シンガポール政府が「ソブリンクラウド」には満足できない納得の訳電子政府のクラウド活用【第4回】

シンガポールの公共サービスの電子化を支えるのがクラウドサービスだ。クラウドサービス活用における懸念事項になりがちなセキュリティ対策とデータ保護に対して、シンガポール政府はどのように取り組んでいるのか。

2023年06月14日 05時15分 公開
[Aaron TanTechTarget]

 シンガポール政府は、公共サービスのシステムをクラウドサービスで運営する「Government on Commercial Cloud」(GCC)を推進している。この取り組みにおいて欠かせないのが、セキュリティ対策とデータ保護の在り方だ。同国で政府最高デジタル技術責任者(Government Chief Digital Technology Officer)を務めるチャン・チャオ・ホー氏は、「ソブリンクラウド」に対する同国の考えを語った。

ソブリンクラウドに対するシンガポール政府の見解

 ソブリンクラウドは、特定の国のデータ保護に関する法律や規則、セキュリティの要件に従うクラウドサービスだ。チャン氏は2022年11月、シンガポールのデジタル庁(GovTech:Government Technology Agency)が2年に1度開催するカンファレンス「STACK Developer Conference」で、ソブリンクラウドについて見解を示した。

 同氏は見解として2点を挙げた。1つ目は、セキュリティを強固にすることで、クラウドサービスの利点を損なう可能性が出てくることだ。システムを運用する場所や機能を限定することでセキュリティを強固にしやすくなる。ただし、それではクラウドベンダーが提供するエコシステム(クラウドサービス上でさまざまなサービスを提供するベンダーが相互につながり、依存し合うコミュニティー)から分断される。「エコシステムを失った時点でクラウドサービスの利点はなくなってしまう」とチャン氏は語る。

 2つ目は、システムの移行に要する手間だ。チャン氏は「システムをクラウドサービスのエコシステムからソブリンクラウドに移行しようとすると、多額の費用が必要になる」と懸念を示す。

 セキュリティを強化することと、クラウドサービスの価値を維持することのバランスが重要だというのがチャン氏の見方だ。「GovTechはクラウドベンダーと緊密に連携して、一定のセキュリティレベルと、クラウドサービスのエコシステムとのつながりを両立させている」(同氏)

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