HDDおよびSSD事業の分社化を計画しているWestern Digital。「HDDの未来」を危ぶむ声も聞こえてくる中で、あえてHDD事業に専念するWestern Digitalはどのような将来を見据えているのか。
ストレージベンダーWestern Digitalは、HDDとSSDの事業を2024年内に分社化し、SSDの事業がスピンアウトする計画を公表している。この事業再編で浮上する疑問の一つは、SSDの活用用途が広がる中で「近い将来に不要になる」という見方まで浮上しているHDDの分野に、Western Digitalはどのような可能性を見出しているのかという点だ。
調査会社IDCのアナリスト、エド・バーンズ氏は正確な数字ではないと前置きしつつ、「HDDには依然として85%以上のデータが保存されており、この数字がすぐに変わることはない」と語る。将来的にはHDDに保存されるデータの比率が低下することが予測されるが、その変化は徐々に起きると同氏はみる。
それを前提にしてWestern Digitalの分社化を考えると、同社の将来に対して疑問が沸いてくる。「HDDだけの会社はHDDが使われなくなるのと同時に消滅する」とみるのが自然だからだ。だがそれは極端な見方とも言える。「HDDが使われなくなるのはずっと先の話だ」と調査会社TRENDFOCUSのアナリスト、ジョン・チェン氏は語る。
とはいえ「HDDが消滅するのはずっと先のこと」という前提は、HDDベンダーがHDDの新技術に注力し続けることを見据えての話。HDDベンダーが開発の手を緩めれば、HDDが使われなくなる未来はより早くやってきて不思議ではないということだ。逆に言えば、HDDが進化を続ければHDDが使われ続ける可能性はあるとも言える。
「HAMR(熱アシスト磁気記録方式)のような大容量化の技術を普及させるために、HDDベンダーは今後5〜6年で相当の力を注ぐ必要がある」とチェン氏は強調する。
HDDの新技術を飛躍させるために、HDDベンダーは投資と技術力を結集させなければならない。Western Digitalが分社化をする目的の一つはそこにある。SSDとNAND型フラッシュメモリの事業を分社化してその負担を切り離せれば、Western Digitalは選択と集中によって従来よりもHDD分野の強化に取り組みやすくなると考えられるからだ。
次回は、Western Digitalの分社化が業界の再編にどのような影響をもたらす可能性があるのかを考える。
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