コストに敏感なCIOを引き付けるオープンソースColumn

低予算で導入でき、小回りが利きそうなオープンソースが注目を集めている。導入のコツと潜在的リスクを見ていこう。

2006年09月15日 07時00分 公開
[Shamus McGillicuddy,TechTarget]

 ハイエンド機能は欲しいけれども、その予算がないと悩む中堅・中小企業のCIOたちが、新興のオープンソースベンダーに目を向けている。そこにはリスクもあるが、専門家によると、よりリーズナブルな価格で最先端の技術を手に入れるチャンスもあるようだ。

 オンライン金融サービスアプリケーションのデベロッパーであるヨドリーでは、セキュリティ上の懸念のため、システム監視ソフトを社内で運用することにした。同社で運用と情報セキュリティを担当するティム・オブライエン上級副社長はその際、シンプルな低価格ソリューションを提供するベンダーを探したと話す。

 オブライエン氏は、エンタープライズクラスのプロプライエタリベンダーには目を向けず、グラウンドワークのシステム監視製品を選んだ。同社の製品は、「Nagios」と呼ばれるオープンソースのシステム監視プラットフォームをベースとするものだった。

 「それまで付き合っていた外部のプロバイダーはHP OpenViewを利用していたため、われわれはそれに慣れ、当社のシステムにもそのエージェントが組み込まれていた」とオブライエン氏は話す。

 「しかし当社の事業規模が拡大したことにより、当社のニーズを満たすためには、OpenViewにさらに多くの経費を注ぎ込まなければならないことが分かった。われわれは、OpenViewを使い続けるか、それともほかのソリューションを採用するかという選択を迫られた。わたしはHP OpenViewを導入した経験が2回あったし、ほかの主要ベンダーの製品にも精通していた」(同氏)

 オブライエン氏にとって、導入コストの差は非常に大きかった。同氏によると、ヨドリーにグラウンドワークの製品をカスタマイズして導入するのに掛かった費用は約15万ドルだった。「これを大手ベンダーの製品で構築していたとしたら、ライセンスだけで30万ドルにもなり、それに加えて、プロフェショナルサービスにさらに30万ドル支払う羽目になっていただろう」と同氏は話す。

 しかし、オブライエン氏がオープンソースソリューションを選んだ理由は、経費節約だけではない。プロプライエタリな製品よりもオープンソースソリューションの方が、短期間で立ち上げることができると考えたからだ。

 「大規模な製品は非常に複雑で、単純なことをやるのも容易ではない。オープンソースとNagiosベースのプラットフォームであれば、簡単なことは本当に簡単にできる。素早く立ち上げて監視を実行できただけでなく、必要に応じて複雑な機能を追加することもできた」と同氏は話す。

 オブライエン氏は、以前にエンタープライズクラスの製品を導入した経験から、初期投資を低く抑える必要があることを学んだ。必ずバックエンドのコストが次々と発生するからだ。

 「ソフトウェアを導入した後でも、コンサルティングサービスやサポートなどに何十万ドルも払った。しかも、彼らがきちんと対応できないこともある。製品のカスタマイズを頼んでも、長い時間がかかるのだ。それに、問題が発生するたびに修正する必要があるが、それも本当に大変だ。どんなソリューションを購入しようとも、必ずそれをカスタマイズする必要が出てくる。だから、最初は低価格のソリューションからスタートして、そこからカスタマイズを進めていくのがいい、というのがわたしの考えだ」(同氏)

新興ベンダーを探す

 コアシステムソフトウェア製品のプロバイダーであるフェニックステクノロジーズのクリフ・ベルCIOは、オープンソースを選択したことで少なくとも10万ドルの節約を実現したと話しており、ほかのCIOにもオープンソースを勧めている。

 ベル氏によると、新興ベンダーを見つけることができれば、さらに大きな節約を期待できるようだ。同氏は、グラウンドワークの製品を利用しているだけでなく、同社の顧問委員会にもボランティアで出席している。新興ベンダーにとっては、成功事例の実績を築くのに貢献してくれる顧客の協力が必要なこともあるのだ。

 「大手ベンダーの製品を選択しないことで、幾つかのハイエンド機能をあきらめなければならないのは分かっているが、それは大した問題ではない」とベル氏は話す。

 「フェラーリに乗らないのと同じだ。その乗り心地がどんなものかは分からない」(同氏)

潜在的リスク

 オープンソース市場を専門とする調査会社、エンティーバグループの最高技術アナリスト、アレックス・フレッチャー氏によると、TCO(総所有コスト)を抑制したい中堅・中小企業にとって、オープンソースベンダーは1つの選択肢である。しかし、オープンソースへの移行にはリスクも伴い、本腰を入れて取り組む必要があるようだ。

 「多くのことを自分たちだけで判断しなければならない。プロプライエタリベンダーが提供しているパッケージ化されたワンストップソリューションのようなものは存在しない。このため、サポート提供者を探す、オープンソースコミュニティーのメンバーになる、オープンソースモデルを活用するなど、積極的な取り組みが必要だ」とフレッチャー氏は話す。

 フレッチャー氏によると、高品質のオープンソースベースの製品は幾つか存在する。「以前はITインフラにフォーカスした製品が人気を集めていたが、オープンソースベースのCRMやERP製品も、多くの中堅企業のニーズに応えるまでに成熟している」(同氏)

 オープンソースベースのシステム管理ソリューションのβテストを行っているファイブランズの創業者、スティーブン・スミスCEOは、オープンソース製品は、特にコストに敏感なCIOにとって魅力的だと話す。「しかし中堅企業に限らず、オープンソースでは調達プロセスの煩わしさが少ないことを考えれば、どんな規模の企業のCIOにも魅力的だ」(スミス氏)

 また、ベル氏によると、オープンソース製品は、市場に出る前にバグが修正されることが多いようだ。

 「プロプライエタリなベンダーの場合、βリリースの段階で早期導入企業がコードのバグを洗い出す。オープンソースモデルでは、開発者がバグを洗い出すため、製品として提供される時点では完成度が高いものになっている」(ベル氏)

 ベル氏によると、多くのCIOは新興オープンソースベンダーを見つけるのに苦労する可能性がある。同氏の場合、勤務先の会社の所在地がオープンソース運動の中心地に近い北カリフォルニアだったことが幸いした。しかし、新興企業を探す手だてはほかにもある、と同氏は付け加える。

 「ベンチャーキャピタルのサイトに行き、彼らが出資している企業のリストをチェックするとか、SourceForge.net(日本の場合はSourceForge.jp)にアクセスする、社内のオタクを探し出すなど、さまざまな方法がある」(同氏)

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オープンソース | CIO | バグ | Web2.0


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