Googleの親会社Alphabetは決算報告で、クラウド事業やAI関連サービスの需要が好調だった点を強調した。これには、検索広告を主力事業として抱える同社のある意図が反映されているとアナリストは指摘する。
Googleのクラウド部門「Google Cloud」の2024年第4四半期(2024年10~12月)の売上高は、前年同期比で約30%増となり120億ドルに達した。Googleの親会社AlphabetのCEOスンダー・ピチャイ氏は今回の決算発表で、クラウド事業が順調に成長している点を強調した。検索広告事業を主力とする同社が、クラウド事業への注力を強調する背景には、ある意図があるとアナリストは指摘する。
Alphabetによると、Google Cloudの売上高の成長は、中核となるクラウドサービスと、AI(人工知能)技術向けのインフラおよび「生成AI」(テキストや画像などを自動生成するAI技術)関連サービスの需要拡大が主導した。
以前Alphabetは、2024年末までにGoogle Cloudと動画共有サービス「YouTube」を合わせた年間売上高が1000億ドルを超えると予測していたが、実際にはその期待を上回る結果となった。「Google CloudのAI関連サービスは需要が急増している。YouTubeはストリーミング視聴時間とポッドキャスト分野でリーダーの地位を維持している」(ピチャイ氏)
ピチャイ氏はGoogle CloudとYouTubeの両事業は2024年末時点で年間売上1100億ドル規模に達したと説明し、「当社は今後の成長機会に自信を持っており、その進展を加速するために、2025年には約750億ドルの設備投資を計画している」と述べた。
Alphabetは2024年に、米国を含む世界各地11カ所で新たにデータセンターを開設した他、ハードウェアの性能向上を進めた。「Googleのデータセンターは、5年前と比較して電力単位当たり約4倍の計算能力を提供している。この効率性、スケーラビリティ(拡張性)、コストと性能のバランスの良さが、Google Cloudが選ばれている理由だ」(ピチャイ氏)
AIモデルの学習と推論に使用する計算能力は18カ月前の8倍以上に増えているとピチャイ氏は説明し、「これからも需要拡大に対応するため、クラウド事業への投資を続ける」と語る。
Google Cloudの新規顧客による契約数が、2024年には2023年の2倍以上に増加したこともピチャイ氏は明らかにした。「既存の顧客企業との関係も深めており、2024年は10億ドル以上の大型契約を幾つも締結し、2億5000万ドル以上の契約件数は前年比で2倍に増えた」
調査会社Forrester Researchでプリンシパルアナリストを務めるリー・サスター氏は、ピチャイ氏が決算発表でGoogle CloudとYouTubeの業績を強調した点に注目。Alphabetが検索広告事業への依存を低減させようとしている可能性を指摘する。
「もしGoogle Cloudが単独の企業であれば、企業IT市場における立場がより堅固になり、AI関連事業が主導する形で成長した今回の結果に投資家は満足するだろう」とサスター氏は述べる。だが実際には、Google CloudはAlphabet全体のビジネスと相互に影響を及ぼし合う複雑な構造の一部だ。大規模なAI投資を要する検索広告やYouTube事業とも密接に結び付いている。
ピチャイ氏は今回の決算発表で、Google CloudとYouTubeを一つの成功例として示し、年間売上高1100億ドルの達成を強調した。これについてサスター氏は「Alphabetが以前ほど検索広告に依存していないことを投資家に伝えようとしているのではないか」と推察。「企業のIT担当者は、長期的な投資先としてAI関連のクラウドサービスを見極める上で、Google Cloudや競合ベンダーの計画を慎重に評価する必要がある」と指摘する。
(翻訳・編集協力:編集プロダクション雨輝)
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