公共サービスのデジタル化を進めるシンガポール政府は、複数のクラウドベンダーとタッグを組み、マルチクラウドを採用している。同国が目指すクラウドサービス利用の在り方を探る。
シンガポール政府は同国の在住者により良い公共サービスを提供するために、デジタル技術の活用を推進している。その取り組みを支えるのは、クラウドサービスだ。同国政府はクラウドサービスを活用するメリットや注意点をどう捉えているのか。政府最高デジタル技術責任者(Government Chief Digital Technology Officer)で、同国のデジタル庁(GovTech:Government Technology Agency)のCEO代理も務めたチャン・チャオ・ホー氏に聞いた。
2021年11月にGovTechが主催したカンファレンス「STACK-X Cloud 2021」で、シンガポールにおけるクラウドサービス活用について講演があった。内容は、シンガポール政府の公共サービスをクラウドサービスで運用する「Government on Commercial Cloud」(GCC)の推進についてだ。システムのスケーラビリティ(拡張性)を追求し、GovTechはクラウドサービスを支持することにした。シンガポール政府は、2023年までにシステムの70%以上をクラウドサービスで運用する計画だという。
チャン氏によると、クラウドサービスへのシステム移行にはリスクが伴う。一方で、複数のクラウドサービスを併用する「マルチクラウド」を採用することで得られるメリットもある。クラウドベンダーを中心としたエコシステム(クラウドサービスを介してさまざまなサービスを提供するベンダーが相互につながり、依存し合うコミュニティー)を利用できることだ。エコシステムの中で最新の技術に出会い、開発を加速させることができるといった恩恵がもたらされる。
「新しいシステムを導入するリスクについて検討する時に考えなければならないのは、現行のシステムで発生するリスクよりも大きいか小さいかではない」とチャン氏は指摘する。同氏はリスクをよく知り、受け入れることが極めて重要だと強調する。クラウドサービスの機能を深く知り、より詳しくなることが、適切なリスク管理と耐障害性の向上につながるのだという。
クラウドサービスで障害が発生した場合、ユーザー組織は復旧に時間がかかり、重大な損失を被る可能性がある。マルチクラウドの構成を組むことで、そのリスクを軽減しやすい。「GovTechがAmazon Web Services(AWS)やMicrosoft、Googleといった複数のクラウドベンダーと連携してマルチクラウドを構築した理由はその点にある」(チャン氏)
第3回は、シンガポール政府がクラウドサービスを活用した開発において重視する点を探る。
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