米Googleは2015年4月から、Webサイトがモバイルフレンドリーであるかどうかを検索結果の順位付けをする際の要素の1つとして使用している。それを受け、企業は検索順位の低下を避けるべく、Web戦略の見直しに迫られている。
「モバイルゲドン」(アルマゲドンをもじっている)が起こっている。つまり、米Googleが検索アルゴリズムに加えた最近の変更によって、Webコンテンツの優劣を決める要素に関するこれまでの認識が覆る可能性があるのだ。
Googleは2015年4月、コンテンツ検索結果を順位付けする検索アルゴリズムの新たな指標として「モバイルフレンドリー度」を追加した。検索エンジン最適化(SEO)に関して言えば、Googleのオーガニック検索ではモバイルデバイスで適切に表示されるWebサイトがより上位に位置付けられる。
モバイルデバイスの台数がデスクトップPCを上回り、その勢いは加速度的に増加している。その結果、モバイルデバイスを意識することがコンテンツ開発においてますます重要な要素になっている。これはモバイルデバイスをサポートする企業やデジタル担当者への警告に他ならない。Googleによると、2015年2月に検索アルゴリズムの変更を発表して以来、表層Web全体でモバイルフレンドリーなサイトは5%増加しているという。
モバイルデバイスを意識することによって、どのような影響があるのだろうか。まず、モバイル対応のWebデザインが重要になる。デジタルマーケティング担当者とウェブマスターの多くは、オーガニック検索で高い順位を得るためにデジタルコンテンツを最適化するようになっている。具体的には、検索ボットを誘導するために、見出し、タイトル、キーワード、メタデータを追加している。モバイルデバイスが爆発的に増えたことで、Webサイトの保守担当者はモバイルデバイスでの表示品質をテストし、必要な更新を加えることを余儀なくされている。Googleは、スマートフォンやタブレットでの表示に基づいてコンテンツを追跡および評価する。
ウェブマスターは何をすべきなのだろうか。最低でも、WebサイトでモダンなWebページのデザインを採用しなければならない。例えば、多彩な画像やクリックが簡単なグラフィック要素などだ。また、テキストは小さな画面でも問題なく読める大きさで、リンクの間には適切な間隔が設けられている必要がある。それから、コンテンツは画面サイズに収まらなければならない。操作しづらいリンクと一緒に大量のテキストが雑然としていた時代は終わりだ。
少なくとも、既存Webサイトのグラフィックについては見直せるだろう。まずFlash要素をモバイルに配慮した動画に置き換えることだ。次に、視覚要素を簡素化して、画質を上げる。それから、余白は最小限に抑え、HTML5を利用して閲覧操作をモバイルフレンドリーにする方法を検討してほしい。
まだ対応していない場合は、レスポンシブWebデザインの採用を検討してほしい。このデザインを採用すると、ブラウザによってページの表示やナビゲーションリンクが自動的かつ動的にリサイズされるようになる。ほとんどの第3世代のWebコンテンツ管理(WCM)システムにはレスポンシブWebデザイン機能が備わっている。例えば、WordPress、Drupal、Joomla、米Adobe Systemsの「Adobe Experience Manager」、デンマークSitecoreの「Sitecore CMS」などがある。WCMシステムを採用するかどうか(その後にITへの投資が必要になるかどうか)の鍵を握るのは全体的なデジタル戦略だ。モバイルデバイスの存在とモバイルSEOの両方がこの難題の判断材料になる。
もっと大きな事情も考慮する必要がある。モバイルデバイスの操作性で考慮すべきは画面サイズやデバイスの種類だけではない。モバイルSEOはデスクトップのオーガニック検索と同一ではないのだ。モバイルとデスクトップで異なる検索結果が好まれるのには理由がある。
Web黎明期から、デスクトップPCでのWeb閲覧においてコンテンツの「ファインダビリティ(見つけやすさ)」は必要不可欠だ。Web検索利用者は検索ワードをGoogleの検索バーに入力して、検索結果を吟味する。こうした環境では、Googleによってインデックス登録された単語などのシグナルを頼りに多種多様なWebサイトからコンテンツを取得する。多くの場合、これは「プル型」のエクスペリエンスと呼ばれる。
ファインダビリティはモバイルデバイスの操作性でも重要になる。だが、特定の作業場所に縛られないモバイルユーザーは、さまざまな動的な環境で作業を行っている。屋外で動き回って作業を行い、特定のタスクやアクティビティに重点を置いている。モバイルユーザーが期待するのは、簡潔で短い情報の抜粋が迅速に提供されることだ。モバイルSEOには、デスクトップPCの操作性に関する特徴がない。モバイルユーザーが長文のドキュメントを小さな画面で読んで満足することはまずないだろう。
Google検索は、デバイスの種類に応じてモバイルフレンドリー度を認識し、そのモバイルデバイスで最も閲覧しやすいWebサイトへのリンクを提供する。この方向にGoogleが1歩を踏み出したのは正しい判断だが、モバイルユーザーはさらに多くのことを期待するようになるだろう。Googleのアルゴリズムは、モバイルデバイス自体が保有する位置データなどのセンサーデータによって状況を記録または予測する試みを行っていないことに留意されたい。
現在、抜本的な変化が進行している。デスクトップPCでの検索は基本的にプル型エクスペリエンスだが、モバイルデバイスの場合はどちらかと言えばプッシュ型だ。タスクに取り組んでいるモバイルユーザーが期待するのは、個人に合わせて細かく調整されたタスク重視のエクスペリエンスが提供されることである。だが検索エンジンをモバイルフレンドリーにすることは最初の1歩にすぎない。Googleは、同社が保有するナレッジグラフに基づいて関連コンテンツを検索結果として返す機能を他にも提供している。セマンティック検索はその一例だ。また、多くのパブリッシャーが人気のトピックやアクティビティに特化したデータベースにアクセスできるモバイルアプリを提供している。
課題は有益で役に立つモバイルデバイスの操作性を生み出すことだ。物事が変化するときは、現状に疑問を投げ掛けて、新しいやり方をビジネス環境に浸透させることがいつも欠かせない。この目的を達成するためにも、Googleがモバイルフレンドリー度を重視するようになったことは、今日のWebサイトやデスクトップコンピューティングソリューションにとって非常に大きな分岐点になる。
デジタルマーケティング担当者とウェブマスターは、Googleに同調してモバイルを意識した戦略を取らなければならない。さもなければ、検索順位とユーザーへの適合性を失う危険を冒すことになる。いったんモバイルフレンドリーなWebサイトを構築すれば、知識と経験のあるビジネス部門のリーダーが、ターゲットユーザーのニーズを満たすタスク重視の操作性を創出して供給するだろう。モビリティを本当の意味で活用し、モバイル革命に合わせて最適化する時がきている。
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