ネイティブ広告プラットフォームに批判の声も
Forbesの1日400本の記事公開を支えるデジタルメディア戦略とは
大手メディア企業の米Forbes Mediaは、コンテンツ管理システムを構築することで新たなビジネスを切り開いている。同社のデジタルメディア戦略を解説する。
新聞や雑誌をはじめとする印刷媒体が苦戦していることは周知の通りだ。近年では、オンラインでの取り組みに活路を見いだそうとしているが、印刷とデジタルは単なる写し鏡の関係ではなく、全くの別物であることが明らかとなった。大手メディア企業の米Forbes Mediaは、こうした未知の領域の中で、これまでにない斬新なアイデアを試みることによって、新たなデジタルメディア戦略を作り出している。
ネイティブ広告プラットフォームの立ち上げと批判の声
Forbesの最高マーケティング責任者(CMO)であるトム・デービス氏によると、そうした実験は近年の同社の成功に大きく貢献しており、その成果の一部は(印刷を含めた)全てのプラットフォームにおける読者数の増加に見てとれるという。同社を成功に導いた技術の1つが、コンテンツ管理システム(CMS)である。「Falcon」プラットフォームは、寄稿者と企業が情報を発信するための場を提供する。個人や企業は自分たちのブランドを読者に訴求することができる。その一方で、Forbesは広告主や法人向け企業と他に類のない関係を構築することが可能になる。Forbesの従業員と外部の寄稿者は、既にFalcon CMSをフルに活用している。デービス氏によると、記者と寄稿者は現在、1日に300~400本の記事を公開しているという。
Falcon CMSを利用することで最も大きな成功を収めたアプリケーションは、Forbesが2010年に立ち上げたネイティブ広告プラットフォーム「BrandVoice」である。ネイティブ広告とは、内容や書式、体裁、掲載場所など、その他のコンテンツと簡単には見分けのつかない方法で広告コンテンツを媒体のWebサイトやサービスに掲載する手法である。
最近の記事によると、米NetApp、米Symantec、米CenturyLink、独SAPなどの企業は、BrandVoiceプラットフォームに4500本以上の記事を投稿し、3300万ページビューを獲得した。デービス氏は米ニューヨークで開催の「Digital Strategy Innovation Summit」において、「BrandVoiceは広告主が抱える深刻な問題を解決する」と語り、同プラットフォームの成功を強調した。「もはやマスコミュニケーションは存在しない。企業は商品を読者に売ることだけを望んでいるわけではないし、読者も賢くなり単に売り付けられることを求めていない」
企業がBrandVoiceプラットフォームを利用するには、事前に審査を受けた上で、広告然としたコンテンツではなく、示唆に富んだオピニオン記事を作成することに契約で同意しなくてはならない、とデービス氏は説明する。その見返りとして、Forbesは、BrandVoiceに無制限のスペースを用意し、月間2万5000回のクリック保証とTwitter、Facebook、Google+での特別プロモーションを約束している。
BrandVoiceの利用者は、リアルタイムのダッシュボードと月間リポートを活用することができる。公開したコンテンツの実績や読者の反応(読者がどのくらいの時間ページに滞在しているか、どこの箇所にマウスオーバーしているか、どういった手段で共有しているか、潜在読者に対する影響度がどれくらいか)などの情報が可視化されている。
「Forbesがその他のネイティブ広告プラットフォームと異なっている点の1つは、われわれがこのモデルの透明性に確信を持っていることだ」とデービス氏は語る。「利用者は、誰がコンテンツを掲載しているかを常に把握することができるだけでなく、そのコンテンツがどうやって消費されているか、つまりForbes上でなのか、ソーシャル上でなのか、検索結果でなのかを理解することも可能だ」
BrandVoiceは決して安価ではない。デービスによると、月額7万5000ドルのサービスを最低でも4カ月は契約しなくてはならない。また、こうしたデジタルメディア戦略に対して、議論が起こっている。Forbesが2014年に投資家への売却を検討している際、米USA Todayのコラムニストであるマイケル・ウォルフ氏は、同社の戦略を「明白な詐欺行為」と批判した。
「雑誌や編集者がすることとはとても思えない。要するに、ただのユーザー投稿サイトである。Forbesのために記事を書いたと見せかけられるようにしている」(ウォルフ氏)さらに、米Digidayのブライアン・モリッシー氏は品質と量の問題について指摘している。「Forbesは現在、月間で2800万のユニークビジター数を主張している。だが、それを実現するために、BrandVoiceプログラムの下、広告主の投稿10本も含めて、1日に400本にも及ぶ記事を公開している」
ビジネスの範囲を拡大するデジタルメディア戦略
BrandVoiceプラットフォームは、ForbesがCMSテクノロジーを使って新たな顧客関係を築いた事例の1つにすぎない。最近では、そのビジネスの範囲を、コンテンツ生成からコンテンツ管理へと拡大させている。
Forbesは2013年、法律および不動産業界向け出版会社の米ALMに、Falconテクノロジーをライセンス提供すると発表した。それによると、Forbesは、ALMが運営する主要Webサイト「www.law.com」をホスティングし、継続的なコンサルティングとカスタムソフトウェアの開発サービスを提供するという。Webサイトの所有者は今後もALMのままだが、Forbesのテクノロジーで運用することになる。デービス氏は、こうした動きについて「ビジネスの全く別の側面だ」と説明した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
事例
[日本オラクル株式会社] ピンチをチャンスに変えたEPR製品は? 先行企業の導入事例3選 -
技術文書・技術解説
[日本オラクル株式会社] 無自覚なリスク 秘伝Excelファイルが監査の壁、不正・ミスの温床となる理由 -
製品資料
[日本オラクル株式会社] 戦略的経理の第一歩 失敗のない「脱Excel」を実現する秘訣とは? -
技術文書・技術解説
[日本オラクル株式会社] いまさら聞けないオンプレERPとクラウドERPの違い 最適な製品をどう見極める? -
事例
[株式会社ビザスク] 連結売上高が約2倍に成長、富士フイルムが実践した新規事業創出の戦略とは?
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
2
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
3
「0.3秒のスピード顔認証」の入退室管理が社員に好評 事例に学ぶオフィス改革
-
4
「ノートPC派」は損をしている? Dellと考える“自作PC”のメリット
-
5
エンジニアの生産性はどう測る? マネジメントに不可欠な可視化の実現方法とは
-
6
慶應義塾が「Notion」を選んだ理由 AI導入の盲点になる“情報のサイロ化”
-
7
LINEヤフーはなぜ「社内の管理者」すら信用しないインフラを作ったのか
-
8
1200万円のSaaS導入を回避 スギ薬局「運用費10万円」のAIエージェント構築術
-
9
「また同じ説明か」 消費者の半数が離脱するAIチャットbotの“記憶喪失”
-
10
IT製品の導入に関するアンケート「PC&デバイス」編
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
DX/AI投資の壁を突破、現代の最高財務責任者が直面する課題と克服のヒント
-
3
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
4
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
5
システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
-
6
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
7
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
8
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
9
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー