2006年に提供開始した「Amazon Simple Storage Service」(Amazon S3)は、さまざまな進化を遂げた。老舗ストレージベンダーが競合してきた市場に、Amazon S3は何をもたらしたのか。
クラウドベンダーAmazon Web Services(AWS)のオブジェクトストレージサービス「Amazon Simple Storage Service」(Amazon S3)は、2006年の提供開始以来、さまざまな進化を遂げてきた。Amazon S3があったことで、ストレージ市場は大きく変わったという見方がある。Amazon S3は老舗ベンダーが競合するストレージ市場でどのような存在になり、これまでに何をもたらしたのか。
「NetAppは30年間にわたって企業向けストレージの分野で取り組みを続けてきた。AWSはそのNetAppに追い付くことを目指している」。米TechTargetの調査部門Enterprise Strategy Group(ESG)のアナリストであるサイモン・ロビンソン氏はそう述べる。
AWSが老舗のストレージベンダーに追い付くためにはまだ課題がある。ストレージベンダーのNetAppがAWSで提供するファイルストレージサービス「Amazon FSx for NetApp OnTap」は、スループット(データ転送速度)を改善し、2024年3月時点で読み取り速度を36GBpsから72GBpsに向上させた。それに対してファイルストレージサービスの「Amazon Elastic File Service」(Amazon EFS)の最大読み取り速度は20GiBps(ギビバイト:2の30乗で表す単位で1GiBは約1.074GB)だ。
ITコンサルティング会社Silverton Consultingの創設者兼プレジデントのレイ・ルチェシ氏によると、クラウドストレージの分野で覇権を狙うストレージベンダーはNetAppだけではない。「Dell Technologies、日立ヴァンタラ、IBMもクラウドストレージを次世代の収益源と見ており、立ち止まることはない」とルチェシ氏は言う。
AWS Pi Day 2024に合わせてAWSが発表した新機能は、ハイパースケーラー(大規模データセンターを運営する事業者)がさまざまな企業の生成AI戦略に沿えるように開発されている。
「顧客はストレージに柔軟性を求めている。企業は特定のストレージタイプへの適応に関わる余分な努力を顧客から取り除くために、必要なAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)を提供しようとしている」とAWSのバイスプレジデントであるアンディ・ウォーフィールド氏は語る。
現在はAmazon S3および関連するAPIの採用が進んだことにより、アプリケーションや企業利用においてオブジェクトストレージの導入が加速し、それがAWSの成長を支える土台となっている。
「オブジェクト」を最小単位とするオブジェクトストレージは保存期間やコピー回数などのメタデータを単独で保存できる。インターネット通信に利用するプロトコル「HTTPS」(Hypertext Transfer Protocol Secure)で接続できる点もオブジェクトストレージのメリットだ。
一方で、他のベンダーは、特定の用途に適したオブジェクトストレージの代替品を提案している。ただしウォーフィールド氏は「クラウドサービスにおけるストレージの基盤としてのオブジェクトストレージは今後も盤石だ」と分析する。
「Amazon S3がストレージ業界の様相を根本から変えたと言っても過言ではない。ストレージアーキテクチャだけでなく、アプリケーションの風景も変化させた」とロビンソン氏は強調する。
ニッチ市場に属していたデータセンターのストレージを、よりアクセスしやすく、費用効果の高いクラウドストレージという形に変革したのがAmazon S3だと、ルチェシ氏は指摘する。
「オブジェクトストレージ技術が出た当初は『何に使うのか』という問題があった。Amazon S3は今やオブジェクトストレージが探求してきたアプリケーションそのものとなった」とルチェシ氏は述べる。
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