スマートフォン事業の見直しや最新版「Windows」での大きな変化など、Microsoftの次の動きが同社の先行きを決定付けるだろう。
かつて支配的だったWindows PCのポジションをモバイル技術に着々と侵食される中、米Microsoftは幾つか大胆な策に打って出ている。そうした取り組みはMicrosoftを立て直すことができるのか、それともMicrosoftの存在感をますます薄めることになるのだろうか。同社の将来は今、どちらに転ぶか分からない状況にある。
1990年代の一連の反トラスト法訴訟から、完全な失敗作となった「Windows Vista」まで、Microsoftは常に何かしらの存続危機に直面しているようにもみえる。同社が前進するためには、過去の失策を消し去ることが重要だ。
Microsoftのサトヤ・ナデラ最高経営責任者(CEO)は2015年夏、スティーブ・バルマー前CEOの時代に72億ドルで買収したフィンランドNokiaの携帯電話事業について減損処理を実施した。その直前には、Nokiaの前CEO、スティーブン・エロップ氏がMicrosoftを退職している。2013年に決まったNokiaの買収はMicrosoftの歴史において2番目に大きな取引だったが、結局、スマートフォン市場におけるMicrosoftの影響力を大きく変えるには至らなかった。
またMicrosoftは現在、「Windows 10」への無償アップグレードを提供している。その狙いは最新OSを広めることだけでなく、「Windows 8」からの移行を促すことにもある。Windows 8は、従来のWindowsに固執するあまり、モバイルの潮流に乗れなかったOSだ。
こうしたMicrosoftの一連の動きは、リスクと無縁ではない。スマートフォンの売り上げが伸び、PCの売り上げが減速している今、Microsoftが置かれているのは、Windowsスマートフォンを開発する主力メーカーの不在という状況だ。米調査会社Gartnerによれば、Nokiaはスマートフォン市場でトップ5圏外だったが、それでもある程度の存在感を示していた。ナデラCEOは独自ブランドのスマートフォン開発(いわゆる“Surfaceスマートフォン”)に取り組む方針とともに、スマートフォン事業を抜本的に見直すことを明言しているが、その詳細はまだ不明だ。最終的にはこの戦略がMicrosoftの成否を決定付けることになるだろう。
Microsoftが打ち出したWindows 10の無償アップデートという選択肢のおかげで、Windows 7とWindows 8のユーザーはこの最新OSを気軽に試すことができる。ただし、この状況はもろ刃の剣でもある。Windows 10を試したユーザーが、このOSを気に入れば採用は急拡大するだろう。だがバグが多かったり、覚えることがあまりに多過ぎたりすれば、ユーザーはWindowsを見限ることになりかねない。ダウングレードの手順が厄介であれば、なおさらだ。Windows 10にアップグレードして1カ月以内であれば、元のOSに戻すのは簡単だが、1カ月以上たった場合はUSBドライブを使って元のOSを一から再インストールする必要がある。
WindowsはMicrosoftの中核事業であり、モバイルの世界でWindowsを成功させることが同社の将来には不可欠だ。またWindowsは企業のITシステムの中核を担うコンピューティングプラットフォームでもあり、エンドユーザーの支持を失えば、IT部門に影響が及ぶのは必至だ。
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