【技術解説】VLANの限界を打ち破る「仮想ネットワーク」技術大規模DCの課題を解決するネットワーク最新技術【第4回】

ネットワークの主要技術であるVLAN。仮想化やクラウドの普及に伴い、VLANでは解決できない課題が顕在化してきた。本稿は、こうした課題を解決するネットワーク技術を示す。

2012年09月13日 08時00分 公開
[大高智也, 中前 航,ネットワンシステムズ]

 物理的なネットワークインフラを柔軟に活用するための技術である「仮想ネットワーク」。その歴史は古く、さまざまな仮想ネットワーク技術が登場し、普及してきた。その代表格が「VLAN」である。VLANは、今日の大規模な企業ネットワークではほぼ必ず利用されているといっても過言ではない仮想ネットワーク技術となった。

 VLANに加え、「スタッキング」などのネットワーク機器を仮想的に統合する技術で可用性と運用性の向上を図ったり、「コンテクスト」などの1台のネットワーク機器を複数台の機器へと仮想的に論理分割する技術で利用効率を高めるといったことも広く実施されている。

 ただし、こうした既存技術だけでは解決できない課題も顕在化してきた。本稿では、既存の仮想ネットワークが抱える課題を整理しつつ、課題解決に大いに役立つと期待される最新の仮想ネットワーク技術を紹介する。

 データセンターの中心技術の1つであるサーバ仮想化。サーバ仮想化によるライブマイグレーションや負荷状況による自動最適化などが普及したことで、データセンターはビジネス基盤としての可用性や運用性を実現できるようになった。一方のネットワークは、いまだ手作業による設定変更が一般的であり、サーバ仮想化の技術進歩に追い付いていないのが現状だ。

 こうしたネットワーク運用における迅速性の欠如は、場合によってはサーバ仮想化の迅速性や自動化のメリットを阻害することもある。さらに、大規模なマルチテナント環境においても、従来のVLANによる実現手法ではスケーラビリティを十分に確保できないといった課題も顕在化しつつある。

 こうした課題を解決すべく、新たな仮想ネットワーク技術の開発や標準化が進む。以下、注目すべき仮想ネットワーク技術を説明する。

仮想ネットワーク最新技術1:ネットワークとハイパーバイザー間の連携技術

 1つ目は、サーバ仮想化のハイパーバイザーと物理ネットワークの連携技術である。

 ハイパーバイザーには、仮想マシンのネットワーク通信を制御する仮想スイッチ(ソフトウェアスイッチ)が組み込まれている。ハイパーバイザーが市場に登場した当初は、仮想スイッチと物理スイッチはそれぞれ独立して動作することが一般的であり、それぞれの要素が連携したり協調するといった考え方はなかった。

 だが最近は、ハイパーバイザーのネットワーク機能が高度化するとともに、物理ネットワークにもハイパーバイザーとの連携機能の搭載が進み、より仮想環境に最適なネットワークを構築するための下地が整いつつある。

 ここで鍵となる標準技術が、「IEEE 802.1Qbg(EVB:Edge Virtual Bridging)」と「IEEE 802.1BR」である。この2技術は、ともに標準化が完了済みだ。

 802.1Qbgと802.1BRは、ざっくりと説明すれば仮想スイッチの機能を物理スイッチへオフロードする技術である(図1)。サーバCPUの負荷を軽減したり、仮想スイッチの管理が不要になるなどのメリットがある。ライブマイグレーションの実行時、仮想マシンの移動に物理スイッチの設定を追従させることができるのも特徴だ。

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