新CEOはiPadを進化させることができるか
ジョブズ氏亡き後のApple:アフター・ジョブズを占う
Appleは、同社復活の象徴であるジョブズ氏を失った。これはApple興隆の終わりを意味するのか、それともさらなる躍進の始まりなのか。
米Appleの2011年度第4四半期(2011年7~9月期)決算が、極めて高かった事前の市場予測を下回ったというニュースおよび「iPhone 4S」の発売を受け、米TechTarget傘下のTabletPCReviewがタブレット事業を中心に、スティーブ・ジョブズ氏亡き後のAppleの行方をあらためて占う。Appleは今後も、イノベーションによってライバルをリードし続けることができるのか。
Appleのインパクト
端的に言えば、Appleはタブレットを発明したのではない。タブレットを再発明したのだ。
TabletPCReviewは2004年からタブレットをレビューし、タブレット技術をカバーしてきた。その3年前の2001年にビル・ゲイツ氏が、「タブレットPC」と銘打ったデバイスのプロトタイプを初披露した。これはWindows XP Tablet PC Editionで動作するものだった。このタブレットPCは、モダンなタブレットの草分けとして一般に認められているが、ペン入力やタッチ操作に対応するシステムは、コンピュータが登場したころからある。
しかし、タブレットがメインストリームの注目を集め、幅広い消費者から支持されるようになったのは、2010年1月からだ。スティーブ・ジョブズ氏がiPadを発表したのが転機となった。
iPadは、何年も前から販売されていたWindowsタブレットPCとは全く別物だった。まず、Appleはペン入力を排除してタッチ操作を採用した。また、Windowsのようなデスクトップ/ノートPCベースの環境をiPadに対応させるのではなく、モバイルOSをiPadの大画面用にスケールアップした。さらに、瞬間起動や丸1日駆動するバッテリーといったNetbookやiPhoneの人気の要素をiPadに取り入れた。明るく鮮やかなディスプレーも搭載し、これは現在も市場で最も優れたものの1つだ。500ドルという基本価格も、比較的高価なWindowsタブレットPCやコンバーチブルより安かった。
熱心なiPhoneアプリ開発者の作品がひしめくApp Storeや、巧みなマーケティング、人気の高いApple Storeも相まって、iPadは大ヒットを収めた。AppleはこれまでにiPadを4000万台以上販売し、米GoogleのAndroidなどをOSに採用するメーカーとの競争激化にさらされながらも、タブレット市場で75%超のシェアを握っている。
ジョブズ氏はiPadの設計、開発を陣頭指揮していたため、同氏の不在は将来のリリースに響くと思われやすい。また、新CEOのティム・クック氏は、イノベーションよりもロジスティクス管理で知られているため、今後のAppleはより保守的になると見られがちだ。
しかし、TabletPCReviewの見方は異なる。
TabletPCReviewは、8月にスティーブ・ジョブズ氏がCEOを退任した際にも記事で述べたが、次世代iPadの詳細はほとんど確定しているはずだ。次世代iPadは、より高解像度のディスプレーやクアッドコアプロセッサを搭載し、若干薄い設計になる可能性が高い(注)。これらによって次世代iPadは、Android 3.0/Android 4.0搭載タブレットの次世代機と肩を並べるスペックになると予想される。
注:TabletPCReviewはその記事で、次世代iPadはLTE技術をサポートするだろうとも述べた。だが、iPhone 4Sがサポートしていないことから、TabletPCReviewは現在、LTE対応の4G iPadが登場する可能性は五分五分と見ている。
また、ジョブズ氏が率いたAppleは、ワンマン企業ではなかった。TabletPCReviewは今夏に発表した記事で次のように述べた。
しかし、Appleは大企業だ。iPadやiPhoneをはじめとするAppleの成功を収めた製品ラインアップは、1人の人物が作り上げたものではない。Appleのデザイン責任者のジョナサン・アイブ氏は健在であり、iMac、iPod、iPhone、iPadのルック&フィールは同氏の功績だ。そしてApple製品は、Appleのイノベーションの文化が染み付いた優秀なエンジニアとデザイナーのチームによって生み出されたのである。
8月に発表したこの記事は今も正しい。Appleはジョブズ氏を失ったが、だからといってAppleでなくなるわけではない。
iPad成長の余地
TabletPCReviewは、Appleがティム・クック氏の下で成功を続けると考えているだけではない。TabletPCReviewは、同社にはまだ成長の余地があると見ている。スティーブ・ジョブズ氏は思い入れが強く、自分のビジョンにこだわったと多くの人に言われているが、それがAppleの製品作りにマイナスになった面もあるかもしれない。
ジョブズ氏はポストPC時代の先駆者であり、実際、iPadには従来のPCで一般的な周辺機器や記憶メディア、例えばUSB端末やSDカードのインタフェースやスロットが用意されていない。そのため、iPadにコンテンツをロードするのは手間が掛かることがある。同期に便利なノートPCやデスクトップPCがない場合はなおさらだ。もちろん、Appleは手軽なSDカードアダプターを29ドルで販売しており、iCloudでは同期が簡単にできる。しかし、Appleは、何千万人ものiPadユーザーのうちどれだけの人が「追加アクセサリなしでiPadに簡単に写真を取り込みたい」と思っているかを考えた方がよいだろう。
東芝のThriveや中国のLenovoのThinkPadが示しているように、タブレットではまだUSBやSDの出番がある。さらに、LenovoはThinkPad Tabletで、モバイルタブレットにおけるペン技術の可能性も提示している。Appleがこの技術をすっぱり切り捨てたのとは対照的だ。手書き文字をテキストに変換する機能をAppleが用意しさえすれば、iPadは、メモを取るのに格好のデバイスになるかもしれない。
Appleが次期iPadをスタイラスペンとセットでリリースすることや、次期iPadがUSBポートを搭載することを予想しているわけではない。しかし、いずれにしても、Apple製品はイノベーションを口実にして、ポストPC時代の名の下で、機能が犠牲になることが多いといえる。
Googleは、Androidの開発を精力的に進めており、アップデートのたびに重要な新機能を追加しているため、Appleはついていかなければならない。GoogleはNFC(Near Field Communications)とGoogle Walletを推進し、Androidを消費者の日々の購買行動に定着させようとしている。NFCはほとんどのAndroidスマートフォンの標準機能となっているが、iPhoneには全く搭載されていない。
Appleも、時流に沿って将来のデバイスでNFCに対応すると見てよいだろう。結局のところ、Appleのお家芸は、市場に一番乗りすることではなく、最良の、最もシンプルな、あるいは最も洗練されたものを提供することだ。Appleファンがよく言うように、Apple製品は、「とにかくちゃんと動く(It just works)」というわけだ。それは、ジョブズ氏の下でのAppleが、ユーザーが買ってすぐに使える状態に仕上がるまで、技術をリリースしなかったおかげだ。
少なくとも近い将来は、Appleでは物事が「とにかくちゃんと動いていく」だろう。そしてTabletPCReviewは、Appleのデバイスは、新製品が出るたびに少しずつ進化を続けていくと確信している。
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