「ChatGPT」をきっかけとしたAIブームは、突然始まったわけではない。10年間で起きた主要な出来事を基に、AIの歴史をおさらいしよう。
2024年、人工知能(AI)チャットbot「ChatGPT」の登場により、AI技術に対する関心が急激に高まった。しかし、こうしたブームは突如として始まったわけではない。21世紀に入り、AI(人工知能)技術は飛躍的な進化を遂げ、さまざまな分野で実用化が進んできた。「AIブーム」到来までの約10年間に起きた主要な出来事を、時系列形式で振り返る。
AIベンダーDeepMind Technologiesは、強化学習と深層学習を組み合わせた「深層強化学習」(DQN:Deep Q Network)を発表した。これは、コンピュータがゲームをプレイして報酬をもらうことを繰り返すことで、最適な回答を見つける学習手法だ。コンピュータが人間のように経験から学習し、最適な戦略を見つける能力を示した。
Googleの研究者トーマス・ミコロフ氏とそのチームは、「word2vec」という技術を開発した。これにより、コンピュータは単語間の意味関係を自動で識別できるようになった。例えば、「犬」と「猫」という単語がどれくらい似ているかや、「大きい」「小さい」といった反対の意味を持つ単語の関係について、学習できるようになった。
コンピュータ科学者イアン・グッドフェロー氏とその同僚は、敵対的生成ネットワーク(GAN :Generative Adversarial Network)を発表した。GANでは、2つのネットワークが互いに競い合うことで、リアルな画像を生成できるようになる。AIモデルによる画像生成や、捏造(ねつぞう)動画「ディープフェイク」の生成に使われる。
Googleは、大規模機械学習プロジェクト「Sibyl」を発表した。Sibylは、ユーザーに予測的なレコメンデーションを実施する際に使われた。例えば、Googleがユーザーの過去の行動や興味を基に、今後見そうな映画や商品を予測する仕組みだ。
科学者ディーデリク・キンフマ氏とコンピュータ科学者マックス・ウェリング氏は「変分オートエンコーダ」(VAE:Variational AutoEncoder)を提唱した。VAEは、画像、動画、テキストの生成に使われる生成モデルだ。与えられたデータの特徴を学び、それを基に新しいデータを生成できる。
Meta(当時Facebook)は「DeepFace」を開発した。これは深層学習を用いた顔認識システムで、ほぼ人間と同じ精度で人間の顔を認識する。セキュリティやユーザー認証などの分野でAI技術の応用が広がる基盤となった。
ライドシェアサービスなどを手掛けるUber Technologies(以下、Uber)は、米ペンシルベニア州ピッツバーグで自動運転車の試験運行プログラムを開始した。選ばれた一部のユーザーが自動運転車に乗り、実験的に走行を体験した。
Googleの研究者らが、論文「Attention is All You Need」で「Transformer」の概念を提唱した。Transformerは、文章中の重要な情報を効率的に見つける機械学習手法「アテンションメカニズム」を使用する深層学習モデルだ。AIモデルでより高精度で予測や応答が可能となり、大規模言語モデル(LLM)の開発にも貢献した。
AIベンダーOpenAIがLLM「GPT」(Generative Pre-trained Transformer)を発表。後続のLLMに道を切り開いた。
Googleとニューヨーク大学ランゴーン医療センターが開発した深層学習アルゴリズムが、検査技師よりも優れた精度で画像から肺がんの兆候を検出した。医療分野におけるAI技術の有用性が確立された。
Microsoftは言語モデル「Turing Natural Language Generation」(T-NLG)を発表した。同モデルは17億個のパラメーター(モデルのトレーニングに使う変数)を備え、膨大な量の情報を処理してテキストを生成できた。
OpenAIは、入力したテキストから画像を生成するAIモデル「Dall-E」を発表した。
DeepMind Technologiesは「AlphaTensor」を発表した。効率的で新しいアルゴリズムを発見するシステムで、単に解を見つけるだけでなく、その解が最も効率的であることを証明できる点が大きな特徴だ。
OpenAIはAIチャットbot「ChatGPT」を発表した。ベースとなるLLMには同社の「GPT 3.5」を使用し、まるで人と話しているような体験を提供した。
OpenAIは、テキストと画像の両方の入力データに対応するマルチモダールLLM「GPT-4」を発表した。
イーロン・マスク氏、スティーブ・ウォズニアック氏、その他の何千人もの署名者が、GPT-4よりも強力なAIシステムの訓練を6カ月間停止するよう呼びかけた。AI技術が急速に進歩する中で、その安全性に対する懸念の高まりが反映された。
NVIDIAは、AIおよびグラフィック向けチップメーカーとして大きな成功を収めた。同社が開発した新しいチップ技術「NVIDIA Blackwell」「NVIDIA ACE」により、「コンピュータの操作は、人間とのやり取りと同じくらい自然になる」と、同社の設立者でCEOを務めるジェンスン・ファン氏は説明した。NVIDIAの時価総額は2024年に3兆ドルを超え、MicrosoftやAppleと肩を並べた。
プリンストン大学の研究者は、米国防高等研究計画局(DARPA)と連携し、現代のAIワークロードを効率よく処理できる、小型かつ省エネルギーのAIチップ開発に成功した。
Microsoftは、AIを活用した天気予報ツール「Aurora」を発表した。世界中の大気汚染を1分以内に予測することができ、環境問題に対するAIの活用の可能性を示した。
ChatGPTの他、Microsoftの「Copilot」(旧Bing Chat)、Googleの「Gemini」(旧Bard)などのAIチャットbotが登場し、競争は激化している。
次回は、AI市場の今後について探る。
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