成熟市場とも言えるERPパッケージ市場。企業の関心は効率的な利用やコスト削減に向かっている。ERPの利用状況、そしてIFRSへの対応方針をTechTargetジャパン会員に聞いた。
TechTargetジャパンでは2010年8月13日から8月24日にかけて、TechTargetジャパン会員を対象に「ERP導入・IFRS適用」に関する読者アンケート調査を実施した。ERPは既に多くの企業に導入されていて、企業の関心はその効率的な利用やコスト削減、そしてERPのリプレースに向かっている。また、ERPの改修が必要になるといわれるIFRS(国際財務報告基準、国際会計基準)の適用が迫り、企業は対応を検討している。調査結果から見えてきたERPの問題点やIFRSへの企業の取り組みを紹介する。
目的:TechTargetジャパン会員のERP導入状況、IFRS適用状況について調査するため
方法:Webによるアンケート
調査対象:TechTargetジャパン会員
調査期間:2010年8月13日〜8月24日
有効回答数:131件
※回答の比率(%)は小数点第2位を四捨五入し、小数点第1位まで表示しているため、比率の合計が100.0%にならない場合があります。
ERPパッケージの導入率は52.7%だった。半数以上の企業が何らかのERPを導入している。ERPは一般的に企業規模が大きくなるほど、導入率が上がるといわれていて、上場している企業や海外展開している企業では業務の効率化や標準化のためにERPを導入することが普通になっている。今回の調査結果によると、上場企業のERP導入率は67.1%。対して、未上場の企業では34.5%だった。
導入していない42.0%の企業では、会計ソフトウェアなどの個別のアプリケーションや、スクラッチで開発したERPを使っていると推測できる。導入済みの企業が利用しているERPでは、SAP ERPやOracle E-Business Suiteなど外資系ベンダーの製品を使っているとの回答が多く、SAP ERPは2けたの利用率だった。ただ、国産系ベンダーのERPも広く使われている。
ERPの新規導入またはリプレース、モジュール追加を検討しているとの回答は35.0%だった。ERPを既に導入している企業が多いことから、64.9%がERP導入やリプレースを現段階では「検討していない」と答えている。
ただ、現在使っているERPに満足しているという回答と、満足していないという回答は拮抗している。「満足している」(とても満足と、ある程度満足の合計)は22.2%、「不満がある」(不満と、どちらかというと不満の合計)は18.3%だった。不満点で最も多いのは「ライセンスコストが高額」で、50.0%を占める。また、2位にも「修正、改修に時間とコストが掛かる」(41.7%)が入り、ユーザー企業がコストについて強い不満を感じていることが分かる。
コストへの不満を受けてか、「ERP選定時の重視ポイント」でもトップは「費用対効果」。7割近くがこう回答した。ERPを提供するITベンダーやITサービス企業、そして企業側でERPを導入・運用するIT部門にとっては、ERPの導入・運用に関するコスト削減施策が強く求められているといえる。ただ「運用のしやすさ」「導入のしやすさ」も2位、3位に入っており、コスト面に加えて企業はさまざまなポイントからERPを評価していることが分かる。
IFRSの適用については35.9%の回答が「適用時期は未定」としていて、取り組みの初期段階にある企業が多い。ただ、適用時期を明確にしている回答も26.1%あり、企業の規模や海外展開、業種などによってばらつきがあるようだ。IFRS適用プロジェクトの進ちょくは3分の1が「事前調査・勉強段階」。既に対応を実行しているという回答は9.0%で、多くの企業は適用タイミングを計りながら慎重に準備を進めている。
ERPのIFRS対応については、29.6%の企業がERPに何らかの改修や導入を行う予定。そのうちで最も多いのは「現システムの一部を改修/機能追加」で18.5%。「全般的に新システムを導入して対応」は4.9%だった。IFRS対応のためのIT投資についても22.2%の企業が「これまでと比較して増大の予想」と回答している。
ただ、いずれの質問に対しても最多は「分からない/未定」という回答。上場企業であればいずれかのタイミングでIFRS対応を検討せざるを得ないと考えられ、それに伴ってERPのIFRS対応についても検討が進むだろう。ERPを改修するのであれば、ERPについての不満点として挙がっているコスト問題も併せて解決を図るのが効率的だ。
本稿では紹介しきれなかったさまざまなアンケート結果と共にアンケート回答者の詳細な属性も紹介されているので、ぜひ参照されたい。
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