企業の災害対策に関する読者調査を実施。2011年、2012年の調査結果との比較で企業におけるBCP対策の進捗状況が分かる。企業が直面する新たなリスクとその対応とは。
TechTargetジャパンは2013年2月18日から3月4日まで、読者会員を対象に「企業の災害対策に関する読者調査」を実施した。調査結果から、対策の実施状況や導入時の課題などが明らかになった。本稿では、その一部を紹介する(全ての結果を記載したリポートは、文末のリンクから会員限定でダウンロード可能)。
目的:読者の「BCP(事業継続計画)策定状況」と「災害対策のために導入予定のIT製品」を調査するため
方法:Webによるアンケート
調査対象:TechTargetジャパン会員
調査期間:2013年2月18日(月)〜3月4日(月)
総回答数:190件
※回答の比率(%)は小数点第1位を四捨五入し表示しているため、比率の合計が100.0%にならない場合があります。
調査結果で注目されるのは、東日本大震災後、2011年に行った調査結果と、今回の調査結果との比較だ。比較によって企業の災害対策の進捗状況が分かる。
「震災後のBCP(事業継続計画)に対する意識」では、「既存のBCPでは不備があったので、今後拡充・改定が必要」との回答の割合が2011年調査の41.2%から2012年調査の27.2%、2013年の23.2%と年々減少。また「今後BCP策定に取り組む予定」との回答も2011年の27.1%から2012年の21.7%、2013年の13.2%と減少している。
一方、「既存のBCPでは不備があったので、拡充・改定した」との回答の割合は2012年の17.3%と比べて2013年は22.1%と増加した。つまり予定段階との回答が減る一方で、既に拡充したという回答が年々増加する格好で、2011年に策定したBCP整備の計画が進捗していることがうかがえる。
2011年 | 2012年 | 2013年 | |
---|---|---|---|
既存のBCPが十分機能したので、特に変化はない | 11.3% | 8.7% | 10.5% |
既存のBCPでは不備があったので、今後拡充・改定が必要 | 41.2% | 27.2% | 23.2% |
今後BCP策定に取り組む予定 | 27.1% | 21.7% | 13.2% |
今後もBCP策定に取り組む予定はない | 5.1% | 10.6% | 11.6% |
不明 | 15.3% | 14.6% | 19.5% |
既存のBCPでは不備があったので、拡充・改定した | - | 17.3% | 22.1% |
n=177 | n=254 | n=190 | |
震災後のBCPに対する意識 |
BCPの整備状況についても同様に企業の進捗が分かる。BCPに関して「ツール導入・運用中」と答えた回答の割合は、2011年の14.0%から2012年の19.7%、2013年の28.3%と年々増加している。企業の中でBCP関連ツールの実運用が着実に増えているようだ。「絞り込んだリスクへ取るべき対応の検討」も年を経るごとに増加している。一方、「これからBCP策定に着手する予定/情報収集中」という回答は19.7%で、2012年の22.4%からそれほど減少していない。BCPに手をこまねいている企業は一定数あるようだ。
2011年 | 2012年 | 2013年 | |
---|---|---|---|
これからBCP策定に着手する予定/情報収集中 | 12.4% | 22.4% | 19.7% |
リスクの洗い出し、絞り込み | 31.4% | 16.4% | 20.5% |
絞り込んだリスクへ取るべき対応の検討 | 33.8% | 28.9% | 21.3% |
検討事項を実施するに当たり必要となるツールの検討 | 8.3% | 12.5% | 10.2% |
ツール導入・運用中 | 14.0% | 19.7% | 28.3% |
BCP策定者/予定者 | n=121 | n=152 | n=127 |
BCPの策定状況 |
「BCP策定時に対象とするリスク項目」への回答からは、さまざまなリスクに対応を迫られる企業の状況が分かる。リスク項目で最も多くの回答を集めたのは「地震、台風、火災などの自然災害リスク」でほぼ例年通り。2013年は加えて「サーバ停止などのITシステム障害リスク」や「情報漏えい、不正改ざんなどの情報セキュリティリスク」と答えた割合が、2011年、2012年と比較して増加した。企業を狙った標的型攻撃の増加などが背景にあると考えられる。「政情不安やテロによる海外拠点の安全・事業継続リスク」の増加も、日本企業が海外で被害を受けたテロなどを反映しているとみられる。
BCPに関連して「今後導入予定の製品/サービス」について聞いた設問では、2012年と比べて2013年は「シンクライアント/デスクトップ仮想化」の回答が増加した。デスクトップ仮想化は各ベンダーが新製品を投入するなど、近年注目される製品カテゴリ。デスクトップ環境を安全なデータセンターなどで統合運用できることから災害対策でも利用されている。一方、「クラウドサービス」や「仮想サーバ」などの項目が2012年と比較して2013年に落ち込んだのは、これらの技術がある程度、企業に普及したためと考えられる。
予算を度外視して緊急にBCPを整備した企業も多かった2011年当時と比べて、2013年は企業の落ち着きが見られる。「災害対策製品/サービス選定時に重視するポイント」を聞いた設問では、コストに関する回答が上位を占めた。1位は「運用コスト」、2位は「保守、サポート価格」、3位は「販売価格」だった。BCPへの貢献だけではなく、その投資対効果や維持コストがシビアに見られているといえるだろう。
IT予算に占めるBCP関連システム投資の割合でも企業のシビアな姿勢がうかがえる。調査結果ではBCP関連システム投資の割合が「1%以下」との回答が最多で34.6%となった。「5%以下」で全体の61.5%を占める。これはBCP対策だけに特化したシステム投資ではなく、BCP対策にも応用可能なシステム投資に企業の関心が向いていると捉えることもできるだろう。
調査ではその他「今後、システム面で遂行予定の対策」「システム面の強化を図る際に障壁となる項目」「東日本大震災以降に導入した製品/サービス」などを聞いた。その詳細な結果は、以下からダウンロードできる(TechTargetジャパン会員限定)。ぜひ参照されたい。
企業の災害対策に関する読者調査を実施。2011年、2012年の調査結果との比較で企業におけるBCP対策の進捗状況が分かる。本リポートでは、企業のBCPへの取り組みの他、災害対策に関するシステム投資の動向などをまとめている。
調査結果リポートのダウンロードページへ (TechTargetジャパン) |
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