事例で分かる、中堅・中小企業のセキュリティ対策【第15回】
テレワーク導入企業が直面するセキュリティ問題にどう取り組むか?(1/2 ページ)
働き方改革の旗の下、政府はテレワーク制度の普及を推進しています。持ち出したモバイルデバイスをオフィス以外の場所で使う際に必要となるセキュリティ対策について解説します。
働き方改革、日本政府が推進するテレワーク普及のKPI
労働生産性を上げるために、ITは大いに役立ちます。その具体例が「テレワーク」です。政府はテレワークの普及を「働き方改革」の強力な手法として位置付けており、具体的なKPI(重要評価指標)として2020年までに、
- テレワーク導入企業を2012年度(11.5%)比で3倍にする
- 週1日以上、終日在宅で就業する雇用型テレワーカーの割合を2016年(7.7%)比で倍増させる
と掲げています(出典:2017年5月閣議決定「世界最先端IT国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」)。
テレワークとは、離れたところ(Tele)で働く(Work)という意味があり、「ITを活用し、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方」を指しています。
総務省「平成28年通信利用動向調査の結果」によると、テレワークを活用している企業は、活用していない企業と比較して1社当たりの労働生産性が1.6倍高くなっています。
政府は、テレワークの採用で労働生産性の向上が見込めることを踏まえて、会社のオフィス(つまり、従業員が1カ所に集まって業務をする場所)ではない場所でも、仕事ができる環境と仕組みを積極的に採り入れることを、企業に求めています。代表的なテレワークの手法は下記の3つです。
- 自宅で仕事をする「在宅勤務」
- 地方の空き部屋などを利用して働く「サテライトオフィス勤務」
- 外出先や出張先などでもスマートフォンやノートPCなどを活用しながら働く「モバイルワーク」
実際に、テレワークを活用した働き方改革の取り組みに着手している(しようとしている)企業が少なくないことを、筆者もコンサルティングの現場で実感しています。例えば次のようなエピソードを見聞きしました。
ある優秀なスタッフが退職する旨を伝えてきた。理由を確認してみると、病弱な親が体調を崩し、自宅で付きっきりの介護をしなくてはいけないという。本人は働きたいようだが「今後は休みがちになるだろうし、他の従業員の迷惑になるから辞めるしかない」と考えている。
あるスタッフの配偶者が海外勤務を命じられたという。本人は、配偶者を単身赴任にさせたくないため、自分も一緒に海外に行こうと考えているが、今の会社と仕事内容は好きだから辞めたくないとも思っている。本人は「海外に行っても仕事は一生懸命頑張るので、リモートワークで働かせてくれないか」と希望している。
強烈な人材獲得競争が起こっている首都圏では、人材採用が難しくなってきた。そこで地方の優秀なITエンジニアを採用したいと考えている。実際に素晴らしい人材を見つけたのだが、本人は首都圏への転勤を嫌がっており「現在地で働かせてもらえないか」という強い要望がある。
特に中小企業の場合、1人の優秀なメンバーが欠けると業績低下に直結するケースがあります。同様に、1人の優秀なメンバーの入社によって、会社の業績が見る見るうちに上がり始める、ということもあります。
いずれにしても、活躍が期待できるメンバーが何かしらの事情で働けなくなっても、ITの力で継続的に働いてもらう環境を会社として提供することは、これからますます求められていくことでしょう。
このように柔軟な仕組みを持った会社が、多くの優秀な従業員を引き付けるのは明らかです。今後ますますテレワークのような働き方は増えていくと考えられます。
その一方で考慮しなくてはいけないのが「テレワークを活用する際の情報セキュリティ」です。遠隔で仕事をすることが前提になるため、どうしてもセキュリティ上の脆弱(ぜいじゃく)性が発生しやすくなります。テレワークを活用する企業が直面するセキュリティ問題には、どのようなものがあるでしょうか。
コラム:働き方改革とは?
「働き方改革」は、今やどこでも耳にするメジャーな言葉になりました。政府は労働生産性を改善するための手段として働き方改革に注目。国内企業の労働環境改善に向けた取り組みとして、2016年、安倍晋三首相を議長とする「働き方改革実現会議」の設置を皮切りに、具体的な実行施策の検討を始めました。働き方改革の実現に向けて、第1回目の働き方改革実現会議の中で、以下のテーマを取り上げていくことを宣言しました。
* 同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善
* 賃金引き上げと労働生産性の向上
* 時間外労働の上限規制の在り方など長時間労働の是正
* 雇用吸収力の高い産業への転職・再就職支援、人材育成、格差を固定化させない教育の問題
* テレワーク、副業・兼業といった柔軟な働き方
* 働き方に中立的な社会保障制度・税制など女性・若者が活躍しやすい環境整備
* 高齢者の就業促進
* 病気の治療、そして子育て・介護と仕事の両立
* 外国人材の受け入れの問題
出典:働き方改革実現会議、第1回議事録
やや乱暴になるかもしれませんが、働き方改革における国の方針を分かりやすく整理するために、筆者の解釈を基に以下のようにまとめました。
1.これからの日本の将来を見据えると、人口減少に伴い、働き手が減少(不足)するのは明らか。このような状況下において、わが国がさらに経済発展するためには、働き方を変えて、働き手の労働生産性を向上させていくことが必須
2.ロボットやビッグデータ、人工知能(AI)などのデジタル技術が進展し、これらを活用することで労働生産性の向上が期待できる環境が整ってきた
3.デジタル技術をビジネスに上手に取り入れつつ、労働生産性を高めることで「経済的課題」と「社会的課題」の両面を解決することが「働き方改革」である
つまり働き方改革とは、人手が少なくても、働ける能力のある人(働きたい意思のある高齢者や、子育て中の女性なども含む)に対し、デジタル技術(IT)を駆使して労働生産性を高めていき、経済発展を実現しつつ社会問題である人手不足を解決する、という取り組みといえます。
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事例で分かる、中堅・中小企業のセキュリティ対策
情報セキュリティ対策をしたくても、ITに詳しい人が社内外にいなくて困っている中堅・中小企業は多いのではないでしょうか。「知識不足」と「ヒト、モノ、カネ不足」の問題が目の前にあっても、対策は待ったなしの状況。予算を握る上司を説得するために、サイバー攻撃の事例を紹介しながら、その効果的な対策につながる情報セキュリティ製品を分かりやすく解説します。
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