「MU-MIMO」は魔法ではないが、そう考えるネットワークエンジニアもいる。MU-MIMOは、無線LANにどのような効果をもたらすのか。
伝説のサイエンスフィクション(SF)作家アーサー・C・クラークは、かつてこう書いた。「十分に発達した科学技術と魔法は、見分けが付かない」
無線LANの「MIMO」(Multiple Input Multiple Output)と最新の「マルチユーザーMIMO」(MU-MIMO)に驚嘆させられる人は多いはずだ。キャリアの大半を無線ネットワークに費やしてきた立場でも、これらの技術が可能にすることには驚きを隠せない。
MIMOは現行の無線LAN規格「IEEE 802.11n」から採用され、驚異的なパフォーマンスの向上を実現した。
同じ周波数かつ至近距離で、複数の無線LANシステムが同時にデータ伝送を試みると、干渉が発生する。少なくとも全体的なデータ伝送容量が多少低下する可能性が高まる。
携帯電話のような免許制の無線サービスでは、こうした問題を回避するために、データ伝送のスケジュールを設定できる。一方で免許不要の周波数帯には、こうした制御がない。そのためクライアントは、発生した干渉をそのまま受け入れなければならない。
無線LAN業界は、干渉に伴う潜在的な問題に対処するために、多数の手法を編み出してきた。そのほとんどは、無線送信する前のデータを変調(電波向けに変換)して符号化する方法に関連する手法だった。
残っていた大きな問題は、どんなときでも1つのクライアントしかデータを受信できないことだ。通信を求める他のクライアントは、データ伝送の終了まで待機する必要があった。その結果、全体的なデータ伝送容量が制限されることになった。その問題を解決するのがMU-MIMOだ。
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