目指す人は隣の席に座っているかも
眠れる人材を発掘 トムソン・ロイター “社内クラウドソーシング”の群を抜く成果
Reutersでは、クラウドソーシングの仕組みを用いることで、社内の人材発掘に役立てている。ただ、何もかもがこの仕組みで解決できるわけではない。社内でのクラウドソーシングを成功させるためのコツとは。
情報サービス大手の米Thomson Reutersは、エンジニアリングの人材を発掘するための効果的な方法を考案した。クラウドソーシングの仕組みを用いることで、ファイアウォールの内側から「プロブレムソルバー(問題解決者)」を見つけ出すというやり方だ。
「従業員の隠れた才能を掘り起こすための社内コンペを大規模に実施している」。Thomson Reutersのデータイノベーションラボで責任者を務めるモナ・バーノン氏は2014年4月に開催されたイベント「Building Data Science」の基調講演でそう語った。同氏が統括するラボは社内の各チームや顧客と協力し、デジタルデータを活用した革新的ビジネスの創出を目指している。
ただしバーノン氏によれば、社内でクラウドソーシング型コンペを実施するのは容易ではなく、大規模企業であればなおさらだという。Thomson Reutersは世界各地に計5万5000人の従業員を擁しており、そのうち1万7000人がテクノロジスト(科学技術者)だが、コンペでは「全従業員の中からプロブレムソルバーを見つけ出すこと」を目指している。
実際、クラウドソーシングコンペによって部門のサイロは解体されつつあるという。部門のサイロ化はエンジニアリングの人材を1つの部門に束縛し、ときには、広く切望されているスキルセットを1箇所に閉じ込めてしまうことになりかねない。バーノン氏によれば、あるテキスト抽出プログラムのコンペで優勝したソリューションを提案したのは、同氏のチームから少し離れたブースに座っている従業員だったという。才能はごく身近なところに眠っていたというわけだ。
バーノン氏は基調講演に出席したデータサイエンティストに対し、クラウドソーシングコンペを成功させるためのコツを幾つか紹介した。何よりも大切なのは、多くのITプロジェクトと同様、「まず幹部の支持を得ること」だという。
「クラウドソーシングコンペをボトムアップで実現できるとは思えない」とバーノン氏は語る。幹部の支持を取り付ければ、「解決すれば会社に好影響をもたらす問題」も特定しやすい。成功が早くから広く認知されれば、プログラムの規模拡大にもつながる。
バーノン氏のチームはビジネス部門と協力して、問題を明確化し、成果を定義し、幹部の支持を取り付けた上で、考えを技術的な問題文に書き換えている。「実は、この作業がかなりの難題だ」と、同氏は語る。ビジネス上の問題をデータ問題として記述するためには、コンペの範囲を明確に定め、「実用最小限のプロダクト(MVP:Minimum Viable Product)」の成功基準を定義する必要がある。
何もかもがクラウドソーシングに向いているわけではない、という点を理解することも重要だ。バーノン氏は、「コンサルタントに解決してもらう方が適している戦略志向の問題」にはクラウドソーシングを用いないことにしているという。同氏はまた、システムレベルの問題や専門知識を必要とする難題にはクラウドソーシングコンペを利用しないようアドバイスする。どちらも、失敗に終わる運命にあるからだ。例えば、投資信託管理の専門知識を必要とする案件の場合、事実上、コンペに参加できる人は極めて少なく、そもそもコンペを開く意味がなくなってしまう。
企業向けクラウドソーシングツールに期待する機能
クラウドソーシングは満足のいくことばかりではない。コンペの管理に役立ちそうなエンタープライズクラスのツールに関しては、特にそうだ。現在市場に出回っているツールには、バーノン氏が期待する以下の2つの機能が搭載されていないという。
1つは、提出されたアルゴリズムの「自動ランキング」あるいは「ベンチマーキング」機能だ。現在のところ、データサイエンスに特化したクラウドソーシングサイト「Kaggle」と「InnoCentive」にはこうした機能があるが、「社内向けのイノベーション管理ツールにはない。アイデアを収集してデータベースに登録するところまでしか、サポートされていない」と、バーノン氏は語る。
もう1つ必要なのは、「コラボレーティブマッチング」機能だ。つまり、「各従業員がこれまでに貢献したソリューションに基づき、従業員と新たな問題とをリンクさせる機能」だ。バーノン氏がこれまでに検討した20~30種類のイノベーション管理ツールには、まだどちらの機能も搭載されていないという。「だが、こうした機能を開発するのはわれわれのビジネスではない」と、同氏は語る。恐らく、ここでもクラウドソーシングが役立つのではないだろうか?
「データの銀行」
データを「資産」と見なす傾向が強まっているが、では、データが「通貨」と見なされるようになるにはどのくらい時間がかかるのだろう? 「それほど長くはかからない」と、米調査会社Gartnerのアナリスト、フランク・バウテンダイク氏は語る。同氏は、自身が「データの銀行」と呼ぶ考え方が徐々に企業に広がりつつあると考えている。
顧客は苦労して稼いだ金を銀行に預け、銀行はそうした顧客に利子(利息)を支払う。一方、顧客が金を借りれば、銀行は利子を取る。「データについても、企業は同じようにできる」と、Gartnerが開催したイベント「Business Intelligence and Analytics Summit」でバウテンダイク氏は語った。
クラウドでデータを共有し合うことで、企業はメタデータの形で利子の回収と支払いの両方を行える。例えば、A社がB社のデータを使うのなら、A社はそのデータの活用方法についての情報をB社に提供することで利子を支払う。「結果的には、それがB社の全体的なデータエクスペリエンスの改善につながる」と、バウテンダイク氏は語る。
「この点において、データの銀行は極めて必然的な次のステップといえる」(同氏)
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