「クラウド料金」をガチ削減するならFinOpsの“まね事”では無意味な訳FinOps成功の鍵【第3回】

クラウドサービスのコスト管理の手法としてFinOpsがある。FinOpsは、クラウドサービスのコスト増大に悩む企業にとっての解決策となり得るのか。

2024年03月07日 05時00分 公開
[Marc Ambasna-JonesTechTarget]

 増大しがちなクラウドサービスの利用料金の最適化を図る手法として近年注目を集めつつあるのが、「Finance」(財務)と「DevOps」(開発と運用の融合)を組み合わせた「FinOps」だ。

 FinOpsの普及に取り組む非営利団体FinOps Foundationは、企業が自社のニーズに合った適切なツールを使用できるように、FinOpsのフレームワークを公開している。そのフレームワークでは、クラウドサービスのコスト把握と最適化だけでなく、「ワークロード」(処理するタスクや作業)管理の自動化も主要テーマとなっている。

 そうしたフレームワークや考え方はある一方で、ほとんどの企業がFinOpsを簡単には実践できない。進める上で何が足りていないのか。

ほとんどの企業ができていない「クラウドコスト削減」の方法

 

 ほとんどの企業において、自動化による運用の成熟度は、FinOpsを実現するための水準から程遠い。「FinOpsにおいて人工知能(AI)技術と自動化が果たす役割は、必要なレベルに達していない」と、PaaS(Platform as a Service)ベンダーPlatform.shのデータ&FinOps部門のシニアディレクターであるジョン・グラブ氏は指摘する。

 グラブ氏は、「FinOpsで扱うデータは信じられないほど多い。自動化が不可欠だ」と述べる。加えてクラウドのアーキテクチャとデータモデリング(データの流れを図式化するプロセス)、クエリ、財務関係の深い知識が必要になるという。同氏は、財務部門とIT部門の関係改善を企業全体の目標とすべきだと考えている。この場合も、成熟した自動化技術の不足が懸念される。同氏は、「近い将来、大規模言語モデル(LLM)や他の技術で、より実用的なレベルにまでデータ認知が支援され、データの質と分析レポートが向上する」と期待する。

 クラウドサービスベンダーLemongrass Consultingの共同創設者兼最高技術責任者(CTO)のイーモン・オニール氏は「自動化は、予算管理などさまざまなサービスにおいて活用できる」と語る。例えばコストの見積もりを自動化することで、予算変更リクエストの作成を簡素化し、承認されたら即時で予算を変更できる。

 「自動化がなければ、サービスの革新は難しい。自動化によって、オンプレミスのサービスから、クラウド型のサービスへの切り替えが容易になり、コスト削減と品質向上を実現できる」(オニール氏)

 クラウドサービスのコストを監視・報告するツールは市場に複数あるが、FinOpsを実現するには自動化機能が弱い。コストの監視、報告、配分はFinOpsの中核機能だが、現状は時間のかかるトレーニングや人手による入力作業が必要だ。

 クラウドサービスに投資しながら、コストとその配分の効率性をほとんど監視せず、後で記録を追うだけの企業が少なくないことを考えると、この問題はより深刻といえる。

 経営コンサルティング企業McKinsey&Companyが2023年1月に発表した調査レポート「The FinOps way: How to avoid the pitfalls to realizing cloud’s value」によれば、少なくない企業がコストを「見ているだけ」だ。

 「調査対象となった企業の半数以上が、年間のクラウドコストが1億ドルに達するまで、コストの詳細の可視化、ガバナンス、予測、最適化など、成熟したクラウド財務管理の仕組み作りを放置している」と同レポートには記されている。


 次回は、FinOpsを成功に導くためのノウハウを探る。

Computer Weekly発 世界に学ぶIT導入・活用術

米国TechTargetが運営する英国Computer Weeklyの豊富な記事の中から、海外企業のIT製品導入事例や業種別のIT活用トレンドを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

隴�スー騾ケツ€郢晏ク厥。郢ァ�、郢晏現�ス郢晢スシ郢昜サ」�ス

技術文書・技術解説 ドキュサイン・ジャパン株式会社

導入が進む一方で不安も、電子署名は「契約の証拠」になる?

契約業務の効率化やコストの削減といった効果が期待できることから、多くの企業で「電子署名」の導入が進んでいる。一方で、訴訟問題へと発展した際に証拠として使えるのかといった疑問を抱き、導入を踏みとどまるケースもあるようだ。

プレミアムコンテンツ アイティメディア株式会社

VMware「永久ライセンス」を継続する“非公認”の方法

半導体ベンダーBroadcomは仮想化ベンダーVMwareを買収してから、VMware製品の永久ライセンスを廃止した。その永久ライセンスを継続する非公認の方法とは。

製品資料 日本ヒューレット・パッカード合同会社

無計画なハイブリッドクラウドが招く弊害、次世代のITインフラでどう解消する?

クラウドファーストの流れが加速する中、無計画に構築されたハイブリッドクラウドの弊害が多くの企業を悩ませている。ITオペレーションの最適化を図るためには、次世代のハイブリッドクラウドへのモダン化を進めることが有効だ。

市場調査・トレンド 日本ヒューレット・パッカード合同会社

ハイブリッドクラウド環境におけるワークロードの配置を最適化する方法とは?

ワークロードを最適な環境に配置できる手法として注目され、多くの企業が採用しているハイブリッドクラウド。しかし、パフォーマンス、法令順守、コストなどが課題となり、ハイブリッドクラウド環境の最適化を難しくしている。

市場調査・トレンド 株式会社QTnet

業種別の利用状況から考察、日本企業に適したクラウドサービスの要件とは?

システム基盤をオンプレミスで運用するか、データセンターやクラウドで運用するかは、業種によって大きく異なる。調査結果を基に、活用の実態を探るとともに、最適なクラウドサービスを考察する。

郢晏生ホヲ郢敖€郢晢スシ郢ァ�ウ郢晢スウ郢晢ソスホヲ郢晢ソスPR

From Informa TechTarget

お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。

ITmedia マーケティング新着記事

news026.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...

news130.jpg

Cookieを超える「マルチリターゲティング」 広告効果に及ぼす影響は?
Cookieレスの課題解決の鍵となる「マルチリターゲティング」を題材に、AI技術によるROI向...

news040.png

「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。