企業の間で広く普及してきたDevOpsだが、近年のシステムの変化に伴い、新しいアプローチに代替されるとの見方もある。企業はどのように考えているのか。
DevOps(開発と運用の融合)は終わりを迎えつつある――このような意見が一部で出ているようだ。2000年代後半に登場したDevOpsは、開発チームと運用チームが協力してソフトウェアのデプロイ(配備)を迅速化し、生産性を向上させる手法として広く浸透してきた。
しかし、DevOpsが成功するかどうかは、企業の規模や開発環境、導入計画など、さまざまな要因に依存する。近年システムが複雑化する中で、企業は開発者の負担軽減やさらなるデプロイの迅速化を目指し、新しいアプローチに目を向けている。
DevOpsは終わりつつあるのか。端的に言えば「ノー」だ。
プラットフォームエンジニアリングツールベンダーHumanitecでカスタマーサクセス担当ディレクターを務めるマロリー・ヘイグ氏は、「DevOpsは誤解されたり、間違って使われたりすることが多い」と指摘する。例えば、単にDevOpsエンジニアを採用するだけで、DevOpsの基本的な原則や文化を取り入れていない組織もあり、これが失敗の原因になっているという。
「自分で作ったものは、どんな手間をかけても自分で運用する」(You build it, you run it at all cost)というDevOpsの理念は、もはや過去のものになりつつある。しかし、DevOpsがなくなったわけではない。DevOpsは次の段階へと進んでおり、ITチームへの支援や協力体制を重視するようになっているとヘイグ氏は考えている。
企業はビジネスKPI(重要業績評価指標)の重圧に応えるため、よりアジャイル(俊敏)に、より早くソースコードを提供する必要に迫られている。しかし従来のDevOpsでは、その成長スピードに追い付けない企業もある。急いでソースコードをリリース(公開)した結果、製品のユーザーエクスペリエンス(UX)が低下する、といったことも発生している。
このような課題は、開発プロセスのより早い段階でテストやセキュリティ対策を実施し、DevOpsの「シフトレフト」を進めることで解決できる。だが中には、DevOpsをより成熟させることで課題を解決したいと考える企業もある。そうした企業に注目されているのが「プラットフォームエンジニアリング」だ。
プラットフォームエンジニアリングとは、再利用可能なセルフサービス型のツールやワークフローをまとめ、開発者がいつでも利用できるように整備するといったアプローチだ。ソフトウェアの迅速なデリバリーを実現し、開発者エクスペリエンスを向上させることが目的だ。
企業のシステムは複雑化しており、「開発環境を構築する」「関係者を探してやりとりする」といった“ささいな問題”に開発者の時間が取られている。プラットフォームエンジニアリングは、そうした問題を自動化の仕組みで取り除き、開発者の時間を節約する。
プラットフォームエンジニアは、開発者がソースコードを迅速かつ効率的に本番環境にデプロイ(配備)できるように、標準化されたツールやフレームワークの作成と保守を担当する。そうして作成されたツールやフレームワークは運用における無駄な手間や作業負担を減らすように設計されているため、開発者は最小限の労力で作業を進めることができ、細かい問題に悩まされずに本来の業務に集中できる。
プラットフォームエンジニアが主に取り組むのは以下の項目だ。
多くの企業が、サービスのリリース速度向上と、開発者の負担軽減を両立するための方法を模索している。企業は、DevOpsが今後どう進化していくのか、特にプラットフォームエンジニアリングを実践する準備ができているかどうかに注目すべきだ。
次回は、プラットフォームエンジニアリングとDevOpsの関係について詳しく解説する。
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