あらためて見直す中小企業にとってのサーバ仮想化【第2回】
サーバ仮想化導入の障壁、ハードウェアコストの課題を解決する
中小企業がサーバ仮想化活用で直面する課題のうち、ハイパーバイザーやストレージなどの「モノ」に関する事項について明らかにした。本稿ではそれらの解決策を探る。
「中小企業にとってのサーバ仮想化とは何か?」をテーマとした本連載。第1回となる前回「【導入効果】台数削減だけではないサーバ仮想化のメリット」は、サーバ仮想化にはサーバ台数削減以外にもさまざまなメリットがあることを紹介した。第2回となる今回は中小企業がサーバ仮想化に取り組む際に直面しやすい課題のうち、ハイパーバイザーやストレージといった「モノ」に関連するものを取り挙げ、その解決方法について見ていくことにする。
中小企業がサーバ仮想化に取り組む際の課題とは
以下のグラフは、年商5億円以上~50億円未満の中小企業に対して「サーバ仮想化に取り組む際の課題」を尋ねた結果である。
さまざまな課題が挙げられているが、大きく以下の3つに分類できる。
1.サーバ仮想化に必要な「モノ」に関する課題
- ハイパーバイザーが高価である
- ストレージ環境が高価である
- ネットワーク周りにも気を配る必要がある
- ハードウェアの入れ替えが必要である
2.サーバ仮想化環境の導入・運用に関する課題
- ハイパーバイザーの扱いが難しい
- ストレージ環境の扱いが難しい
- ネットワーク環境の扱いが難しい
- 適切に管理・運用できるか不安である
- どこから着手すれば良いか判断できない
- システムがサーバ仮想化に対応していない
- 提案してくれる販社/SIerがいない
3.社内における意思決定に関連する課題
- 得られる投資対効果が不明確である
- 事例が少ないため踏み切れない
- 社内からの抵抗や反感がある
サーバ仮想化に必要な「モノ」に関する課題
今回はこのうちの「1.サーバ仮想化に必要な『モノ』に関する課題」について考えてみる。この課題とその解決策を理解するためには、サーバ仮想化の技術的な側面をもう少し詳しく知っておく必要がある。図1をご覧いただきたい。これは中小企業がサーバ仮想化に取り組み、第1回で述べたようなさまざまなメリットを享受しようとする際に必要となるモノをまとめたものだ。
第1回でも述べたように、物理サーバと仮想サーバを仲介する役割を担うのがハイパーバイザーであり、サーバ仮想化の中核要素といえる。具体的には米VMwareの「VMware vSphere」、米Microsoftの「Hyper-V」、米Citrix Systemsの「XenServer」などが挙げられる。ハイパーバイザーの価格は徐々に下がってきており、Hyper-VについてはWindows Serverの一機能として提供されている。にも関わらず「ハイパーバイザーが高価である」という課題が2番目に多く挙げられているのはなぜだろうか?
管理サーバのコストが負担
第1回 では「サーバリソースの最適化」「システムの安定稼働」「システムの迅速な導入」「古いOSやアプリケーションの延命」などサーバ仮想化のさまざまなメリットを紹介した。これらはいずれも仮想サーバを物理サーバ間で移動させることによって実現される。となると、どの物理サーバでどの仮想サーバが稼働しており、どの仮想サーバを移動させるのかを管理する仕組みが必要となる。これが図1における管理サーバだ。
管理サーバにはサーバ仮想化環境を管理するためのツールをインストールし、そこから上記に述べた管理操作を行う。ツールの具体例としてはVMwareの「VMware vCenter Server」(関連記事:VMware vSphere 4の価値を最大化する管理ツール「vSphere Client/vCenter Server」)、Microsoftの「System Center Virtual Machine Manager(System Center2012の一機能)」(関連記事:Windowsの世界から飛躍した、System Center 2012の仮想化・クラウド管理)などが挙げられる。これらのツールは有償で提供されており、管理サーバの役割を担う物理サーバも別途必要となる。そのため、ハイパーバイザー関連のコストを合わせると中小企業にとっては少なからず負担となってくるわけだ。こうした課題に対し、サーバメーカーを中心に幾つかの解決策が提供されている。
主流はハイパーバイザーをあらかじめ物理サーバに組み込んでおくというものだ。費用面だけでなく、作業面の負担軽減も期待できる。具体例としては、ダイワボウ情報システムが日本アイ・ビー・エムと協業することで提供している「DIS Easy Virtual Package」などが挙げられる。VMware vSphereを「IBM System x」サーバにあらかじめ組み込んで出荷するものだ。Hyper-VはWindows Serverの一機能ではあるが、利用する際には設定作業が必要となる。それをあらかじめ済ませているものもある。富士通の「PRIMERGY Hyper-V構成済みモデル」や、デルの「PowerEdge Hyper-V onパッケージ」などがそうした例だ。
サーバ仮想化環境を管理するツールについてもサーバメーカーが簡易なものを物理サーバに同梱するといった取り組みが見られる。例えば、日本ヒューレット・パッカードの「Proliant Server」には「HP Insight Control」というサーバ管理ソフトウェアが付属し、これによって基本的な仮想マシン管理を行うことが可能だ。また、日立製作所がサーバにハイパーバイザーを組み込んで提供する「かんたん仮想化ソリューション」でも「VM Simple Console utility」という専用ツールが同梱されている。ただし、こうしたサーバ付属ツールはあくまで基本的な管理を行うためのもので、先に述べたVMware vCenter ServerやSystem Center Virtual Machine Managerを完全に代替するものでない点に注意する必要がある。
ストレージ環境が高価
次に「ストレージ環境が高価である」という課題について考えてみよう。サーバ仮想化とストレージはあまり関係がないと思われる方も多いかもしれない。だが、サーバ仮想化に取り組む際の課題を尋ねた結果では7番目に位置し、サーバ仮想化に必要なモノに関する課題においても2番目に挙げられている。
第1回でも触れたように、仮想サーバはファイルをコピーするかのように物理サーバ間を移動させることができる。ということは、仮想サーバとなったOSやアプリケーションは複数の物理サーバから読み書きできる状態になっていなければならない。つまり、複数の物理サーバに共通の「仮想サーバの置き場所」が必要になってくるわけだ。これを「SAN(Storage Area Network)」と呼ぶ。物理サーバとストレージ機器の間にスイッチが介在し、複数の物理サーバが同じ仮想サーバにアクセスしたときにも不整合が起きないようにするなど、さまざまな制御を行っている。こうした仕組みによって、第1回で述べたようなサーバ仮想化のさまざまなメリットを享受できるようになる。
だが、SAN環境を構築するためには専用のストレージ機器やスイッチが必要となる。中小企業にとって費用負担は当然ながら大きくなる。これが「ストレージが高価である」という課題が比較的多く挙げられている理由である。では、どうすればよいのか? この課題についても解決策が既に提示されている。
最も代表的なものは図2のように物理サーバに内蔵されたHDDを「仮想サーバの置き場所」とするものだ。しかし、これだけでは複数の物理サーバから読み書きすることができない。そこで物理サーバ同士をネットワークで結び、内蔵HDDのデータを常に同期(同じ状態に保つこと)させる。これによって、専用のストレージ機器やスイッチを導入しなくてもサーバ仮想化によるさまざまなメリットを享受することができる。この解決策の具体例としてはネットワールドが提供する「StorMagic SvSAN」やVMwareの「vSphere Storage Appliance」などが該当する。いずれも物理サーバにインストールするソフトウェアの形で提供される。
ネットワーク周りの課題
さらにネットワーク周りにも気を配る必要がある。中小企業が利用する物理サーバは通常1枚か2枚くらいのネットワークインタフェースカード(NIC)を備えている。つまり、ネットワークの接続口は1~2程度ということだ。だが、1台の物理サーバ上で複数の仮想サーバを動かせば、1つのNICの負荷は高まってくる。さらに、仮想マシンの移動やバックアップなどに必要なネットワーク帯域なども考えれば、それらを全て1つのNICでカバーすることは逆にレスポンスの低下や単一障害点(SPOF:Single Point of Failure)を生むことにもなりかねない。従って、NICの数自体を増やすといった対処も必要となってくることが少なくない。この解決策となるのが、図1にも記載した「NICの仮想化」だ。通常、1つのNICには1つのIPアドレスが割り当てられ、それが1台の物理サーバに対応する。だが、NICを論理的に分割し、仮想サーバごとに複数のIPアドレスを割り当てることができる。物理サーバ上で複数の仮想サーバを動かすのと同じように、NICについても複数の「論理的な接続口」を作ることができるわけだ。
このように内蔵HDDの活用やNICの仮想化によって、サーバ仮想化に必要なモノのコストを抑えることが可能だ。しかし、内蔵HDDを「仮想サーバの置き場所」とするには相応のディスク性能が求められる。また、NICの仮想化に対応したサーバはそうでないものに比べて高価だ。ここではストレージやネットワークといった中小企業が見落としやすい点にフォーカスを当てたが、メモリやCPUといった点においても複数の仮想サーバを稼働させる以上は相応のスペックが必要となることは言うまでもない。その結果、冒頭のグラフにあるように「ハードウェアの入れ替えが必要である」といった課題が生じてくる。サーバ仮想化に必要なモノに関する課題はさまざまな工夫によって軽減されつつあるが、現在利用しているものと全く同じ物理サーバ環境がそのまま流用できるわけではないという点を認識しておくべきだろう。
ここまで、サーバ仮想化における課題のうち「サーバ仮想化に必要な『モノ』に関する課題」を解説してきた。だが、サーバ仮想化には「サーバ仮想化環境の導入・運用に関する課題」(※1)や「社内における意思決定に関連する課題」(※2)といったモノ以外での課題もある。※1においては「どこから着手すればよいか判断できない」という課題も多い。「どのシステムにおいて、どのメリットを享受することを目指すべきか?」を適切に判断することが、この課題への解決策となる。それがうまくいかないと、※2で挙げられている「得られる投資対効果が不明確である」といった課題に 直面することになる。この項目はサーバ仮想化における課題全体の中で最も多く挙げられているものだ。つまり、※1や※2は本連載のテーマでもあるサーバ仮想化の導入効果とも密接に関わっている。
第3回となる次回は※1や※2の課題解決を踏まえつつ、サーバ仮想化におけるモノ以外の課題とその解決策について考えていくことにする。
岩上由高(いわかみ ゆたか)
ノークリサーチ シニアアナリスト
早稲田大学大学院理工学研究科数理科学専攻卒業後、ジャストシステム、ソニーグローバルソリューションズ、ベンチャー企業数社でIT製品及びビジネスの企画/開発/マネジメントに長年携わる。ノークリサーチでは多方面で培った経験を生かし、中堅・中小企業のIT活用全般に渡るリサーチ/コンサル/執筆・講演など幅広い分野を担当。
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