「クラウドはエコ」と語るベンダーと「それはうそ」と言う論客、それぞれの根拠クラウドサービスによる本当の影響【後編】

「クラウドサービスを利用する方がエコだ」という点はおおむね事実だとしても、ベンダーの主張をうのみにしてもいいのだろうか。専門家の見解は。

2024年03月18日 08時00分 公開
[Mary K. PrattTechTarget]

 クラウドコンピューティングが環境に与える負荷は大きいのか、小さいのか。ユーザー企業だけでなく投資家や規制当局もこの問題を重視するようになり、クラウドサービス事業者に掛かる責任は重くなっている。

 デジタルサービスへの依存度が高まる中、クラウドコンピューティングの環境負荷には早急に対処を考える必要がある。しかし「クラウドサービスか、オンプレミスインフラか」という議論に関して、「企業はオンプレミスインフラを選び続けるべきだ」と主張する業界関係者はほとんどいない。

専門家が認めるクラウドサービスの環境効果と、反対派の意見

 調査会社Gartnerのバイスプレジデントで上席アナリストのエド・アンダーソン氏はこう述べる。「クラウドはオンプレミスよりも効率的に演算処理とデータの出し入れをするが、全体としてより多くの処理を生み出すことになる」

 小規模で分散型のデータセンターやオンプレミスインフラは、環境への影響が大きくなる傾向がある。調査会社IDCが2021年3月に公開した資料によると、オンプレミスインフラからクラウドサービスに移行することで、計算リソースを集約できて効率が高まり、2021年から2024年にかけて10億トン以上の二酸化炭素排出を防止できる可能性がある。

 例えるなら、アパートやマンションなどの共同住宅に住む人は、大きな家に住む人と比べてサービスを共有でき、エネルギーや資源をより効率的に利用できるのと同じことだ。共有データセンターは、大抵のオンプレミスデータセンターには実現し得ない方法で最適化ができる。

 「ほとんどの場合、クラウドサービスで稼働するシステムの方が環境に優しい」。ITサービス管理会社NTTデータでクラウドソリューションアーキテクチャ担当シニアディレクターのマット・ビュヒナー氏はそう話す。

 クラウドサービス事業者は、そのビジネスモデルと規模の大きさから、最適化した運用を構築するための専門知識とインセンティブを持っている、とビュヒナー氏は説明する。例えばクラウドサービス事業者は「使っていないときは電源をオフにするコンピューティングリソース」を作ったり、可能な限り効率的に稼働するように設備を設計したりすることで、全体的なリソースを節約できる。

 さらに言えば、大抵のクラウドサービス事業者は、環境への影響を減らすための措置を講じることを約束している。例えばAmazon Web Services(AWS)は、2030年までに「ウオーターポジティブ」(使用量よりも多くの水を地域社会に還元すること)になる計画を2022年11月に発表した。2021年11月には、2025年までに事業全体で再生可能エネルギー100%を達成する見込みだという発表もあった。そして2040年までにネットゼロカーボンを達成することを公約している。

 Googleは既にカーボンニュートラルな事業運営をしており、より大きな持続可能性計画の一環として、2030年までに全てのデータセンターを24時間365日カーボンフリーのエネルギーで稼働させることを目指している。Microsoft、IBM、Oracleも同様に、サステナビリティ(持続可能性)目標を掲げている。

 Gartnerによると、クラウドサービス事業者が顧客獲得競争を繰り広げる中で、こうしたサステナビリティへの取り組みが差別化のポイントになる可能性がある。同社は2022年1月発表の資料で「ハイパースケーラー(大規模データセンターを運営する事業者)の二酸化炭素排出量は、クラウドインフラ購入を決める要素のトップ3に入る可能性がある」と言及している。

 一方で、クラウドコンピューティングが環境に与える影響をサービス利用者が大きく気に掛けるようになるとは考えにくい、という“懐疑派”も存在する。クラウドサービス事業者だけでなく、各業界の企業がサステナビリティに関する主張を実際に満たしているかどうかに関する監視の目も強くなっている。

 非営利団体「NewClimate」が2022年に公開した調査資料「Corporate Climate Responsibility」は、さまざまな産業分野や地域にまたがって事業を展開する大手企業が表明する「主要な気候変動に関する公約」の透明性と完全性を評価している。本資料は「ほとんどの場合は額面通りに受け取ることができない」指摘しており、アンダーソン氏は「Google、Amazon、Appleはサステナビリティの進捗(しんちょく)状況を過大評価していた」とみる。同氏は「グリーンウォッシュ」(環境対策活動を過大にアピールすること)が起こっている可能性を疑いつつも、「意図的なものではない可能性もある」と話す。経営者や最高技術責任者(CTO)は、こうした「グリーンな主張」をより綿密に評価して、持続可能な資材調達と適切なベンダー選びをする必要がある。

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