シンガポール政府が「マルチクラウドは複雑」と認識しつつもそれをやめない理由電子政府のクラウド活用【第3回】

シンガポール政府はクラウドサービスの利点を引き出すために、開発においてどのような方針を採用しているのか。同国政府が考えるクラウドサービスの利点と注意点とは。

2023年06月07日 05時15分 公開
[Aaron TanTechTarget]

 公共サービスのデジタル化を推進するに当たって、クラウドサービスの利用を重視するシンガポール政府。開発においては何を重視しているのか。シンガポールの政府最高デジタル技術責任者(Government Chief Digital Technology Officer)で、同国のデジタル庁(GovTech:Government Technology Agency)のCEO代理も務めたチャン・チャオ・ホー氏に聞いた。

“簡単ではない”マルチクラウドをあえて採用する理由

 チャン氏によると、政府で働く開発者はモノリシック型(1つのモジュールで構築されたシステム構成)のシステムをカスタマイズする開発に慣れている。そうした開発者からは「クラウドサービスをカスタマイズしたい」という要望が出る。だが同氏は「クラウドサービスを利用するからには、できるだけクラウドサービスの強みを生かした開発にしようと呼び掛けている」と話す。

 クラウドサービスのエコシステム(クラウドサービスを介してさまざまなサービスを提供するベンダーが相互につながり、依存し合うコミュニティー)は、多彩なクラウドサービスを基にして成り立っている。チャン氏は「特定のクラウドサービスに依存するほどアプリケーションの開発はしやすくなる」と強調する。

 一方でベンダーロックインのリスクには注意しなければならない。「クラウドサービスの強みを生かすことと、レジリエンス(回復力)およびアプリケーションの可搬性を高めることのバランスは、言葉ではうまく説明できないほど難しい」(チャン氏)

 チャン氏は、オンプレミスのインフラとクラウドサービスを併用する「ハイブリッドクラウド」や、複数のクラウドサービスを併用する「マルチクラウド」を実装する際の課題についても問題を提起する。

 「『ハイブリッドクラウドは単純ですよ』というセールスマンの言葉を信じてはいけない」とチャン氏は指摘する。同氏によるとハイブリッドクラウドやマルチクラウドは複雑で、使いこなせるようになるまで時間がかかる。ただし同氏は「マルチクラウドを採用することでレジリエンスを向上させることができる」と付け加える。


 第4回は、シンガポール政府がクラウドサービスの利用に当たり、データ保護やセキュリティにおいて重視するポイントを紹介する。

Computer Weekly発 世界に学ぶIT導入・活用術

米国TechTargetが運営する英国Computer Weeklyの豊富な記事の中から、海外企業のIT製品導入事例や業種別のIT活用トレンドを厳選してお届けします。

ITmedia マーケティング新着記事

news135.png

インターネットの利用環境、女性の66%は「スマホのみ」――LINEヤフー調査
LINEヤフーが実施した2023年下期のインターネット利用環境に関する調査結果です。

news108.png

LINEで求職者に合った採用情報を配信 No Companyが「チャットボット for 採用マーケティング」を提供開始
就活生が身近に利用しているLINEを通して手軽に自社の採用情報を受け取れる環境を作れる。

news102.jpg

GoogleがIABのプライバシーサンドボックス批判に猛反論 完全論破へ42ページのレポートを公開
Googleは、米インタラクティブ広告協会から寄せられた批判について「多くの誤解と不正確...