手による入力作業が必要だ。
クラウドサービスに投資しながら、コストとその配分の効率性をほとんど監視せず、後で記録を追うだけの企業が少なくないことを考えると、この問題はより深刻といえる。
経営コンサルティング企業McKinsey&Companyが2023年1月に発表した調査レポート「The FinOps way: How to avoid the pitfalls to realizing cloud’s value」によれば、少なくない企業がコストを「見ているだけ」だ。
「調査対象となった企業の半数以上が、年間のクラウドコストが1億ドルに達するまで、コストの詳細の可視化、ガバナンス、予測、最適化など、成熟したクラウド財務管理の仕組み作りを放置している」と同レポートには記されている。
次回は、FinOpsを成功に導くためのノウハウを探る。
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